ルームシェアの危機
第29話 最強の敵? 襲来
元首たちの会議参加要請を無視して、俺とアスキーはダンジョンへと直行する。
ヒト同士での戦争の危機はひとまず去った。もうあいつらに従う意味もない。
「敵はどんな奴かわかるか、アスキー」
「そいつ、ウエス国とサウ王国にダンジョンを明け渡せって要求しているのニャ。魔王の直属の四天王の一人、防御のファオって名乗っているそうだミャ」
防御、と言われて先ほどのレビアのことを思い出し、防御力の高い敵を相手にする難しさも体の疲労とともに思い出した。
くっ、こんな状態でそんな強い相手と戦えるのか?
彼女もすぐにこられればいいんだが……。
本当は彼女とダンジョン内で合流してから敵との戦闘を開始したいし、休息も欲しい。
しかし、それでも急ぐ理由が俺たちには会った。
マイホームの無事。そしてそれ以上にそこにいるクミが心配なのだ。
彼女はモンスター。どちらかといえば魔王やその部下に近い存在ではある。
ヒトよりも無為に殺されることはないと信じたいか、保証はどこにもない。
ダンジョン上層を駆け抜け、中層へ。
そこに潜ってすぐわかる、瘴気に思わず足を止める。
聞いてた通り、魔のものが放つそれがダンジョン内に立ち込めている。
同時に、嗅いだことのない程強く甘い香りが漂ってくる。
「これは、クミの……!」
再び走り出そうとした俺だが、隣のアスキーが少しよろめいているのに気付いて肩を貸そうと体を近づける。
「大丈夫か?」
「ちょっと厳しいかもしれないミャ……置いてって欲しいミャ」
弱弱し気に言うアスキー。
抵抗力の低い彼女にはつらいようだ。けれど、ここに置いていくのも危ない。どこに敵がいるかわからないのだから。
俺は彼女を背中のカバンの上に乗せ、少しだけペースを落として走りだす。
段々濃くなる瘴気に彼女の体が少しでも順応していくよう願いながら――
下層に差し掛かると、ピンク色の霧で近くが見えないほどだった。
自分の足音の響きを頼りに空間を把握し、歩みを進める。
ふと、音が不自然に吸収される場所が存在する道に出た。
目を凝らして見ると、小さく、小さくうずくまるそれは、俺のよく知った声を発した。
「ル、ルード様……」
「クミ!?」
それはいつもの巨体から信じられないほど小さくなってしまったクミだった。
「どうしてそんな姿に」
「幻惑魔法で時間は稼いだのですが、何分わたくし動けませんので……結局場所がバレ、切り刻まれているところをギリギリのところでレビア様に助けられました。レビア様の召喚魔法で出していただいた兎でここまで逃がしてもらいました。急いでください、わたくしの霧ももうすぐ消えてしまいます。奴にはレビア様の攻撃すら通っていないようでした」
それを聞いて俺の心臓は早鐘をうつ。
俺にすらダメージを与えうる彼女の攻撃が通っていない?
時間がない、急がなくては。
「クミ、もう少しの間だけ俺たちのためにこの霧を維持してくれるか?」
俺は、無理を承知でクミにそう頼みつつ、意識のないアスキーを連れて、戦場へと急いだ。
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