ルームシェア in ダンジョン

第21話 最強の料理人、の最初の料理

「まあ、今日はありあわせせと持ってきた食材でってことでこれで勘弁してくださいミャ」

そう言いながら彼女が出してきたのは、ここがダンジョン内だということを忘れさせる料理の数々だった。

「ウサギ肉のパエリアに、乾燥豆と野菜のビーンズサラダ、ボアの香草焼き、そして干し肉の甘みたっぷりキノコスープなのミャ」

アスキーが説明してくれる。

材料だけで見れば、俺たちが今日の昼まで使ってたものとほとんど変わらない。

なのに、なんだこの食欲を搔き立てる香りは！

「ここ、ダンジョン、よね……？」

レビアも驚いて口をパクパクさせながら、スンスンと料理の香りを鼻で楽しんでいる。

ありあわせ、で、これだと。

そうなると明日から食糧調達をしっかりとやっていけば、もっと美味しいものが食べれると？

ごくり。

生唾を飲み込む。

これ以上美味しいものなんてなんだか想像もつかないが、なにはともあれ、今は目の前の料理を全力で楽しみたい。

「「いただきます」」

「召し上がれなのニャア」

レビアと一緒に手を合わせ、ドキドキしながら一口目を口の中に運ぶ。

その瞬間、突き抜ける幸福感。ああ、俺はこのために今日という日まで生きてきたんだな。お世辞ではなく本気で思わせてくれる美味だった。

マイハウスで、美少女と、というスパイスも合わさっているのかもしれないが、それを差し引いても最高に美味しいという評価は覆らない。

「パエリアのウサギ肉、焼いてあったものを使ったから若干堅かったかもしれないのミャ。もう少しうまくリメイク出来たらよかったんだけどニャあ」

その言葉を聞いて俺はさらに驚く。

あのレビアが焼いたかっさかさで肉の臭み満載で味付けナシの肉が、こんなにおいしいパエリアに……？

「あのゴミが、こんな美味な一品に？」

レビアも驚いているようだが、自分の料理にゴミはなかなか辛辣すぎないか。

談笑しながら、美味しい飯をともに食べる。終わってほしくないと思わず思ってしまう、そんな時間だった。

食事はあっという間に俺たちの腹の中に吸い込まれた。

「そうだあなたたちが来る前に、クミちゃんが頑張ってくれて私の部屋の家具がそろったわ。今日からあなたもここに寝泊まりしていいわよ」

食事の終わり時レビアがそう告げる。

おお、これで俺も我が家で寝れるのか。昨日はドキドキして寝不足だったから助かる。

その言葉を聞いたアスキーはさっと立ち上がった。

「それじゃ、ボクはそろそろ帰るかニャ～。来たばっかりだし、床で寝る気分じゃないしニャ」

「アスキーさんのベッドならもう編みあがりますよ」

もぐもぐとボア3体を頬張りながら、それでも家具製作を続けていたクミが声を上げた。

振り向くと、レビアのとはまた違うか女性向けのすてきな装飾が施されたベッドが完成しそうなところだった。

ナイス、クミ。

これで、みんなで一緒に夜を過ごせるな。

小さいころ友達とキャンプにいった夜なんかを思い出す。

「それじゃあ、今日は三人……いや四人か。一人植物だけど。四人でのルームシェア初日として盛大に祝うか！」

俺は街に行った際にこっそり買っていたワインを取り出してにやりと笑う。

みんなは俺のそれにのってくれて、四人それぞれ木のコップにワインをついで高く掲げる。

「俺たちのルームシェアに！」

「「「ルームシェアに！」」」

その夜、たっぷり飲んで解散した後、テンションの上がった俺が女子二人の部屋に突撃しようとし、レビアのかけた部屋の封印魔法をもろに食らって死にかけたことについては、また別のお話だ……。