第三話 転生リザードマン

「スキル『神竜眼』……? なんだそりゃ」


 スキルに新しく目覚めることはある。

 代表的な方法は魔眼を手に入れること。天使や悪魔、あるいは神様の加護を得ること。あとは特殊な武器・防具を装備すること。変身魔法を使ったり、人間ではありえないが進化したりするとスキルに目覚めることはある。

 俺はなにもしてない。スキルに目覚める道理が無い。


「故障か……? いや、なんだ、これ……」


 眼から脳に、情報が伝わる。


「弱点属性、水・闇……耐性、炎・雷・風・光……これ、神竜の情報か……?」


 本当にスキルに目覚めている!?

 どうなってんだ……?


「って、わかったところで俺は水魔法も闇魔法も使えねぇよ! もっとマシなスキルくれよおおおっ!!」


 凄いスキルだ。でも、ここで野垂れ死んだら意味ねェって!


 しかし、どうやら本当に眼が変わったようだ。視力が上がっている。鮮明に景色が見える。これまで見えなかった服の汚れとか、空気中に舞う埃まで見えるぞ。

 ただ、眼が良くなったからと言って脱出できるわけもなく、俺はまた喰って寝てを繰り返す生活をする。ひたすら壁が開くのを待って……。


 それからさらに82日が過ぎた。


 また万識の腕時計ワイズウォッチがピコンと光った。

 液晶に文字が浮かぶ。


《スキル『神竜血しんりゅうけつ(ランクEX)』を取得しました。神竜血のスキル説明:全ステータスに+500の補正&毒耐性を得る》

「ぶふっ!?」


 全ステータスに+500!?

 なんだそりゃ。強すぎだろ……。

 絶対なんかのミスだ。そう思い、俺は自分のステータスを見る。スキルが本当なら、ステータスが全部変わっているはず――


■ダンザ=クローニン

■力652 耐久601 敏捷582 運730 生命力590 魔力534

■ユニークスキル『鋼鉄胃袋(アイアンストマック)(ランクF)』

■スキル『神竜眼(ランクEX)』

■スキル『神竜血(ランクEX)』

■耐性:毒・暗闇・眩光


「……嘘だろ」


 落ち着け。万識の腕時計ワイズウォッチがぶっ壊れている可能性がある。

 だってこのステータスだったらザイロスですら相手にならないぞ。大体『神竜血』なんてスキル、まったく聞いたことないしな。

 よし。じゃあ一回走ってみよう。こんだけ敏捷が上がっているなら、俺の脚はめちゃくちゃ速くなっているはずだ。


「よーい……ドン!」


 神竜の体内を思いっきり走る。


「え? え!?」


 景色がバカみたいな速度で過ぎていく。

 走るときの衝撃で、床がいちいち破れていく。

 足を止めてみる。思いっきり、全力で走った。なのに、一切息切れしない。

 本当にステータスが上がっている。


 スキル『神竜眼』にスキル『神竜血』。どうやって俺はこのスキルを得たのか……考えてみると原因はアレしかない。恐らく、こんなスキルに目覚めたのは俺のこの182日の食生活のせいだ。


 神竜を喰らい続けたおかげで、俺の体の構造が作り替わっているんだ。食は生物の構成に深く関わる。栄養満点な食事をとり続ければ恵まれた肉体が手に入るし、栄養のない食事を続ければ瘦せ細る。その極端な例が今の俺と見ていいだろう。神竜……世界で最も強く、最も神秘的で、最も魔力に溢れた存在。この凄まじい生物を食し続けたことで、俺の肉体は変貌を遂げようとしている。


 もしかしたら俺の血は、もう人間の血と違うのかもしれない。

 もしかしたら俺の眼は、人の眼と違うのかもしれない。神竜のそれになってるのかもしれない。


 ひょっとして俺、化物になってる?


 例えそうでも、後悔はない。神竜を喰わなきゃ生きていけなかったからな。

 例え異形になろうとも、強くなれるならそれで……。


「ま、まぁ。まだアレだ。見た目的には多分、そんな変化ないだろ。もしかしたら眼は変になってるかもしれないけど……」


 なんか、腕が痒いな? と思って右腕を掻く。

 ガリッ。

 なんだ、今の石を引っ掻いたような感触は? 袖をまくって右腕を見る。すると、腕の一部が――鱗になっていた。緑の鱗に……。


「い、イボだな。これはきっとイボだ」


 ドクン。と心臓が飛び跳ねた。


「うがっ!?」


 胸を押さえ、その場にうずくまる。


「うぐ、ああぁ……あああああああああああああっっ!!!?」


 全身が痛い――痛い痛い痛い!!!

 焼けつくような痛み……なんだ? 顔の形が変わる。歯がなんか伸びてる。肌が変質していく……!!!?


「うがああああああああああああっっっ!!!?」


 灼熱の痛みは一週間続いた。

 一週間が過ぎると、俺は変貌していた。

 鏡がないから全身は見えない。けれど、体中を触ったからなんとなくわかる。……肌がすべて緑の鱗になり、角が二本生え、牙ができている。尻尾も出てきた。この特徴と、万識の腕時計ワイズウォッチに記されたスキル名からして間違いない。


――俺は、リザードマンへと生まれ変わった。


《スキル『神竜鱗(ランクEX)』を取得しました。神竜鱗のスキル説明:防御値に+2000の補正。炎・雷・風・光・暑さ・寒さに耐性を得り、水と闇が弱点になる》

《スキル『神竜鱗』、『神竜血』、『神竜眼』を複合し、複合スキル『神竜人シグルズ』を取得しました》


■ダンザ=クローニン

■力652 耐久2601 敏捷582 運730 生命力590 魔力534

■ユニークスキル『鋼鉄胃袋(アイアンストマック)(ランクF)』

■スキル『神竜人(ランクEX)』

■耐性:炎・雷・風・光・毒・暗闇・眩光・猛暑・極寒

■弱点:水・闇



 ――――――――――

【あとがき】

『面白い!』

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何卒、拙い作家ですがよろしくお願いします!

小説家になろうでも連載中です!

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