第10話 真実の物語
「いいねえ!愛って!」
「母上…?」
「ラン!お前なにを!」
「ん?魔王と子を成していたなんて人類に対する裏切りじゃないか。僕は英雄として当たり前の行動をしたんだけどな。あっ!そう言えば来る途中魔王も殺しといたから!部屋の外に首置いといたから後で見ておいてね!」
突如、現れた木谷蘭はアルセイラだけではなく既に魔王も殺害していた。
「その後のことは私も記憶が曖昧なんだ。木谷蘭が放った攻撃をくらい意識を失ってしまったからな。だからジークがどうなったのかもわからない。」
「魔王と王妃の殺害はジーク・フリードじゃなくて木谷蘭だったのか…。話ではジークはその後怪人化してミカエルや木谷蘭を含む大勢の人を殺したって聞いたけど…。」
「ジークが怪人化したことは私も風の噂で聞いている。もしも本当に怪人化しているのならば寿命で死ぬことはない。私はジークにもう一度会いたい…。」
「ある理由ってのは俺たちにジークと会える様協力して欲しいってことか…?」
「まあそんな所だ。」
「あー!わかった!お姉さんはそのジークって人が好きなんだ!」
「こ、こら!メイっ!」
メイのその言葉を聞きベルゼヒルトは仮面を外した。その素顔は綺麗な顔立ちだったが、恥ずかしさからか頬を朱に染めていた。
「いいや。愛しているんだ。」
「んー?好きと愛してるって何が違うの?」
「言葉自体の意味なんて然程変わらないのかもしれないな。けれど、この言葉は彼から貰った大切な言葉だから…。」
そういうとベルゼヒルトは更に頬を赤らめた。
「協力するって言ったって俺たちは何をすれば?」
「ベルゼヒルト様は木谷蘭との戦闘後からこの城に幽閉されてしまっているのです。」
エルの話では木谷蘭の攻撃をくらい気を失ってしまったベルゼヒルトだが目を覚ますとおそらく木谷蘭が設置したであろう結界によって城から出ることが出来なくなってしまったらしい。
「その結界を壊せばいいのか…?」
「いや今のお前の実力では壊すことは不可能だ。そもそも壊れるのかすら危うい。私の持つ魔槍グングニルでさえも防がれたからな。」
「魔槍グングニル…?」
勇希が疑問に思っているとアリスが説明をしてくれた。
「英雄様は知らないんですね。魔槍グングニルとは古くから言い伝えられている三種の神器の内の一つなんですよ。しかし実際に存在するものだったなんて…。」
この世界には三種の神器というものが存在しており、聖剣エクスカリバー・魔槍グングニル・霊弓ミストルテインという名前をそれぞれ宿している。神器は他の武器とは違い自らが持ち主を選ぶとされている。その威力は絶大で召喚英雄にも引けをとらないと言い伝えられている。
「そんなやばい武器でも…。」
「だから結界を壊すのではなくジークを探して欲しいのだ。」
「探すって言っても手掛かりもないんだろ?」
「ホホホ。意外と近くに居たりするかものぉ。」
「そんな簡単にいくかー?」
「…。」
「えっ!?誰!?」
突如現れたその生き物は、宙に浮きドラゴンの様な見た目をしているがサイズは子猫の様に小さく、その可愛い見た目とは裏腹に何故かおじいちゃん口調で話し始めた。
「ホホホ。わしはドラジじゃ。」
「ドラジ。居たのか。」
「え…知り合い…?」
「ま、まさか…!初代国王マンガンが召喚したとされる精霊様…?」
アリスは驚きのあまり目を点にして質問をしている。
「ホホホ。懐かしい名じゃのぉ…。いかにもわしがその精霊じゃ。」
(ついに精霊まで出てきちゃったよ…。)
「41人目の召喚英雄とそちらの可愛いお嬢ちゃん達はティアとシルクの娘じゃな。」
「なんで私達の親の名前を…?」
「ホホホ。わしはマンガンとの契約であやつが築いた国をずっと見守り続けてきた。しかし1人で全てを見るのは不可能じゃ。だからマンガンはあらかじめわしとの契約にあの国で生まれた者や召喚された英雄達のことはある程度把握できる様な条件を組み込んでおいたんじゃよ。」
「なんでそんな奴が帝国に?」
「ふむ。わしはこの娘を気に入っておるからな。たまにこうして遊びにきとるだけじゃよ。」
「そんなことはどうでもいい。私の頼みを聞いてくれるのか?どうなんだ。」
「それなんだけど俺的には協力する気満々だ。けど俺一人じゃ時間がかかり過ぎちまう。だからアルバンス達にも協力してもらえる様相談してみる。」
「王女の護衛隊長か…。」
「ん?アルバンスとは誰じゃ?」
ドラジがあるのか無いのかわからない首を傾げながら不思議そうに勇希達に尋ねた。
「アルバンスって言うのはバラガントの護衛部隊の隊長で…ってなんでお前が知らないんだよ?」
「わしはアルバンスなんて奴は知らんぞ?」
「は?アルバンス・フリードだよ…。」
(あれ?そういやアルバンスもジークと同じ性を持ってんだよな…。偶然か?)
「アルバンス・フリード…。しらんな。昔ジー坊の友達にアルバンスという男が居たが彼はベルゼヒルト誘拐事件の後の戦争で命を落としておる。今現在バラガント王国にアルバンスという名前の人間は存在せんぞ…?」
「どういうことだ…?」
(ジー坊…。)
「ねえねえ。アルバンス隊長とジークってどっちもフリードなんだよね?」
「確かにメイの言う通り何か関係があるのかもしれません。」
話を聞いていた姉妹もアルバンスとジークの共通点に気が付きそこに何かあるのでは無いかと主張をしている。
「ジークがアルバンスを名乗り国に身を潜めていると考えているのか?」
「ドラジお前ジークの居場所はわからないのかよ?」
「ふむ…。そもそもわしはその人物の居場所まではわからぬ。そして怪人となってしまった者の情報は見れなくなってしまうのじゃよ。」
「てことは怪人となったジークがアルバンスに成りすましているって考えるのが妥当か…?いや、考えててもわからねえ!とりあえずアルバンスに直接聞きに行ってくる!2人のこと頼んだー!」
そう言い残すと勇希は1人で帝国を飛び出しバラガント王国に向かって走り去ってしまった。
「後先考えずに行動するところお前にどこか似ているよ…。ジーク。」
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