第十四話 一方その頃、迷宮の外にて

 迷宮に繋がる大穴の前に一つのパーティが辿り着く。

 ギルド・雪園の白竜スノードラゴン、ギルドマスターのハッカとエースの若き男大剣使いフロート、他6名。計8名のパーティだ。


「ひゅ~! マスター! こりゃすげぇや。穴の大きさから見て間違いなくAランクの迷宮だよ」


 フロートがお気楽な調子で言う。


「先遣隊の言っていた通りだな。そうなると、五日は覚悟せんとならんな……」


 ハッカは「やれやれ」と肩を竦める。


「マスター。もし宝器手に入れられたら、ホントに俺に譲ってくれるんすか?」

「ああ。俺はギルドを留守にするわけにはいかんからな。守護騎士はお前に任せる」

「やっりぃ! あのかわい子ちゃんと一つ屋根の下とか最高だぜ!」


 雪園の白竜スノードラゴンのパーティに背後に、歩み寄る足音が三つ。


「おっと、これはこれはハッカさんじゃありませんか」

「貴様は……」


 現れたのはザイロス、カリン、ムゥのパーティだ。


「ザイロス……」

「どうも」


 雪園の白竜スノードラゴンの面々は戦闘態勢に入る。それを見てザイロスは小馬鹿にするように両手を上げた。


「ここでやり合うわけないでしょ。迷宮攻略前に余計な体力は使いたくない。それはお互い同じでしょ? ねぇハッカさん」

「まぁな」

「何なら共同戦線でも張ります? この迷宮、大きさから見て相当エグいですよ。ぱっと見、三日はかかると見た」

「断る。お前は信用できん男だ」

「そりゃ残念。じゃ、お先にどうぞ」


 ザイロスに言われて行くのは癪だが、迷宮には先に入りたい……ハッカは渋々、部下を引き連れ大穴に向かう。


「いいんですかザイロス様」


 カリンが聞く。


「構わない。どうせ長丁場になるんだ。たった数分の差どうでもいいさ。それより先に行かせて罠とかを起動させてもらった方がありがたい」


 先に行くも、後に行くも、それぞれ利点がある。

 ハッカは先手の利点を取り、ザイロスは後手の利点を取った。



 が、そんな心理戦はまったくもってどうでもいいこと。無駄なことだった。



 なぜならもう迷宮は――


「なっ――」


 まず最初にハッカが異変に気付く。


「はぁ!!?」


 次にザイロスが気づく。

 迷宮の大穴から、光が走り、辺りを照らし始めた。


「馬鹿な!? この反応は……!」


 ハッカは目を剥き、光の柱を見つめる。


「迷宮が消える時の――!?」



 ---ラスベルシア別邸---



 ユウキは執事のヴァルジアが淹れたコーヒーを味わっていた。


「ヴァルジア。あなたはあの迷宮を攻略するまでにどれくらい時間がかかると思いますか?」

「そうですね。上級クラスの冒険者パーティでも五日……聖剣を持つザイロス殿や類稀なる魔力を持つハッカ殿なら、早くて三日で攻略するかと」

「私も同じ見立てです。でも……あのリザードマン、ダンザさんなら、さらに早いと私は見ています」

「お嬢様は彼を高く評価していますね」

「はい。纏っているオーラが只者ではありませんでした。気のせいかもしれないですけど」

「では、彼なら迷宮をどれくらいの時間で攻略するとお考えで?」


 ユウキはフッ……と笑い、


「二日」

「それはそれは……さすがに早すぎます」

「どうですかね。わかりませんよ」


 その時、天に光の柱がのぼった。

 ユウキは窓からその光の柱を見て、手からカップをテーブルに落とした。カップが割れると同時に立ち上がり、部屋を出て、家を出て、空を見上げた。


「そんな……!?」


 迷宮が攻略され、上がる天への光の柱。

 ありえない。

 なぜなら迷宮が現れたのはまだつい昨日のこと――


「ヴァルジア! 準備して! 迷宮に向かいます!」

「かしこまりました!」


 ユウキは動揺から歓喜へ感情を移行させる。

 もしも、今日招集したメンバーの誰かが攻略したのなら――自分の想像をはるかに上回る、最高の守護騎士を手に入れることができる。


 笑わざるにはいられなかった。




 ――――――――――

【あとがき】

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