第13話 毒と死
……………
靖穂は蛇のステータスを参照する。
蛇 HP30/30
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『毒牙』を常時使用する。
――予知点が高いことと『毒牙』を使う事に注意が必要。……六匹……見た目からしても素早い動きをするであろう小回りの利く蛇がそれだけいるとなると、こちらもどう動けば……とにかく、まずは蛇の数を減らす事に注力していくべき……!
思考の後、靖穂は指示を飛ばす。
「國山先生、蛇の動きに注意を向けてください。前衛三人も十分注意しながら蛇をまずは倒して。三本先輩も距離を取って蛇に電気を撃ってください」
『了解!』
全員がそう言い、戦いが始まる。
三本が的確に蛇へ電撃を放ち、一匹を遠距離から消していく。二匹目も電撃により消し飛ぶ。
「!? おいおい、どうなってる!」
三本は蛇が進路を変え壁の隙間へと入っていくのを目撃する。彼の感知能力も壁の中にまでは届かない。
通路の向こうからはゴートマンたちが走り、こちらへ火の玉を飛ばす準備にかかっている。
――どうするべき……ゴートマンの攻撃は今もある程度の脅威ではある。先にいる相手を討つべき? 蛇の毒が気になるけれど……。
一瞬の逡巡の後、靖穂は指示を入れる。
「前衛はゴートマンを倒して。三本先輩は感知に集中。先生も攻撃予知と防護魔術を準備していてください!」
その号令を受け、金田、重吾、稲葉さんは一直線にゴートマンへと走る。
稲葉さんが横一列に並ぶ二体のゴートマンに走りざまの回し蹴りをそれぞれ浴びせる。ゴートマンたちは詠唱を邪魔され魔術は不発。ゴートマンは腕で蹴りを受けるが少し後ろに退いた。45、47のダメージ。
続いて重吾が走る勢いのままゴートマンの一体に飛び膝蹴りを入れ、50のダメージ。そのまま角を掴み二発目の膝蹴りを入れる。39のダメージによりそのゴートマンは消失した。
最後の金田は残ったゴートマンの腰にタックルを仕掛け80のダメージを与え、ゴートマンを消し飛ばした。
だが、その時、國山先生の叫びが響く。
「金田君、そのまま直進!」
金田はタックルの勢いのまま、言われた通り直進を続ける。重吾は隣で金田が通った一瞬後天井から蛇が落ちてくるのを見た。重吾はその蛇が落ちてきた天井を見上げる。
そこには六匹どころではない十数匹の蛇が天井から這い出し、こちらに落ちてこようとしているのを見つけた。
「いけない! みんな逃げて!」
國山先生はそう叫び、次なる事態に備え、防護魔術の為に手を祈る形にし、言葉を口ずさむ。
「トホカミエミタメ・ハライタマエ・キヨメタマエ」
重吾は走りだす。稲葉さんは重吾よりもやや遅れがあったものの、瞬発力の高さから重吾よりも早く、蛇の降る地帯を抜ける。
國山先生は魔術の紐を重吾に真っ直ぐ結び付けた。その瞬間。重吾の肩には天井から降り落ちて来た蛇が噛みついていた。だが、魔術の防護により蛇の牙は重吾に触れていない。重吾は2のダメージを受けたが、状態異常になることはなかった。
重吾は蛇の頭を掴み握りつぶしながら、一目散に先生たち後衛の下へ走る。蛇は簡単に潰れ30のダメージを受けて消え去った。その重吾の後ろでは蛇が天井から落ちてくる音がする。
三本が重吾の後ろの蛇たちに電撃を放ち叫ぶ。
「クソッ! あんな数は捌き切れん!」
靖穂が重吾の状態を見て、國山先生に指示する。
「先生、稲葉ちゃんや金田先輩にも防護を! あれなら戦える!」
國山先生は頷き、稲葉さんへ向け魔術を準備する。
靖穂はその間、重吾に叫ぶ。
「兄貴! 防護のあるうちに蛇をなるべく潰して!」
重吾はそれを聞いて、踵を返し、蛇と対峙する。蛇は無数の大群が、壁の隙間からも現れ、20匹ほどに膨れ上がっている。だが、重吾は臆することなく、蛇を踏みつぶし、蹴散らして行く。三匹……五匹……十匹……。
だが、彼は蛇の数を順調に減らしている途中、目の端に映ったものに気を取られる。
それは彼の前方で倒れる、金田の姿だった。
彼は既に『死亡状態』であった。
「なっ……修君!? 死んでる!」
その隙に蛇たちは彼の周囲に30匹ほど集まり、いっせいに飛び掛かって、重吾の防護を削り始めた!
彼はすぐに、飛び掛かる蛇を振りほどき、下段回し蹴りなどで消し飛ばしてゆく。だが、最後の一匹、背中から噛みつく蛇に防護を破られ首筋を噛まれた。1ダメージと共に『毒状態』となった重吾は、背にとりついた蛇を掴み、握りつぶして消す。
彼が振り返ると靖穂と國山先生、三本は既に斃れ、稲葉さんは最後の蛇を防護なしで蹴り飛ばし消したが、すでに『毒状態』となっているようだった。
重吾たちは蛇をすべて倒した。周囲は静寂に包まれている。
「う……ぐ……」
だが、重吾はすぐに膝をつき、倒れ、意識を失う。
失われて行く意識の中、遠くで、稲葉さんがどさりと倒れる音を、彼は聞いた。
重吾たち一行は蛇の大群に勝利し、そして、全滅したのだ。
(続く)
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