第十三話 迷宮攻略
「お前が俺を援護してくれたら我がギルドでの待遇を良くして――」
「断る」
ザイロスからの誘い。話を聞くまでもなく、迷うまでもなく、お断りだ。
「はあぁ~? テメェ、俺の部下だろ? 言うこと聞けよ」
「この試験においては対等ですよ。てか、徒党を組まないと勝つ自信がないんですか? そんな立派な剣持ってる癖に……」
ザイロスは昔と今で持っている剣が違う。
昔は耐熱効果のある騎士剣を使っていた。だが今は違う。剣幅のある剣だ。大剣と騎士剣のちょうど中間ぐらいの大きさ。
この気配……間違いなく神竜のモノ。あの時剥いだ鱗から作ったのか。ムカつくな。俺の犠牲で作った剣ってわけだ。
「けっ! 後悔すんなよ。たとえ同じギルドメンバーだろうが、容赦しねぇからな」
ザイロス、カリン、ムゥは三人で部屋を出る。
「……」
「……?」
なぜだかムゥが俺の顔をまじまじ見てきた。なんだアイツ、なんか企んでるのか?
「……アレが聖剣使いザイロスか」
「……要注意だな」
みんなザイロスを警戒しているようだ。俺もこの中では一番アイツを警戒している。紛いなりにも聖剣使いだからな。
さてと、どうしようかな。とりあえず一度、ライラちゃんに報告に行くか。
---
「ライラちゃんがいない?」
「ええ」
ギルド本部。
ライラちゃんとは別の受付嬢にライラちゃんの居場所を聞いてみると、どうやらライラちゃんは昼休憩に入ってから帰ってきてないらしい。
さすがに探している時間はない。早く迷宮に潜りたいからな。
「わかりました。俺が探していたことは伝えなくて大丈夫です」
ギルドのためにも、ライラちゃんのためにも、俺は誰よりも早く迷宮を攻略し、そのままユウキの守護騎士になる。そしてザイロスをリコールする。ま、事後報告でいいだろう。
つーかそうなったら俺も聖堂院に行くことになるのか。カムラ聖堂院……手の届かない場所と諦めつつも、ガキの頃からずっと憧れていた場所。まさかそこに行ける可能性が出てくるなんて、人生なにが起こるかわからないな。
よし迷宮に行こう。神竜の中で1年暮らしていたせいか、あまり恐怖心とかないな。食料とかも現地調達でいいだろう。
ギルド本部を出て、街の外に足を向ける。
「……ちょっと楽しみだな」
迷宮の場所はラスベルシア邸を出る時にヴァルジアさんに聞いた。俺は一人、迷宮に向かう。
街を出て、ずっと西に道沿いを行く。
大草原のど真ん中、そこにポッカリ大穴が空いていた。
ホール型の迷宮には入ったことがある(第一階層で引き返したけど)。この大穴を飛び降りると無数の黒い手に掴まれ真っ黒の繭にされる。繭は最初はめちゃくちゃ硬くて取れないんだけど、時間が経つと柔らかくなって破れるようになる。繭を破ったら第一階層に到着している。
聞いた話だが、繭に包まれた瞬間に第一階層にワープ、転移しているらしい。繭は時空間移動の際生じる衝撃を軽減するための『鎧』だと言われている(真偽は不明)。
迷宮から脱出するには第一階層の天井に穴を空けて、そこから上に行く。するとまた黒い手に繭にされて、繭を破ったら地上に出てる。どこもこれは共通だ。
入るか。あんまり好きな感覚じゃないんだけども。
「それ!」
大穴に飛び降りる。
キタキタ。無数の黒い手が暗闇から伸びて、四方八方から俺を隙間なく掴み、黒い手が繭に変化する。俺はあっという間に黒い繭で包み込まれた。だが、昔と違ってちょい動けるな。このリザードマンの体のおかげか。
刀に右手を添える。どうする? 斬るか? この繭。やろうと思えばやれそうだ。
「……」
やめておこう。なんか変なことになりかねない。もしこの繭が『鎧』なら、繭を斬った瞬間に時空間移動の衝撃で焼き飛ばされる可能性さえある。
一分ほど繭の中にいて、繭が弛んだところで、
「“風填・飛息”」
風属性の斬撃で繭を斬る。繭が斬られ、視界が開く。
かっこつけじゃない。魔物の気配を感じたから牽制の技を繰り出したのだ。
「ガァアアッ!!!」
ほらね。
俺を取り囲むようにゴブリンが四匹。
瞬時に地形を把握。俺は空中、どうやら繭は迷路の天井にはりつけてあったらしい。
場所は狭い一本道。
「グキキ……キャ!!!」
背後のゴブリンが俺の背中に飛びかかってくる。俺は尻尾を振り、背後のゴブリンをぶっ飛ばす。ゴブリンは血を吐き、息絶えた。正面と真下のゴブリンは刀で真っ二つにする。ラスト一匹は仲間がやられて怯んだのか、俺に飛びかかろうとはせず、後ろへ二歩三歩と下がり……、
「グギ!!」
逃げ出した。
俺は走って一瞬で正面に回り込み、無属性の居合斬りで首を絶ち切る。これで四匹撃破。
昔はゴブリン一匹に死闘を繰り広げたモノだが……感慨深いな。涙が出ちゃう。
「さあって! ドンドン行くぜェ!!」
迷宮の攻略時間は大抵一日から三日。『迷宮入れば三日寝れず』、という言葉があるぐらいだ。
俺はひたすらに迷宮を進んだ。ただガムシャラに進んだ。
そんで、多分、迷宮入ってから30分ぐらいだ。
「ほう……ここまで来るとは。お
でっかい玉座に座ったでっかい骨の魔物の居る場所にたどり着いた。魔女のようなローブ纏っているし、杖持ってるし、多分リッチの類だろう。
喋れるってことは魔物の中でもかなりの上位クラス……のはずだ。
「つかぬことをお伺いしますが、ここって最下層ですかね?」
「見てわかるだろう。ここは我が迷宮、ヌヌハミの最下層。そして我こそ! この迷宮の王!! リッチキングだ!!!」
「そうか……」
これまで、どれだけ時間をかけようが来ることのできなかった最下層。
そこに来れたのに、なんだろうか……この虚しさは。
「さぁ来い! 竜人よ! 我が遊んでやろう!」
スキル『神竜眼』で弱点箇所・弱点属性は割り出せた。
リッチキング。弱点胸の中央。弱点属性光。となれば、狙うのは胸の中心、使う技は光の抜刀術――
「“光填・八爪撃”」
――――――――――
【あとがき】
『面白い!』
『続きが気になる!』
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何卒、拙い作家ですがよろしくお願いします!
小説家になろうでも連載中です!
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