第20話 最強の彼女、と最強の料理人
「アスキーちゃんって言うのね。レビアよ、どうぞよろしく」
先ほどの俺の心配をよそに、レビアは超友好的だった。
手をぶんぶんと嬉しそうに上下させながら挨拶している。偏見なんてなんのその、フレンドリーさMAXだ。
彼女の勢いに押されつつも、アスキーは嬉しそうに笑っている。
どう見ても高貴な身分の洋服を身にまとった相手に、平等な態度で察されていることはアスキーにとっても嬉しいようだ。
サウ王国、ウエス国ともに亜人である猫人族には偏見も強く、知能が足りないと奴隷として売られているものさえいる。
実はアスキーも奴隷出身。ただし彼女はその類稀なる隠密スキルと地形把握能力、そして料理の腕をかわれて良き冒険者との出会いに恵まれて、その身分を脱して今がある。だからこそ彼女はマッピングの仕事に人一倍誇りを持っている。
そしてレビアの側。サウ王国の国民は選民意識が高いと聞いていたため心配していたのだが杞憂だったようだ。そもそも戦争反対派で、敵国の兵の命すら平等と言い放った彼女に対してはいらぬ心配だったかもしれないが。
俺はほっと胸を撫でおろしつつ、歓迎の振りが大きいあまりに目を回しているアスキーを解放しにかかる。
「レビア、上下に振りすぎだ。アスキーの腕がもげる。こいつは隠密性能が馬鹿高くてかつ一撃の殺傷能力は高かったりするが、俺らと違って防御は紙だ。下手すりゃすぐ死ぬ。気をつけろ」
レビアの顔面からさっと血の気が引く。
「あ、ご、ごめんなさい。ヒール」
「なんでも魔法でなんとかしようとするのやめろな……」
俺は昨日の浄化された料理を思い出しながら、レビアの肩をポンポンと叩く。
アスキーはというと、目を回しながらもそのやり取りにくすりと笑っていた。
あれ、何故笑う? そしてその笑い方結構可愛いですね?
「ルード君がボク以外の相手にそう言う風に話してるの初めて見たミャ。いい出会いをしたんだニャー」
そう言って笑ったアスキーの顔が、なんかちょっと寂しそうな気がするのは、俺の気のせい、だよな?
って、ちょっと待て、俺。
落ち着いて考えたら、今ここ、レビア、アスキー、クミと女子が三人いてなかなかのハーレムじゃないか?
男していつかと夢見た俺のハーレムは、このダンジョンの地下にこそ形成されてしまうんじゃないか!
そんな妄想が頭の中を駆け巡る。
いいぞ、これはリア充に向けて一歩、いや二十歩くらいの前進なのではないか!
「でね、ここが私の部屋の予定地で、こっちがキッチン。石系の調理器具で必要なものがあれば私に、木製のものはクミちゃんに言えば作るわ」
「お任せください!」
「いいわね、このキッチン。しかも石と木製であればどんな調理器具でも揃えてもらえる? 最高のしょくb……じゃなくておうちね」
そんな興奮する俺をよそに、女子勢だけで楽しそうに会話が続いていくのだった。
そしてしばらく経って落ち着いた俺は、その会話にうまく入れなかった。
くそっ、こんなはずじゃ……。
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