エピローグ 0-8
ラジェとホワイト。
最後まで立っていたのはホワイトだった。
しかし彼らが抱えた悲しみは、同じだった。
そしてホワイトは、動かないアイリスのそばで項垂れて慟哭する。
「……なにが『
彼は叫ぶ。
しかし彼女は答えない
「悔しかったら! なんとかいえよ! ——アイリス!」
†
『……ほら、お友達が呼びようやろ?』
ラザルスの問いに、アイリスは泣きそうな顔でむすくれて黙っていた。
『やけど、もう遅かろ。ホワイトにもラジェにも、もう会えん。カードでも遊べん……それに』
アイリスはぐずぐずと泣き出す。
『……わたしは、悪人やけん。世界からおらんくなった方がいい。死んだ方がいい。もういい』
『まーた上手くいかんからって、そげんこと言っていじけて。遅いか悪いとか、そんなん長生きしてみらんとわからんかろーが?』
『……もういい。じいじとおる。どこにもいかんでいい。もういい……』
アイリスは地べたにしゃがみ込んでしまった。
ラザルスはため息をついて頭を掻いた。
『とにかくもう時間ないけん! 最後の最後にアイリスの「本当の願い」を叶えるけんが! どげんしたいと!?』
ラザルスの問いに根負けして、アイリスは泣き顔だけれどしぶしぶ頷いた。ほれっ! ラザルスはアイリスの立ち上がった背中を押した。
アイリスは勢い余って、博物館の敷地を出て通りに出る。そして辺りを見回すと。
ラザルスの姿は、どこにもいなくなっていた。
†
——ホワイトの叫びの直後。緑属性の魔導力の奔流がお供えの花々を纏めて花吹雪に散らせた後。
参列者の誰もが驚愕していた。
顔がボロボロのホワイトも。
顔面が焼きたてのパンみたいに膨らんだラジェも。
誰もが、信じがたい光景を棺の中に見ていた。
「…………ん?」
アイリスは棺から起きた。
いつ寝たかわからないような、夢を見ていたような、そんな顔をしていた。一方、ホワイト以下参列者は声も出ない。
寝起きのアイリスは棺から出て、たまたま近くにいたホワイトに一声かけた。
「……ホワイト。今、何時かいな?」
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