第17話 最強の俺、料理をする

「おはよー」


昼ちょっと過ぎ。

あくびを噛み殺しながら、レビアとクミのいる拠点に戻り挨拶をした。

あれだけ昨日たくさん壁を壊した影響か、俺は何も壊すことなく仮眠から目覚めて朝のランニングをしてここに到着していた。

ついてみると二人は朝から、きゃっきゃきゃっきゃと新しい家具について話していて大変元気いっぱいであった。

俺の耳はその二人の女子女子した雰囲気にやられてしまう。


「あ、おはよー。もしかして昨日の夜迷った? なんだか疲れた顔してるけど」


心配してくれるレビアに、お前の家で興奮しちゃってさ、なんて言えなくて俺はああ、とだけ答える。

戦闘とは別種の疲労に空腹も相まって、俺の体はギブアップ寸前といったところだ。

早く飯を作らねば。


「キッチンにいってるからな」


俺はレビアにそう伝え移動する。

後ろではまたガールズトークが開始していた。

昨日の夜は黒い液体だったし、今朝は備蓄用の干し肉をそのまま口にしただけだし、普通の食事が恋しい。

俺は日持ちのするパンと干し肉を軽く炙ったものでサンドイッチを、帰って来る道すがらで取ってきたダンジョン茸と持ち歩いている乾燥野菜でスープを作っていく。

塩とちょっとした香辛料のみの簡単な味付けだが、まあ昨日のレビアの料理よりはマシだろう。

少なくともちゃんと食べ物っぽくは見える。


そして俺はそれを作っている最中、キッチンの端に隠すように寄せてある食べかけの子ウサギの丸焼きを発見してしまう。

昨日の夜覗いたときにはなかった代物だから、きっとレビアの朝ごはんの残りだろう。どうやら昨日のは特に失敗だったというのは本当だったようだ。

俺は少し匂いを嗅いで、かけていない方を一かじりしてみる。

火は通っているが、塩さえかかっていない。

高級神官様は素材そのままのお味が好きか、なんてことを考えたが、昨日の黒魔術ばりの料理にはよくわからない調味料がたくさん入っていたから、そういうわけではないのだろう。

単に、工程を焼く、のみに絞ることで、美味しくはないが料理としての失敗を限りなくゼロにしたんだと推測してみる。


懸命な判断だと思う。

誰にでも得手不得手はあるし、苦手の被害を最小限に抑えるのは大事なことだ。

そう、寝ているときに人の家の壁を破壊しないために俺もここに住んでいるわけだし。


「レビア、昼飯出来たんだけど、食べるか?」


俺が声をかけると、嬉しそうな声が返ってきた。


「え、いいの! ありがとう」


俺は、テーブルの上にサンドイッチとスープを並べる。

キッチンに木の食器が増えていたのは、これからのルームシェアを見越してレビアがクミに頼んだのだろう。ありがたく使わせてもらった。


俺はクミの前にも朝のジョギングの道すがら倒してきたボア系モンスターの食事をおいてから自分の食卓に着く。

目の前には美少女が食事を前に楽しそうに俺を待っている。

人に作ってもらうのも嬉しいが、これはこれで嫌いじゃないかもしれない。


「じゃあ食べようか」


「うん!」


「「いただきます」」


俺にとってはいつもとあまり変わらない食事内容なはずだった。

けれど、その日の昼食はなんだかとてもおいしく感じだ。

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