第3話 ゴブリンのお客様②

「こちらがおすすめの物件、古代遺跡を模したお部屋でございます」

「おぉ、すごい」


 危なく昇天から無事帰還したお客様、ゴブリンのザッコーズバーガーさん。略してコーズさんを連れて住宅内見してもらっています。

 集合住宅のこの一室は、シタッパーズに来られるスライムの次に多いお客様ゴブリン用に改装してあります。ゴブリンにはじめっとしてたり少し暗い感じが人気です。彼らが好んで住んでいた場所に似ているからでしょう。そして古代遺跡はその様な雰囲気をしながら高級感も感じられる、まさにロマンが詰まったお部屋なのです。


「あの……男性に案内をお願いしたかったんですが」

「すみません、彼は内見係ではないので」


 グダエラ様には旅行中の社長に代わってシタッパーズでお留守番をお願いしています。なのでここにはお客様と私二人きりです。

 女性型だと不都合があったのでしょうか。なら今からスライムらしく男性型に変身する?

 ただ、一度スライム型を通らないといけないので出来ればこのままが助かるのですが。

 なんせ、スライムは全裸ですから……。


 あぁ、でもそうですね。男性同士でなら話しやすい事もあるかもしれませんでした。あんな事やこんな事の相談はやはり同性がやりやすいでしょう。

 どこか物陰で変身してきましょうか……。


「少しのお時間、お一人で内見してもらっていてもよろしいでしょうか」


 私はコーズさんの許可を取り物件近くの物陰に隠れる。ここならいいかと変身を始めました。スライム型に戻ったところで、服がパサリと落ちてくる。ちょうど変化後現れるのがお腹の部分なので下にスーツのパンツ、上から上着が降ってくる。

 素っ裸の状態の時に数人の足音がしたのだ。

 私は必死に隠れました。それはもう必死に。雑魚スライムの全裸に興奮する変態はそうそういらっしゃらないでしょうけれど。だって、それが普通だし。(まあ、一部(現魔王等)をのぞいて)


 急いで戻らないと。そう思ったのに隅の掃除が行き届いていなかったようで、そこに隠れた私の体中に大量のホコリやゴミがついてしまいました。


「どどどど、どうしましょう」


 とりあえず、人型に戻り全身を手で払う。焦っていたせいで慣れた女型に戻ってしまいました。

 服を着て、静かに足音が向かった先に向かいます。


「あれ、もしかしてお客様のお知り合いでしょうか」


 大きなゴブリンさんと数人のゴブリンさん達がコーズさんが内見されている部屋に入っていきます。

 大人数なんて聞いてない。雑魚スライムなのでハートだって雑魚です。大人数や大きな体の魔物や魔族はビビリます。(あぁ、でも魔王グダエラ様襲来の時はそれほどビビリませんでしたね。あれはやはり本能で彼がスライムだと感じ取ったからでしょうか?)


「お前のようなシタッパが、たまたま拾った宝石が貴重だったからって家に住めると思ってるのか? お前が契約さえ済めば俺様が住んでやるから、一番いいところに決めろよ」


 あぁ、盗み聞きなんて、してはいけないと思いつつ相手様の声がでかすぎて廊下まで聞こえています。

 そっか、コーズさんそんな幸運を拾ったのですね。おめでとうございます。支払いは問題なく出来ますね。


「なぁ、つけてきて正解だったでしょうホブ様。オレ達にもおこぼれお願いしますよ。なんせ、こいつの計画聞いて、探りをいれたのオレですから。ははははは」

「さっさとあの女と契約を交わせよ。ん、いいこと思いついたぞ。あんな小さな女従業員なら俺様達でも倒せるかもしれないなぁ。そして、ここをタダにしろと上を脅せば……。雑魚相手の不動産屋だ。従業員全員雑魚だろ」


 はい、雑魚です。雑魚オブ雑魚。スライムですから。今だってビビりまくって足がぷるぷると震えております。


「さっさとあの女を呼べよ。すいませーんって。なぁ、コーズ。ぎゃはははは」


 下品な笑い声が響きます。


「……ジャ、ジャジャナさん!!」


 コーズさんの声が震えている。でも、はーいって戻れるわけないじゃないですか。こんな会話聞いちゃったら流石にお客様でも!

 私はそろりと逃げに入る。そうだ、グダエラ様に交代してもらおう。そんな事を考えてた。


「逃げて下さい!! 今すぐに!!」


「何やってるんだ!! お前らぁッ!! うちの大事なお客様にッ!!」


 ハッ!? 気がつけば私、紹介中のお部屋に乗り込んでおりました。

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