第16話 じゃあうちに泊まります?
【登場人物紹介】
ここまでのあらすじを踏まえた人物紹介です。
真鍋星矢(せいや)…社会人二年目。優柔不断。愛未と春花のどっちが好きなのか分からず悩んでいる。
多田愛未(まなみ)…社会人一年目。あざと系女子。一応彼氏と別れるまで待つように星矢に頼んだ事があるが真意は謎。
中野春花(はるか)…社会人一年目。星矢とはストーカー対策として恋人のフリをしていたが最近はストーカー被害に合わなくなり、その関係も解消された。
春日部博(ひろし)…星矢の良き相談相手。周りから好かれているが愛されキャラ的存在で恋愛関係は疎い。
堤健司(けんじ)…バーのマスター。オネェ。人生経験が豊富故に星矢にアドバイスをくれる。
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星矢は愛未を食事デートに誘った。健司さんのアドバイスを参考に愛未の事をよく知り、好きな気持ちが本当なのか、春花と比べてどっちが自分に合っているのかを決めようと思ったからだ。これで合わなかったり、愛未のあざとさ故に振られたりしたら春花にアタックすればいい。そのくらいの気持ちだった。
デートは新宿。パンケーキデートだった。愛未は今までの恋愛遍歴の話をし始めた。歴代彼氏は15人いるらしい。多いな。普通、こういうのってわざと少なめに言うもんだけど愛未は多分本当なんだろう。
「それに私、付き合った人数と経験人数が一致しないんですよ!まあお前は今まで食ったパンの枚数を覚えているのかって感じなんですけど〜」
そう笑顔で話す愛未は前に公園のベンチで話した時の愛未と全然別人に見えた。
………どっちが本心なんだ?やっぱり告白された人数とか経験人数をステータスだと思ってる節あるよな、この子。でも敢えて明るく話してるだけで本当は悩み抱えてる場合もあるんだよな。愛未の場合はそれがあり得るし………
そんな事を考えていたがやはりどこか疑ってしまう自分がいた。公園のベンチの時は本当に信用できたのに。
「ねえ!あの時、話した事覚えてるよね?」
「え、何話しましたっけ」
「星矢さんが彼氏なら良かったとか別れるまで待っててくれる?とか」
「そんなこと言いましたっけ」
………は!?どういうことですか!?………
星矢の頭の中はハテナでいっぱいだった。
………え、絶対言いましたよね!?しかもあの時、シラフだったから酔ってて覚えてないは通用しませんよ?愛未さん!………
「あ、でも言ったかもしれませんね。あの時、本当に彼氏と上手くいってなかったんで」
………え、じゃあ今は違うってこと?俺、その発言信じてずっと彼女作らず待ってたんですが?………
星矢はまた、この小悪魔に騙されているのか。それとも本心では本当に星矢の事が好きだけど照れ隠しでこのような事を言っているのか。答えが出せなかったが、健司さんに言われたように踏み込んでみることにした。
「ねぇ!俺の事どう思ってる?」
「一緒にいて楽しいし落ち着きます」
「それは弟的な意味で?異性として?」
「何でそんな事聞くんですか?」
………は?………
さらに訳の分からないことが愛未の口から告げられた。
「私、昨日、博さんと表参道行ってきたんですよ〜」
「え、博と?何で?」
「普通に仕事の相談です。タルト食べてきました」
そう言って愛未は博とのツーショットを見せる。
………うん、距離近いですね。仕事の相談だけじゃないですよね、これ。まあ博は恋愛関連に疎いし心配ないのか?いや、逆に博でも二人でこういうことできてるんだし、愛未にとって二人でパンケーキ食べに行くとかは日常的な事なんだろうな。だとしたら、これ、何?………
さらに愛未は追い打ちをかける。
「というか何処で何しても良くないですか?私、今、フリーなんだし」
………うん、その通りです。でも仮にもお盆前に俺、告白してるんですがそれはなかったことになってるんですかね?愛未さん………
「まあ、それもそうか。」
「そうですよ〜」
帰り道。エスカレーターに二人で乗っていると愛未がつまずいて転びそうになったため、星矢が支えた。愛未はそのまま星矢の手を握り、立ち上がった。
………あざといな。これも狙ってやってるのか?………
お盆休み前の愛未への信頼はもうどこにもなかった。そして一向に愛未は星矢から手を離さず、ほぼ恋人繋ぎの状態で駅まで歩いた。
星矢は今日のデートの事を一刻も早くマスターの健司さんに話したかったため、新宿に残ることにした。
「ごめん、俺、新宿で用済ませてから帰るから」
「じゃあここでお別れですね!」
「そうだね」
そう言って二人は手を離した。その瞬間、愛未が耳元で囁いた。
「博さんとはここまでしてないよ?」
それだけ言うと愛未は改札内に入って行った。
………あー!!もうー!!!………
訳が分からないまま、その日はバーに駆け込んだ。そして健司さんに今日のデートの事を話した。
「うーん。私はその子に会った事ないから何とも言えないわ。やっぱり告白してその子の本心を聞くしかないんじゃないかしら」
………そうだよなぁ………
星矢は玉砕覚悟で告白する決心をした。愛未の本心が分からず、早く白黒つけたかったという気持ちもある。だから仕事終わりに「話がある」と言って呼び出した。どしゃ降りの夜だった。
すぐに告白するつもりだったが星矢はまだ覚悟が足りなかったのか今はまだ早いと思い、まずは夜ご飯を食べることにした。
夜ご飯が食べ終わり、少し談笑した。
星矢はまだ告白の準備ができなかった。その時、頭に悪い考えがよぎった。
………ここで終電を逃せば!ワンチャン家に泊まれるかもしれない。………
悪い考えだ。星矢もちゃんと男なのだ。しかし、身体目当てとかでなく、あくまで告白の決心をつけるためだ。家に泊まることができれば断られる事はないだろう。そう思っていたからだ。ずるいことは星矢自身も分かっていた。
そして終電の時間が過ぎてしまった。愛未は歩いて帰れる距離だったが星矢は電車を使わないと帰れない距離だった。
「そろそろ帰ります?」
「そうだね。あ、やべ。終電逃しちゃった。話したい事もまだ話せてないのに」
猿芝居だ。狙ってたのだ。でもこれで家に泊まる事ができれば告白の決意が固まる。そう思っていた。
「ネットカフェ泊まるしかないか〜。節約してるのになぁ」
星矢はわざと困った感じを演出して愛未の方に目線をやった。愛未から家に誘ってくれるのを待っていた。ずるい男だ。
そしてその作戦は成功した。
「じゃあうちに泊まります?」
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ここまで読んでくださり、ありがとうございます!感想や主人公が誰と結ばれるのか等、予想を応援コメントとかに書いてくれるととても嬉しいです。
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