第4話 「魔物討伐部隊入隊」試験開始

「アスカ、君の好きな人まずいんじゃない?」


「大丈夫。

 というより、好きなんて言ってない」


魔物討伐部隊入隊試験の結果を待つ強者たちは”それ”を肌で感じていた。

そして息を飲む。

自分の教え子がそれに遭遇していないことを祈って。


「クッ、、」


つーっと口から血が垂れる。

ロイは束の間の攻撃に防御は出来たが吹き飛ばされていた。


「強すぎだろ…」


ただ、実力を試すチャンスでもある。

体制を直し、再び剣を構える。


「お、雑魚じゃねえか、」


「お前は…」


のそのそと歩いてきたのは中学の同級生の男。

そいつは俺を確認するなりニヤついた顔でこちらに近づく。


「よこせ」


「なにをだ」


「魔玉、寄こせっつってんだろ!」


空を切る蹴りが目の前に繰り出される。

ただ、その攻撃に違和感を覚える。

(遅い…)


「式神と契約してない雑魚がまだ生きてるなんて奇跡だな。

 いいから寄こせ、殺すぞ?」


「今はそんなこと…」


「火突き!」


こいつは火虎の悪魔と契約をしていたはず。

その記憶通り、同級生の男は腕に火を纏う。

じりじりと燃え上がる腕はロイを捉えられない。


「ほんと、逃げるのはお得意だな!」


「あぶな…」


「なっ…!!」


追撃に出た男だが、白い糸のようなものでグルグル巻きにされる。

それは男の背後にいる巨大蜘蛛の口から出されているモノであった。


「な、何なんだこいつ…」


「二段斬り」


締め付けられる男は血を吐き出す。

それを見たロイは足に魔力を込める。

踏み込んだロイは素早く、男を巻き付けた糸を斬り付ける。

さらに空中で一蹴りして宙に舞い、巨大蜘蛛の目に剣を突き刺す。


「グギャアアア!!!」


その悲鳴のような蜘蛛の叫び声にロイは脳が揺らされる。


「一閃突き」


さらにロイは突き刺さった剣を引き抜き、高く空中に舞って魔力の込められた剣を突き刺す。


「グギャアアア!!!!!!」


さらに大きな叫び声は森全体に響き渡る。

ロイの脳内はさらに揺れるがお構いなしに何度も突き刺していく。


「これで…終わりだ」


アスカから教えてもらった剣技。

「君には才能がある」と言われたあの日のことを思い出して力が入る。

さらに魔力を込めた剣をロイは振り下ろ、


「調子に乗ってんじゃねえ!

 火虎蹴り!!」


「ブハッ、!」


一面が赤く染まった。

熱さが遅れてやってくると同時に痛みがやっくる。

ロイは火を纏った足に頬を蹴り上げられ吹き飛んでいく。


「オラオラオラオラオラオラ!!!!」


男は拳に火を纏い、ロイが剣で抉った蜘蛛の傷を殴りつけていく。

次第に攻撃は加速していき、蜘蛛は呻き声も出さぬまま地面に横になる。


「どうだ!

 俺が、俺が化け物を倒したぞ!!!」


息を切らしながらも両手を高く上げる。

それと同時に男は蹴り上げたロイに目線を向ける。


「残念だったなぁ、?

 手柄は全部俺のもんだ」


身体が動かない。

脳が揺れすぎて立つことすら出来ない。

耳から聞こえる音でわかる。

あいつは蜘蛛を倒したのだと。


「これ全部で30個ぐらいあるじゃねえか」


男は魔玉を回収し、ロイの下へ向かう。


「あんま調子に乗るなよ」


男は身動きが取れないロイに平手打ちし、髪を引っ張って泥まみれの地面に顔を沈ませる。

そしてロイの魔玉を回収する。


「ま…、グアァァァァ!!!!!」


呂律が回らない…

ただ、叫ばずにはいられない…

この状況下で分かるのは嘲笑った不快な笑い声と眼球の強烈な痛み。

男はロイの半開きの目をこじ開け、眼球をくり剥く。


「いい、良い声だ。

 それがお前の役割だ。

 もっと恐怖を、絶望を見せろ」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る