第18話 またこのパターンですか⁈
明王学園に着くと、既に人だかり出来ていた。どうやら、クラス分けが張り出されているみたいだ。
「俺と英介は同じ9組だけど、テルだけ6組で分かれてるな」
「一般入試組と推薦組で、分けてるんじゃないか?」
「たしか、内部進学5クラス、一般入試2クラス、推薦3クラスって聞いたぜ」
明王は、学業以外の教育にも力を割いており、推薦の方が遥かに入りやすかったりする。おかげで、高校の一般入試合格者は、100名にも満たない為、かなり狭き門なのだ。いや、マジでしんどかった。
「なるほどね。それじゃあ、入学式終わったら、また集合な。後で、連絡するわ」
「オーケー」
「おう、後でなー」
そうして、俺たちは別れ、各自のクラスへと向かって行く。
「?」
気のせいだろうか。誰かに見られているような気がする。後ろを振り返っても、怪しい人物はいない。皆んな、俺と同じ新入生ばかりだ。首を捻りつつも、再び指定の教室へと歩き出す。
教室に入ると、30名ほどの生徒が席についていた。1クラス40名前後なので、半数以上が集まっていることになる。
同じ中学で、明王に進学したのは俺1人だったので、見知った顔はいない。UTの元チームメイト達も、クラブで斡旋した高校に進学したので、ここにいる筈もない。
暫く時間が経つと、やたら美人な女性の先生が入ってきた。どうやら、担任の先生らしい。
「1年6組の担任となりました、鹿野真由美と言います。自己紹介は、後で時間を取るとして、体育館に移動したいのですが、まだ1人来ていないようですね…」
そう、先生の言う通り、窓側の1番前の席が空いていた。今は50音順、つまり出席番号順で座っているので、来ていない人物は出席番号1となる。入学式で出席番号1番が遅刻とは、いい度胸しているなぁ、そいつ。
すると、教室前方の扉が勢いよく開かれる。
「すいません、遅れました!」
「式が始まるまでは、まだ時間がありますから、慌てなくて良いですよー。荷物を置いたら、廊下に整列しますが、大丈夫ですか?」
「はい、大丈夫です!ご迷惑をお掛けしました」
そう言って、そいつは席につき、荷物を整理し始める。
なんだろう…
何故かは分からないが、こいつを見ていると、無性にイライラしてくる。ちゃんと謝っていたし、やたら前髪が長くて、鬱陶しそうな所以外は悪い奴じゃなさそうなんだけどな。なんでだ?
教室を出て、廊下に整列した俺たちは、鹿野先生の指示に従って、体育館へ移動する。
体育館には、何クラスか先に着いており、少し離れたところに翔太と英介の9組がいた。手だけ振って、挨拶すると、向こうも俺に気付いて、手を振りかえしてくれた。
少しすると、全クラスが体育館に集まり、定刻通りに入学式が始まった。校長先生のありがたーい話から始まり、来賓の方々の挨拶、在校生からの祝辞を受けた。
俺は、眠気と闘いながら、なんとか意識を保っていると、新入生代表の挨拶で完全に目を覚ました。
「新入生代表、白崎美鈴」
「はい」
名前の通り、綺麗な鈴の音なような声が響き渡る。ん?白崎美鈴?いやいや、まさかそんな訳…でも、二度あることは三度あると言うし。
名前を呼ばれた彼女は、マイクの前に立ち、スピーチを始める。
「春の息吹が感じられる今日、私たちは明王学園に入学いたします。本日は私たちのために、このような盛大な式を挙行していただき、誠にありがとうございます。新入生425名を代表してお礼申し上げます。さて…………………」
そうやって、堂々と話す彼女の姿を見て、俺は確信を持つ。「平僕」のヒロインの1人、白崎美鈴だ。
もういいよ、このパターンは!お腹いっぱいだわ!ていうか、ここは君つばの世界じゃなかったのかよ⁈
あとあの娘、すっげー、こっち見てくるんですけど⁈
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます