第8話 魔界住宅内見係②

 グダエラ様、背が高い。見上げるこちらが首が痛くなりそう。まあスライムなので首がいたいなんてこととは無縁ですが。


「あの、グダエラ様?」


 はっ、とここで気がついた。もしかしてあの紹介したお部屋になにか不備があってそれで来たのでは?


「失礼しました! いまお茶を用意しますのでどうぞそちらにおかけ下さい!!」


 そうならば、別のお部屋の用意だって考えておかないと。相手は魔王様、失敗は処される!

 立ち上がろうとして、肩を押さえられ座らされる。

 そして私の横にコトリと置かれたのはいつぞやにお出しした高級お菓子の3倍容量箱が!!


「今日からまたここで働かせてもらうぞ」

「え?」

「その挨拶の菓子だ」

「え、でも魔王のお仕事の方は……」

「全部グノに任せてきた!! まだまだオレの言葉が下まで伝わっていない事がわかったからな。なに、心配はいらない。アイツは優秀だからな。たまに顔を出してやるからと言えば快く送り出してくれたぞ」


 グダエラ様はそう言って意地悪そうに犬歯を見せながら笑う。

 わぁ、上司からの圧力。グノさんの受難、可哀想です。


「それに最高の家をまだ見せてもらっていないからな」

「えっと」

「約束しただろう。オレに見せてくれるって」

「そ、それは……」


 あまり思い出したくないまだ変身も出来なかった全裸スライム時代。

 私だけの家をいつか手に入れる。魔物だからって、諦めない。きっと出来る。

 だから、魔族みたいな姿に変身出来るように特訓した。

 世が代わってグダエラ様のおかげで魔物達が自由になったから、今度はお金を手にするために働き出した。最高の家を探すために一石二鳥な不動産会社で。


「部屋がいーっぱいあって、余裕があったら隅っこくらいなら貸してあげるとは言いましたがまだ最高の家を見つけていないので……」


 もごもごと口ごもってしまう。


「覚えてくれてたのか」


 パァッとグダエラ様の顔が明るくなる。眩しい。


「さぁ、最高の家を探そう。オレも手伝うから」

「う、うぇぇぇぇ?」


 ◇


「いらっしゃいませ。シタッパーズへようこそ」


 今日もお客様に最高のお家をご紹介。

 なんと魔王様お墨付きですよ。秘密ですが。


「こちらのお家の最高ポイントは――」

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シタッパーズの魔界住宅内見係〜魔王様はスライムで幼なじみ!?〜 花月夜れん @kumizurenka

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