【第二話 優しきマンダリン、予想外の仲間!】
~プロローグ~
三日月が夜空を照らす。建物の影はぐんと引き延ばされ、地上世界を黒く包み込む。窓辺に座り空を見上げる猫は、そこから伸びる影に哀愁の気配を孕んでいた。
部屋の奥で毛布にくるまっていたアールグレイは、隣にシャノンがいないことに気づき、目をこすりながら辺りを見渡す。窓辺に彼の背を見つけると、ゆっくりと近づき隣に座る。
「あ、悪い、起こしたか?」
「いいや、大丈夫だよ。……眠れないのかい?」
「………あぁ、俺達が今ここで眠っている間に、国は今も戦い続けているんだって考えると……な」
「でも、休むことは大事だ。シャノンが倒れたら元も子もないだろう? 彼女達はまだ魔法少女になったばかりだから、僕達がサポートしないと」
「……あぁ、そうだな」
二匹は寝床へ戻ると、使命を胸に誓い瞼を閉じた。
※ ※ ※
三日月へ向け、一つ溜息を吐く。
少女は憂鬱そうな表情で眉を下げ、震える唇をきゅっと噛みしめる。何度も噛まれた唇は赤く腫れ、じわじわと痛みが広がる。肩をぎゅっと抱き寄せ、朝日が来ないように懇願するも、無慈悲に進む時計は深夜二時を指し示す。
「…………いつでも、笑顔で……誰かを楽しませる……それが、僕の………」
肺の奥まで吸った息は、まるで喘息のように喉を荒く通り過ぎ、今すぐにでも吐き出しかねない感情を分散させる。微かに歪んだ笑顔を浮かべた少女は、陰鬱な気持ちを押し殺すように手を強く組み合わせ、聖女のような清廉な横顔でぽつりと祈った。
「………いつか、叶いますように」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます