帰り道にて

 ある日のこと帰り道。


「先輩の好きな食べ物ってなんですか?」

「魚以外」

「わあ即答」

「いきなりなに?」


 唐突にそんなことを言い出した夏美なつみあやは困惑した様子だった。


「いやあ、よく考えたら私って先輩の好きな食べ物とか知らないなあって」

「……別に知ったところでどうもしないでしょ」

「うぅ……、相変わらず冷たい」


 いつも通り素っ気ない対応の彩、夏美は肩を落としかけたがめげず続ける。


「でも先輩とご飯行く時とかに必要になるじゃないですか!」

「あー、そういうことか」


 納得した彩に夏美は思い出したかのように言う。


「ていうか魚が嫌いだったら言ってくださいよ! この前回転寿司に誘っちゃったじゃないですか!」

「嫌なら断ってるよ、あたし回転寿司の納豆巻き好きだし」


 だから気にするなと、そういう気持ちを込めて言ったのだが、残念ながら夏美には伝わらなかった。

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