関西の不動産屋でバイトしてたけど怖い話する

ワシュウ

第1話 住宅の内見

当時、私は大学生です

関西の某不動産チェーン店でバイトしてました

ちにみに大手なので売買と賃貸の両方


ホームページ上に間取りを書いて載せたり、営業が撮ってきた写真をアップしてました

よくある「駅まで徒歩〇〇分!」とかは成人男性が速歩きした時間ですし

近くに何かあれば「スーパーが近くて便利!」とか「病院が近くて安心!」みたいに書けるけど

本当に何にもないときは「閑静な住宅街」とか書いて載せてました


家を買うときはしっかりと値段交渉するといいですよ。

売れないと、どんどん値下げしていくんですけど新築の初期段階でも500万下がった事がありました。

買うと決めて営業と話を進めてから「もっと下がりませんか?不動産って売れ残りは安くなりますよね?」とか…、それはさて置き


関西では内見よりも内覧って言ってました、ここではお題目なので内見にします



写真の撮り方が下手な営業担当の為に内見に付き合った時の話です


営業の車で内見に向かう時、最初は普通の世間ばなしで、新築を買ったお客様の家の掃除を手伝ったとか、サービスでエアコン付けたとか話してました。


そしてオカルト好きとしては、気になる事を聞きました

「事故物件って、あるんですか?」


「あーあるよ。聞きたい?」


営業もホラー好きっぽくて、楽しそうに話してくれました。


バイト先の不動産チェーン店は

過去に自殺や他殺や孤独死とかの情報は開示してます

ただし借り手が二人目くらいで公表しなくなります。

「前回は学生さん、その前は単身赴任のサラリーマンですよ」

とお客様に説明します。

その前にOLが死んでますよ…とは言いません



営業の体験した話し―…

自分の担当物件の内見希望者が来た

その人は占い師をやってると言う40代後半のおばちゃん


そこはアパートの1階、相場よりかなり家賃が安い

なぜなら最近自殺者が出たばかりのいわゆる事故物件だから

案内の際に、過去に自殺があった部屋ということを伝える


「せやから部屋をちゃんと見に来てん!私、見えるから。

良いか悪いかは自分で判断するわ!アカンかったら退散やで!」

とケラケラ笑って余裕そうだった


占い師って幽霊見えるの?

まあいいや、では早速行きましょう!と車に乗せて出発した


時間は18時過ぎ

秋の終わりで、すでに薄暗くなってる頃だった。

大家から預かっている鍵で、玄関のドアを開ける


「あら、全然大丈夫!大丈夫よ!」


本人が大丈夫って言うから大丈夫やろ、と思って部屋の説明しながら見て回る

ベランダ、リビング、水回りなどを見て最後に

「こちら収納ですね」とクローゼットに手をかけた


ガタガタ


「あれ?開かない?」


どうやらドアの内側に何か引っかかってる

しかも、中から腐ったような匂いがしてくる

まさか猫かネズミの死骸?

何回かガタガタやってると隙間ができた


ギョッとした


クローゼットの隙間からボサボサの髪の毛が出てきて

さらに、そこの隙間から黒く落ちくぼんだ目が覗いてた


目が合うと 「逃げるわよ!早く!」


バシッと肩を叩かれて

転がるようにその家を飛び出し車に乗った


聞いてもないのにオバチャンが喋りだす


「ちょっと何なのあそこ!大丈夫やと思ったらクローゼットにいたやんか!

あー怖っ!恨みがましい目でこっち見てきたで!

薬かなんか飲んで確実に死ぬために首吊ったのね、リストラされたオッサンやったわ」


後に大家から聞いた話しでは、自殺したのは若い女性だった

職場のイジメが原因とかで、クローゼットの内側にビッシリ怨み言が書いてあったらしい


もちろん壁紙は張り替えてるけど

あのクローゼットで首を吊って死んで、発見が遅れて腐臭が凄かったとか




「今は取り壊されてキレイなメゾネットが建ってるよ」


「それは、何とも」

マジの事故物件の話しめっちゃ怖い!


そして、怖い話しを聞いて後悔した

なぜなら今日は天気が悪くて、昼過ぎなのに既に外はもう薄暗いです


目的地について内見の開始です

住宅街のはしで、後ろは区画整理されたままになって雑草が生えた更地です

斜め後ろに三階建てがあるせいか、ベランダの日当たりが悪いそうです


営業の車から降りてデジカメで物件の外観から撮っていく

中に入ってキッチン、リビング、和室ー…と撮って、最後にトイレも撮ろうと思ったら


ガチャガチャ


「え?ドアが開きませんよ…もしかして誰か入ってる?」


嫌な予感しかしない


「そんな訳ないやん…なんやろ鍵がかかってるな」


ドアノブの下にある溝にコインを挟んで回すと簡単に開くタイプのロックだから

営業がサイフから小銭をだして簡単にガチャっと開ける


ギョッ! ……腐敗臭がする!



「逃げるで早く!」



営業の後ろにいたから、私はトイレの中が見えませんでした

だけど真っ青になった営業が私を押し出すようにして家から出ました


ドタドタと靴も履かずにスリッパのまま玄関から飛び出し

一旦外に出て一息つきます


「ハァ、ハァ、あの、靴取ってきます」


「あ、うん……」



スリッパのまま帰りたくないので私は靴を取りに行くことに

玄関のドアを恐る恐る開けて中を見ます…特に異常は見当たりません

持ってたデジカメで一枚撮りました、なんとなく


それから靴を営業の分も持って

玄関の靴箱の上に置いてた資料や散乱してる荷物をまとめて、玄関から出て鍵をかけました。


え?いない!

