お祈りメール

もちっぱち

お祈りされてしまうものとは

ある日

私は黒いスーツを着て

自宅から歩いて10分もかからない

食品工場の一般事務の面接を受けに行った。


「近くなんですね。」


面接官の人は、話しやすい人だったと思う。

でも私は、何度も落とされる面接に緊張して挙動不審になっていた。


精神的に弱い人というレッテルを

感じとられたのかもしれない。

履歴書を持った手は震えていたかも

しれない。


「そうですね。7分くらいで着きます。」


時間なんて測らなかったけども大体それくらいかなと思って答えた。


「そうなんですね。

 仕事は平日と土曜半日ですが

 できそうですか?」


「はい、大丈夫です。」

(全然大丈夫ではない。)


私は前職を体調不良で辞めている

精神的ダメージだ。

まだ癒えていない。

でも無職のままは嫌だと

何度もハローワークに行って紹介状を

発行してもらっていた。


顔と気持ちは裏腹だ。


「わかりました。

 面接は以上です。

 ありがとうございました。」


割と短時間の面接だった。

なんだかドキドキしすぎる気持ちが

ばれているのではと思った。


最後の言葉では合否は連絡しますねと

言われたが、連絡の言葉に半ば有頂天になる。


結果は翌日の自宅の受けポストに

しっかり届けられていた。


確かに町内で徒歩10分以内。

面接しにいくのは近い。

でも郵送って本当は

2日かかるんじゃないのか。

どんだけ嫌だったのかわからないが、

昨日直接手渡した履歴書が丁寧に三つ折りにされて茶封筒に入っていた。

もちろん切手も貼ってある。


さらに白い紙に合否はお見送りされて

今後のご健闘をお祈りしますという内容。

何をどう健闘しているか、

そんなこと1ミリも思ってないくせにと

感じてしまう。


最短翌日で断られたのは

その面接が初めてだった。

通販の発送期間じゃないんだから

せめて2日目にして欲しかった。


この世に存在してはいけないか

ダメな人間なのかと

お祈りされるたびに思う。

面接で落とされまくって亡くなった人もいるとニュースやネットの情報を見たことがある、


尚更,新卒ではなく中途採用。

採用人数1人の狭き門だ。

転職回数が多いだけで

すぐ辞めるんじゃないのと疑いを

かけられる。

辞めるのはそういう職場にした

上司の問題だと思うのは私だけか。


ホワイト企業にするかしないかは

経営者にかかっているが、

いくら上司がよくても同僚との相性が

良くないと続けたくても続けられない。


難しい問題だ。


私はわりかし上司との相性が良い方だった。

恋愛まで発展するわけではないが、

ちょうど良い距離感を保っていた。

媚を売るわけじゃない。

普通に会話しただけだ。


でも、それをよくみていない同僚が多い。


嫉妬されやすかった。

その同僚までごまをすって

良いポジションにしていても、

嫉妬心が半端なく、

耐えられなくて辞めた。

いじめに近いものがあったのだと思う。


人の気持ちを敏感に反応する私は、

少し時間でもその空間にいるのは

耐えられない。

殺気のような感じさえする。

でも平然と生きている。


面接も同じだ。

会った瞬間に分かる。

いいかもしれないとか、

これは違うだろうとか。


今回は、あまりいい印象じゃないなと

わかっていた。

そちらがそれならしかたないよねという話。


後日談で、高校の友人が同じ会社の面接を受けて働き始めたらしいが、数ヶ月で辞めたらしい。事務の中にいらっしゃるお局様がかなりの人ですぐ辞める人が後を経たないそうだ。蓋を開けてみるとそうなるのか。

どおりで何回も求人募集してるはずだ。

欠員募集の一般事務はたいてい

評判の良くない所が多い。


こっぴどく新人いじめが発生してる

可能性が高い。


私は友人の話を聴いて、

面接落とされて本当に良かったと感じた。



就職先というものは本当に

人間と人間のご縁で成り立つものであって、

人格否定されたと悩む必要はない。


受かっても不幸になることだってあるのだ。


合格がすべてではない。



たとえ、受かって、

仕事をして辞めざる得なくなったとしても

また次のところを探せばいい。


今は万が一、つまらないと言われ続けても

何度も新しい作品を生み出していけばいいと

面接をたくさん受けた私の黒歴史。



【 完 】





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お祈りメール もちっぱち @mochippachi

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