第4話 ゴブリンのお客様③
「あの、関係者以外はお引き取りしていただきたいのですが」
足を震わせながら私は必死に声を絞り出す。
雑魚丸だしの震えっぷりだ。
「関係者です。残念でした。こいつのご主人様です」
「ギャハハハ」
「あの、だからお客様以外は」
「あぁ? 客の主人はいちゃいけないっていうのか?」
うぅ、怖くて足がぶるぶるします。変身までとけて頭の先からスライムの正体が見えちゃいそうです。
「ぷ、ははは。コイツスライムじゃねーか!!」
あぁ、やっぱり。ほんの少し頭から普段は隠せているスライムのぷにぷにが出現してるぅぅ。
「雑魚が、家なんか夢見てんじゃねーよ。ったく。なぁ、コーズ」
私とコーズさんは捕まってしまいぐるぐるお縄になっています。私は正体がスライムだからでしょう、念入りに縄が巻かれ縄人間です。こんな人前でスライムの姿になるつもりはないのに……。とりあえず、呼吸用に口だけはなんとか出してもらっています。
「よし、向こうに戻るか。そのまま会社のヤツも縛って脅せば書類書かせられるだろう。最近は魔王のせいでやれ平等だなんだとうるさいからなぁ。上の魔族どもだけに言ってくれればいいものを。オレ達までなんてまったく迷惑なやつだ」
私の中で何かがプツンと切れました。
魔王グダエラ様が実現してくれた希望を。私達シタッパに夢を叶える機会を作ってくれた。それをバカにされた。
「魔王様はスライムにだって家に住んでいいんだって希望をくれたんだ。それを――」
「はぁ、スライムが何だって!?」
「魔王様の事を……コーズさんの夢を……私の夢をバカにするなぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
スライムは流動体だ。だから縄なんて意味がない。そう、スライム体に戻りさえすれば!
ゴブリンの悪者に正義の頭突きをかまします!!
そのまま首から顔にかけまとわりつきます。
スライム溺死。ただの水よりも粘度があり、さぞ苦しいでしょう。ああ、でも体の中にコイツの顔があるのが気持ち悪い。
「ぬぶぶぬぶぶぶ!(雑魚がナメるな!)」
「ぴぎゃっ」
お腹の中を噛みつかれ私は拘束を緩めてしまいました。その隙に悪者ゴブリンが顔を大きく振り私は縄人間の抜け殻の横に飛ばされてしまいました。
「どうせ向こうも雑魚なら処分したって構わないなぁ」
悪者ゴブリンは持ってきていた木の太い棍棒を振り上げました。あぁ、どうしましょう。魔王グダエラ様一人に任せているところなのに、帰られなくなるなんて……。昔の……、別れた日からの事をまだ何も教えてもらっていないなぁ。
あれが当たったら流石に木っ端微塵になって再生出来ないかなぁ。
「さようならだ、雑魚!!」
私へと振り下ろされた棍棒の衝撃はいつまでたってもきませんでした。
何故? 答えは簡単。
「何をしている?」
私の前でグダエラ様が手で棍棒を止めていたからだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます