同志の出現

第7話 最強の俺、まさかの遭遇

「うおおおりゃああああ!」


目の前の土壁を押しのけ、道を作っていく……

力いっぱい攻撃するごとに広がっていく空間がなんとも言えない幸福を生んでいく。

ここは、ダンジョン下層。

冒険者もほぼ立ち入らないような危険区域。

でも、俺にとってみればここのモンスターだってペットのワンちゃんと遊ぶようなもので、い続けるのはたいして苦じゃない。

むしろ、俺にとってこのダンジョン地下の空間は、植物系モンスターで家具製造家のクミの尽力もあってなんとも快適なものとなっていた。

ただ、俺の壁や物を壊してはいけないという街での抑圧が今大爆発していた。

その結果がこの行動。

ダンジョンを掘り進め、居住空間を広げていくこの作業へと昇華されているのだった。

思いのほか、ストレスは溜まっていたらしい。

自分では気づかないものだよな。


俺は壁をえっさほいさと押しのけながら、拠点で俺のために家具を編んでいる(?)であろうクミに想いを馳せる。と言っても、別にやましい気持ちはない。相手が女子と発覚したからと言って、雌花に発情する特殊性癖を俺は持ってはいない。

けれど、自分の帰りを待ってくれている人がいるというのは心地が良いものだ。


回りとバランスが取れないあまりパーティーメンバーを持てなかった俺としては、なんだか初めての感覚で、クミのご飯用の魔物を倒すのにもなんだかうきうきしてしまうのだ。


「女の子かぁ。最後に触れたのはいつだっけなぁ」


鞘を付けたままの大剣を掘削機のように振り回しながら、俺の意識は思考世界へと潜る。

そうだな、女という生き物に最後に触れたのは、この間あの少年パーティーの少女たちを助けたときだけど、さすがにあれはノーカンだろ。

最後にって、うん。悲しいかな、気付いてしまう。

まともに交際して女の人に触れたこと、俺ないや。

最後も何もなかったですね、童貞つらい。

そこまで考えて、なんだか涙が出てくる。

俺、こんな地下で穴なんて掘ってる場合か?

もっと、DNAの意志に従って繁殖すべく、相手を見つけなければならないんじゃないのか?

地上で、恋をして、愛を育んで。

温かい家庭と子供を作らなきゃいけないんじゃないのか?


「うおおおお、こんなダンジョン地下深くに出会いなんてないし、なにやってんだ俺!!」


そうして壁を力いっぱい押しのけると、ふっと目の前の空間が広くなる。

現れたのは白い柔肌。

そのきめ細やかな美しさに俺の目は吸い寄せられてしまう。


「へ?」


「え?」


柔肌が返事をする。

そこで初めて目の前のそれが、相手が、人間であると理解する。

一点だけに集中していた目線を全体にぎゅーっと広げると、そこには裸でこちらを見ている女の人がいた。白くて美しい二つの三つ編み、それと同じような透き通る白い肌、首元に光る美しい宝石のネックレス、そしてふっくら、というよりはほっそりした女性らしい体つき……


待って、なんで洞窟で裸なの?

てか、女の子がどうして地下深くに?

モンスターとか危なくない?


様々な疑問が頭の中を駆け巡ったが、次の瞬間にそれはすべて吹っ飛んでいた。


「この変態、覗いてんじゃないわよ!!」


その言葉とともに、ものすごい圧力で放たれた水魔法に、文字通り俺ごと吹っ飛ばされたのだ。

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