第11話 金色


(もしもアルバンスがジークなのだとしたら何のために王女の護衛なんかやってんだ?それにあいつのスキルは『操縦士』だったはずだ。)


帝国を飛び出しバラガント王国に向かう途中、勇希はそんなことを考えていた。

今走っている森林を抜ければ王都に辿り着くはずだが勇希は後少しと言ったところで走るのをやめた。


「なんだこれ?」


勇希がそっと腕を伸ばしてみるとそこには見えない壁の様なものがあった。


「結界…?これじゃ街には−−−」


「え、英雄さま…?」


どうしたものかと勇希が呆然と立ち尽くしているとかつて町で怪人を討伐した際に見かけた住人が現れた。


「英雄様じゃないですか!助けに来てくれたんですね!」


「た、たすけ…?」


その住人をよく見てみると髪は汚れ、服には所々燃えた跡の様なものがあった。


「何があった…。」


「…。私達はいつもの様に仕事をしていました。そうしていたら急に町の至る所で火事が起こったのです。」


「怪人か!?」


「わ、わかりません。私は何人かと一緒に子供達を連れ隣町に避難しましたが、憲兵として働いてる夫が心配で1人で戻って来たんです。ですが、見えない壁の様なものがあってこれ以上進めないでいるとそこに英雄様が…。」


「なるほどな…。町のことや旦那さんのことは俺に任せてあんたは子供達のところに戻ってやってくれ…。今頃怖くて泣いてるかもしれないぜ?」


勇希がそういうとその住民は「夫を頼みます。」とだけ言い残し隣町へと向かった。


「とりあえずこれをどうにかしないとな…!」


勇希は結界に向かい渾身の一撃とも呼べるであろう威力の正拳を繰り出すが辺り一面に衝撃音が響くだけで結界自体はビクともしない。


「くっそー!いってえな!」


(しかし全力でやっても壊れないなんて…まさかベルゼヒルトが言ってた結界と同じものか…?)


その後も勇希は結界を何度も何度も殴り続けるが一向に壊れる気配はない。


(町の方から煙が上がってやがる!早くしないと−−−)


「どうやら君にも壊さない様だね。」


「あ、アルバンス!」


「やあ。そんなに殴り続けて…君の手ボロボロじゃないか。」


「何でお前がここに…。」


「任務で外に出ていたんだよ。戻って来たらこの有様さ…。勿論、君に壊さないものが僕に壊せる訳も無いしね。」


「…。なあ、アルバンスお前は一体−−−」


「危ない!」


勇希がアルバンスに問いかけようとすると何処からかミサイルの様なものが飛んできた。

勇希はアルバンスに腕を引かれ間一髪のところで直撃を免れた。


「わ、悪い助かった。」


「いいんだ。そんな事より…。」


「ああ。」


上空から勇希達の目の前に現れたのは金色と言った派手な色であるところ以外はシンプルなロボットの様な見た目をした人型の何かだった。


「オマエ…。ショウカンエイユウダナ?」


「そうだ!お前は誰だ!」


「フッ…。オレノナハプラチナマン!カツテハオマエトオナジショウカンエイユウダッタガイマハカンブトヨバレテイル。」


「プラチナマン…。それっておまえ…。」


「ハッハッハ!カンブデアルオレニオマエゴトキガカナウトオモウナ!」


「アイアンマンのパクリじゃね?」


「…。」


「…。」


しばしの沈黙の後、プラチナマンは一言も発さず勇希に向かい両腕を構えた。


「チャージ40%シネ!」


プラチナマンの両手からエネルギー波の様なものが放たれ勇希は直撃し、隣にいたアルバンスは風圧で吹き飛ばされた。


「勇気殿!!」


「パクリナドトフザケタコトヲイウカラシヌコトニナルノダ。」



「死んでねえよ…パクリ鉄屑野郎…!」


直撃を喰らった勇希は何とか生きてはいるが負ったダメージは相当大きい。


「テツクズ!?イイダロウ!100%デキサマヲホウムッテヤル!」


そういうとプラチナマンは再度、両腕を突き出しエネルギーを溜め始めた。


「だめだ!勇希殿!挑発するな!」


「お前が幹部なんて笑わせんな!ウィザーリア達と比べたらてめえなんかベジータとナッパくらい違えよ!」


「…。シヌガイイ!」


(今だ!)


プラチナマンから放たれたエネルギー波は勇希に交わされ後ろにあった結界に直撃し、破壊した。

勇希は自分では破壊できなかった結界も怪人の幹部レベルの攻撃なら破壊できると考え、あえてプラチナマンを挑発する事で攻撃を誘発させたのだった。


「シ、シマッタ!」


「アルバンス!お前は町の人を頼む!」


「わかった…。死なないでくれよ?」


「出来るだけな!」


とは言え勇希の身体は、ほぼ限界を迎えていた。


(アルバンスに任せて大丈夫かな…。にしても俺死ぬかもな。)


「ケッカイヲコワシテシマッタガマアイイダロウ…。ジカンカセギハオワッタ。オレハイソガシイカラコンカイハミノガシテヤル。」


そう言い残しプラチナマンは空の彼方へと消えていった。


「くそ…。俺弱えな…。」


勇希は生き残った安堵と同時にまたしても幹部相手に手も足も出なかった自分に怒りを募らせた。





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