第27話 最強の俺、と最強の彼女の会話

「それでは総員が十分な距離を取ったのち、サウ王国側は鐘、ウエス国側は伝令の太鼓を鳴らすこととする。双方からの合図が完了次第開始したまえ」


そう言って、全員が脱兎のごとく逃げていく。

人の死を最小限にするための一騎打ち、最強クラスの俺と彼女が戦ったら、どれだけの被害が出るかわからない。

退避してくれるのはありがたい。


俺は、彼らがそれなりに離れるのを待って、先ほどから無言を貫き通しているレビアに話しかけた。


「どうしてこうなった? お前は知ってたのか?」


俺の言葉で固かった表情を崩し、レビアはため息をつく。


「ええ、知ってたわ。これは私への罰なのよ。私は最高神官に呼び出されてあの魔動装置の護衛についた。そして失敗したそれだけの話」


レビアは、俺たちの国の民たちのことを考えて自分の身も顧みずに任務に失敗するようアスキーと内通して双方の被害を最小限とした。

そして彼女はこうなった以上、もう腹を決めているに違いない。


「私は選んでこの道を取った。けれど、あなたは半ば騙されてここまで連れてこられたでしょ? この戦争が私一人の犠牲で終わるなら安いものよ」


そう言って両手を上に軽くあげて、無抵抗の体制をとる。

静かに目を瞑る彼女。


俺はそんな彼女にゆっくりと近づいていく。

そして、彼女の心臓のあたりをポンと手で小突く。

彼女の体がびくりと震えた。


「お互いの適性考えろ? お前は癒し手、俺はただの強戦士。どっちが人類のために残るべきか、どっちが残ったほうがより人が助けられるか。考えたら簡単だろ」


俺の言わんとすることがわかったようでレビアは慌てて首を振る。


「ちょっと駄目よ、それは受け入れられないわ。そもそもがフェアじゃないのよ。私はズルをしたんなら報いは受けなきゃ」


予想された通りの答えが返ってくる。

だから俺は、にやりと笑って言う。

最強ゆえの悩みってやつで今ここを乗り切ろうじゃないか。


「レビアさぁ。戦ってるときに手ごたえ、って感じたことある?」


「は?」


俺の唐突な言葉にきょとんとする彼女。


「だからさ、戦って苦戦したり相手に対して強かったなぁなんて感想いただいたことある?」


「もちろんないけど……」


「俺もないんだよね。罪だって言うなら、フェアじゃないって言うなら、その分、俺と戦って楽しませてくれよ。全力出して、俺に楽しい戦いの時間を過ごさせるのが償いっていのはどうだ?」


出来るだけ明るく言う。


……命のやり取りが楽しいはずなんてない。

でも、こういえば少なくとも、どちらかがどちらかの命を一方的に刈り取るなんて、悲しい戦いにはならない。


「じゃあ、本気の戦いと行こうか!」


間合いを取る。遠くで太鼓と鐘が鳴っていた。

俺は剣を構えて気を高め、そこから一瞬で距離を詰めてレビアに肉薄する。


せめてこの時間を楽しもう。

手を抜かず、けれど、最後には俺が道を譲ろう。

そんな思いを、胸に秘めながら。

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