住処を探せ!

第1話 最強の俺、街を追い出される

「いい加減にしろ、またやったのかお前は!!」


宿屋の主人の怒気をはらんだ声で目が覚めた。

眠い目をこすりながらううんと伸びをすると、気持ちの良い日差しに心地よい風が入ってくる。

おかしいな、昨日はカーテンも窓もしっかりと閉めて寝たはずなのに……そこでハッとする。

周囲を見回す、ごっそり崩れている宿屋の壁。そしてあろうことか、今回は床まで抜けていた。

下から心配そうにこちらをのぞいているのは宿屋の娘と目が合って、そらされる。ツライ……。

視線を正面に戻す。

瓦礫を握りしめながら俺を見つめ、ぷるぷると震える宿屋の主人がいた。

ああ、これは俺、もしかしなくてもやっちゃってるな。ダメな奴だこれ。

顔から血の気が引いていくのがわかる。


「ご主人、ごめんなさ……」


「ルード、お前は出て行け、うちに二度と泊まろうとするんじゃない!!!」


主人が持っていた瓦礫を全力でなげつけてくる。

待ってそんなの当たったら常人だと死んじゃうんですけど!!

俺の謝罪の言葉も遮って次から次へと飛んでくる瓦礫に、俺は脱兎のごとく逃げ出すしかなかった。


宿屋のご主人、いつもいつも壁を壊してごめんなさい。

追い出されてしまったけれど、いつもの通り修理費用はちゃんと俺出すからね……。


馬鹿力+寝相の悪さが織りなす、宿屋破壊神の俺の目に涙が溜まる。

悪名高い俺を長いこと泊めてくれた宿屋の主人との思い出が走馬灯のように流れていった。

何度壊しても、修理費を負担しさえすれば優しく対応してくれた主人。

俺の修理費で壊したとこだけでなく全体的に段々豪華になっていく宿屋。

今回の改修は最高の出来だと娘と笑っていたご主人……いや、ちょっと待て冷静に考えたら修理費ぼったくられてたんじゃないか俺、なんてことも頭によぎったが、なんだかんだで俺が滞在できる街の宿屋はこれでなくなったという事実の前にはそんなことは些末なことだった。

金はある。でも、いつ死ぬかわからない冒険者家業の人間に家を貸してくれる町組合なんて、この世界にはない。


イコール、俺はこれから野宿していくしかないってことだ。


ちょっとでもいい寝袋、買おう……

そう思った俺が思い出したのは、ダンジョン下層にいるボア系モンスター。

炎魔法、水魔法に耐性があり、斬撃も効きにくい。つまり、摩耗しにくく、耐熱対感ばっちりのいい寝袋が出来るんじゃね??


そう思ったら、なんかやる気が溢れてきた気がする。

俺は、町はずれの森にあるこの国最大のダンジョンへと向かうのだった。

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