第14話 新手の脅しはいかがですか?

 バッチリと……?


 いや、どの写真も伊香賀ちゃんの姿は暗くて見えなかったが、俺の姿だけはバッチリと写っていた、というのが正しい言い方だろう。


 俺が校門の前で幼女と話している写真、俺が幼女に土下座をしている写真、俺が幼女を介抱している写真、そして俺が幼女を家に持ち帰っている写真……。


 社会的に死ぬには十分な代物だった。


「これは今朝、私の机に置かれていたんだ。もちろん、心当たりはあるよな?」

「先生ッ!こ、これは誤解なんですッ!」

「いいんだよ、きとうまん……。もうこれ以上喋るな。人間誰だって欲望を抑えられないときがある……」

「だから違うんですって……!俺の話をきいてくださッ――」


 ここで俺の話を遮るように、教室にチャイムの音が鳴り響いた。


「まあいい。ただ私はきとうまんの担任教師であり、生活指導の先生でもある。いくらお前に好意を持っているからといって、この事態を見過ごすわけにはいかない」

「そ、それは……」


 サラッと言った夏夜先生の告白に俺は頬を赤らめる。


「だから、一週間やる。一週間以内に私の納得のいく説明ができれば、このことは不問としよう。もちろん、証拠も忘れずにな」

「で、できなかったら……」

「そりゃもちろん、学校に報告だ。保護者にも話がいくだろう」

「くッ――」


 当たり前だ。


 むしろ、猶予を与えてくれるだけ教師としてはすごい甘い対応だと思う。


 しかし、未来を想像するとどうしても顔がこわばってしまう。


 俺の様子を見て、夏夜先生はフッと笑って見せた。


「大丈夫だ。たとえきとうまんがロリコン性犯罪者だったとしても、私はお前の味方だ。いざとなったら私がもらってやるから。きとうまん、お前信じているよ……」

「夏夜先生……」


 そう言って夏夜先生は俺に軽く手を振り、教室を出ていった。


「俺は一体、これからどうすればいいんだ……」


 俺は遠い目をしたまま、教卓の前で立ち尽くすのだった。

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