第5話 最強の俺、家具をゲットする

「おい、言うとおりにできるよな。俺の言ってる家具、作れるよな」


「はい、作れはしますが、ちょっと痛いので、はい」


「死ぬのとどっちがいーたーいかな。ねえ?」


「わっかりました。はい、死ぬより痛くないです。作ります作ります」


こんばんは、俺です。

こんな始まり方でごめんなさい。

今俺は、ために家具を調達中です。


え、何を言ってるのかわからないって?

嫌だなぁ。

街を追い出された俺が住むところなんてダンジョンに決まってるじゃないですか、勿論。


という寸劇は置いといて。

俺は、下層の、それも例の植物系モンスターを脅して家具を製造させようとしているところだ。しかも、相当に知能が高くてしゃべれるレア個体を見つけたので、コミュニケーションをとりつつ、楽しく製造中というわけだ。


家具もベッドもないダンジョン内で暮らすなんて想像もつかなかったが、オアシスで暮らせるとなれば別だ。あそこには、それなりに快適なベッドと家具がある。

しかし、上層のオアシスは冒険者たちの共有物。壊したとなってはまた弁償問題になるし、資材の搬入も大工仕事が出来る人間を呼ぶのも難しい分いろんな相手に迷惑がかかる。ならば下層・中層のオアシスを、と言いたいところだが、ダンジョン深くになるごとに、家具は質素になっていく。

だから、ダンジョンなんかには住めないと思っていた。

だけど俺はさっき見てしまったのだ。

植物系モンスターを討伐すると、基本的に部屋ごと枯れて消滅する。

しかし、あらかじめ本体とのつながりを断ち切っておけば、それは家具として残るのだった!

これは夢が広がりまくるなぁ。自分だけの広々空間に家具! そしていくら壊しても誰にも怒られないし、無限に再生産可能。


「下層に俺の楽園を作る!!」


「盛り上がってるとこ大変申し訳ないのですが、わたくし共も口頭で聞いたものを作れるわけではなくてですね。取り込もうとしている人間の記憶をもとに、部屋を作っているのです、ハイ」


植物系モンスターが言いにくそうに話しかけてくる。

その話を聞いて中層以下にいるダンジョンの部屋がみな、おおよそ上層のオアシスと同じ見た目をしていることに納得がいく。

ダンジョン七不思議と言われるモンスターの謎がこんなところで解けるなんて誰が思っただろうか。


「ん? で、どうして欲しいわけ」


「つまりですね、あなた様の体にちょーっと接続させていただいてですね。家具のイメージの方読み取らせていただきたいと」


その言葉に俺は3秒ほど考える。

そして、俺は簡単に結論を出す。


「わかった、いいぜ!」


吸い込んでも多少の思考力低下しか引き起こさないと判明したために、息を止めることをやめたせいだ、うん。


「では」


ぐるりと植物の根に絡みつかれる。

意外と苦しくないのが、なんだかおもしろかった。


「くっ、バカな奴め。この根に絡みつかれたが最後。どんな人間でも我の養分になるしかできな……」


植物がなんだかうるさかったので、俺は威圧のオーラを放つ。

黙りこんでしゅんとなる植物。

俺は問いかける。


「なあ、必要な情報は読めたか?」


「はいっ。十分でございます。ちょーっと冗談を言っちゃって申し訳ありませんでした」


俺は植物がなるべく痛くないように気を付けながら根を自分の体から離す。

しゃべれる奴はレアだし。痛みをあまり与えすぎてもな。

こいつにはこれからたくさん働いてもらわないといけないし。

何より痛いだのなんだので、家具の質が落ちたら困る!

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