第18話 最強の俺、家事分担をする

「とっても美味しかったわ、ご馳走様。作ってくれてありがとう」


残っていたスープをおかわりして完食し、嬉しそうに俺に感謝の気持ちを伝えてくるレビアに、俺の頬も緩む。

作った食事を誰かに喜んでもらうのは、料理が特段好きじゃない人間でも嬉しいものだ。


「洗い物は任せて! 水魔法は得意だからね」


そう言って腕まくりをするレビア。

俺の皿も持っていこうとするが、俺は自分の皿をもってさっと立ち上がる。


「あら、自分で下げてくれるのはありがたいわ。ルームメイトとしてそういう気遣い大事だと思う」


自分で使ったものを最後まで責任を持つ主義だし、ちょっと話もあるのだ。

……そう、これからの食事のことだ。

毎日俺が作るようなザ・男飯みたいな料理というわけにもいかないだろう。レビアが料理できない以上、それを相談しなくては。

キッチンで俺の食器を受け取ったレビアは、手から水魔法を噴射して皿を綺麗に洗っていく。

そのてきぱきと華麗な所作にしばらく目を奪われていた俺だったが、ぶんぶんと頭を振る。

食事というのは生活において大きな問題だ。それをレビアにもわかってもらわなくては。


「なあレビア。俺たちのこの生活に足りないものって何だと思う?」


「唐突ね。それに足りないも何もルームシェア本格的にはまだ開始してすらいないけどね?」


レビアの言ってることはもっともだが、論点はそこじゃない。


「これから俺たち二人で暮らしていくわけじゃん? そうなると、いろんなものの当番とか決め手かなきゃいけないと思うんだよ」


「ごみ捨てとか?」


「うん、いや、ダンジョンでごみ捨てって意外と気軽じゃないと思うけど、まあそんな感じだね」


レビアは考えているのか洗い物の手を止める。

手から水は出っぱなしだが。

ダンジョン内では普通水は貴重品なのでちょっともったいないと思ってしまうが、まあ使ってるの魔力だし、思考を妨げないように指摘しないでおく。


「そうね。私見ての通り洗い物は得意よ。他には水魔法を使った石の家具作りとかも出来ると思う。火の回りにあるものは石で作り直したほうが安全だと思うわ」


そう言いながら笑い、洗い物を再開しようとするレビア。

しかしあらいはじめようとすると、手から水が止まる。


「あれ、なんで水止まって……あ、さっき出しっぱなしだったのね」


なんか、レビアの不思議な魔法の使用感が伝わってきたが、まあそれはそれとして、やっぱり俺の真意は伝わってない。


「ああ、俺も護衛とか狩りとか、まああとは、奈落へのごみ捨てとかそういう危ないものは引き受けるよ。でもさ、もっと生活に大事で毎日必要になってくるものがあると思うんだよ」


「ああトイレ? 大丈夫よ、高位神官はトイレしないもの。いや、正確には体から出るときに浄化されるから害がないだけなんだけど。だから、奈落に捨てるのはあなたの排泄物だけで問題ないわ」


いやうん、それも大事な問題だけれども!

うん、盲点だったけれども!!


トイレの話の後で言いだしづらいが、俺は腹をくくって話す。


「飯を作れる人をここに呼んではどうだろうか!」


レビアは俺のその言葉にきょとんとしていたが、次第に理解が進んでいったようでうんうんとうなずく。


「確かに、ルームシェアにおいて食事問題は大事よね、そこを考えてなかったわ」


そしてにやりと笑って、俺の目を見つめてくる。

ちょっとその表情に心臓をがっしりとつかまれたような気がしたのは内緒だ。


「そう言うってことは、誰か当てがあるのね?」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る