26、日没に落ちる断首刀
「短刀は洗わずに保管していますか? 果物を切った短刀です。そちらも、慎重に調べてください。片側の刃の部分にだけ毒が塗られていませんか?」
紺紺は懐から札を取り出し、表と裏を指して説明をした。
「
紺紺は、
実演するように札を動かしてから、左手に持ち変える。
すると、
「短刀を使って皮を剥く時に、右利きの人と左利きの人とでは、果物に当たる刃の側面が違います。
「まあ。それでは、彼女を個人的に恨んでいて陥れようとした
新米宮女としてお使いをしていた時に、
しかし、ここで「
「……
だって、
きっと、脅されたり魅了されて、本当はしたくないことをさせられて苦しんでいたんじゃないかな? ――紺紺はそう思った。
だって、
私が同期のみんなを好きなように、
お友だちにひどい事なんて、誰だってしたくないよね?
あの陰口も、きっと命令されて仕方なく言ってたんじゃないかな?
心の中で
紺紺は気づいた。
体の芯を甘く痺れさせるような香りは――
「あなた……可愛いのね、ふふっ。自分が純真なように、他人もそうだと信じている幼さがあるのね……?」
「ひっ?」
ぞくりとする。
――近い。
間近に顔を寄せられて、紺紺は全身を強張らせた。
吐息が触れそうな距離で、
――潤いのある唇が、
魅了の術にかかっていればうっとりとしてしまいそうな、恐ろしく蠱惑的な仕草と表情だ。
「ほら。あなたが愛らしいから、わたくしの鼓動がこんなに弾んでしまいましたわよ」
でも、紺紺は首を振った。誘惑されてなるものか。
「し、失礼します!」
手を引っ込めて後ろへと下がり、距離を取ると、
「あら。つれないこと……ふふっ、では、遊戯をしましょうか」
「へっ? ……遊戯、ですか?」
「ええ。処刑遊戯よ」
「日没……酉の刻(十八時)を刻限にしましょう。それまでに犯行に使われた短刀と
「ええっ……」
冤罪だと言っているのに!
「口答えは許しません。忘れないで。わたくしは後宮の妃の中で現在、最高の位である貴妃ですのよ。本来、侍女ごときが物申すことなど許されぬのですからね」
不満に思いつつ、紺紺は時間を確認した。
現在は、未の刻(十四時)だ。
短刀は当然、宮正が保管しているだろう。
『私がやりました』は、もしも
そう考えると、この処刑遊戯は『勝てる』のではないか。
勝ち取るものは、
「承知しました。私、連れてまいります。待っていてください!」
「ふふっ、待っていますわ」
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