と思ったら、営業のオッサンが車の影でタバコ吸ってました


「何もいなかった?大丈夫やった?」


「はい…あの、さっきトイレの中に何を見たんですか?」


営業は私の質問には答えず車に乗りました

しばらく走って物件が見えなくなると、ようやくホッとしたような、小さなため息を吐きました


「事故物件、行きたかったんやろ?」


「行きたくないですよ!」


「え?興味あるんちゃうの?」


「話し聞くだけで良かったのに!」


いや、まさか本当にここ事故物件だったの?

でも資料には載ってなかったのに


「誰も死んでないから事故物件ちゃうよ

けどな、いわくつきやねん。何でか変な事おこるねんて、トイレの鍵もよく勝手にかかるしな

前に、小さい子供が閉じ込められて大騒ぎした事あってん」


「リアルな体験はしたくないです!」


「いやー、靴取りに行くって言って玄関入ってった時は感動したで!すごいやん自分

あ、トイレにいたのって青白い顔した小学生くらいの子供やで!めっちゃビビったわ」


「事故物件ならもっと早く言って下さいよ!」


それから聞いてもないのに営業さんは帰りの車で怖い話やいわくつきの物件の話しを聞かせてくれました。

何か喋ってないと怖かったのでしょうけど、ジャンル選んでよ!


店に帰ってからデジカメで撮ったやつを見て背筋が凍りました

しっかりと心霊写真が撮れてました!ひぇ

前回営業が撮ったやつも見せてもらいましたが、使い物にならないものばっかりです


オーブとかで反射しまくりだし

部屋の扉に手が写ってたり、窓ガラスに三人目の影があったり、開き戸の隙間に黒い髪っぽいのが映り込んでたり


社長が画像を見て何故か大爆笑して

「自分ら、写真撮るの下手やなー!」


そして、幽霊が写ってないのを使えと無茶振りしてきました

なんとか使えそうなのだけホームページにアップしました、頭イかれてるわここの社長さん!


ただ最後に玄関から撮った画像だけはカメラにデータがありませんでした

しっかり押せてなかったのかな?


翌日、大学の講義が終わった頃に

バイト先の事務の人から電話がかかってきました


「ちょっと!あんな写真使ったら駄目よ!」


「え、何ですか?」


「人が写ってたら使えないのよ!削除しといたからね!」


「えっと…?昨日の内見のやつですか?」


意味わからなくて困ってたら

営業から画像が送られてきました


ゾッとしました


多分あの時の最後に撮ったやつです

玄関から奥の方のカメラの切れ目に足が映り込んでました


くすんだピンク色のワンピースと子供の足が…


一応載せたのは私じゃないと言いましたが、信じてもらえず

「はぁ?!あんた以外に誰がやるのよ!」とヒステリックに電話を切られました。


送られて来た画像はすぐに削除しました

ってか、わざわざ画像送ってこなくていいし!!


その物件は、毎週のようにどんどん値下がりして、築年数の割に安く相場より一千万ほど値落ちしました。


何も知らない小さなお子さん連れのニューファミリーが買ってました

東京から引っ越して来た方で、相場とかに疎い方だから

「地方って安いですねー」と呑気そうに営業と話してました


営業も罪滅ぼしか罪悪感か、人がたくさんいる引っ越しの日に手伝いに行ってました

私も誘われましたがバイトの日じゃなかったので断りました



そこの不動産屋は無言電話もよくかかってきます

事務のバイトの私が一番電話をとるのです

後ろで病院っぽい音や、駅の構内っぽい音がしたりしてたので

最初は間違って電話かけちゃったやつかな?と思ってましたが

毎回同じ曜日の同じ時間帯にかかってくるので無言電話なんだと悟りました


一度、電話を取って受話器を置きっぱなしにして、何分で切れるかの実験を始めました

スマホからかけてるとしたら

料金もったいないと思って辞めてくれないかな?とか思ったからです


30分以上繋がったままでした


他のお客さんの電話が繋がらなくなるからそこで切ったのですが…切る瞬間に


『ザー…もぅ終わりぃ?』


女の人の声でボソッと聞えてゾッとしました


後で営業が教えてくれたのですが、実は犯人は判明してて、5年くらい前に住宅を購入されたお客様らしいです

ちょっと精神を病んでる人のようで

気に入らないのに無理矢理買わされた!とクレームが来て、最初に真面目に対応してしまったとか


当時の営業担当は既に辞めていて、次に引き継いだ人も辞めています

仕方ないので会社全体で引き継ぐ事になったそうです


最初は、罵詈雑言の電話だったのが今は無言電話に落ちついたらしいです

信用問題に関わるので警察には通報できず


精神科病棟からかけてるとしたら、暇人に付き合ってあげる必要はないですね

だからみんな無視しろって言うんですね

でも電車の構内から電話がかかってきた時もあったので、精神科病院は通いかな?とか思ってました


気になってその人の名前を検索したら

去年電車に飛び込んで自殺してました…


不動産屋のバイトは1年ほどやって、就活があるからと辞めました

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

関西の不動産屋でバイトしてたけど怖い話する ワシュウ @kazokuno-uta

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