住宅の内見
星之瞳
第1話
「ねぇ、亜美今度のお休みここ行かない」と、千恵美がスマホの画面を見せた。
「何々、住宅の内見会?こんなの家を買う人が行くところでしょう、私達みたいな独身OLには関係ないんじゃない?」
「おおありよ。今回は独身男女に、『将来結婚した時に家族で住みたい家』のアンケートを取るために企画だから」
「え!と言うことは独身の男性も来るってこと?」
「そうよ、内見してアンケートの後は、食事会もあるようだし、ちょっとした合コンだよね」
「でも、そこまでして企業側にメリットあるの?」
「今若い人が結婚しないから家が売れないんだって。だから出会いの機会を作ろうという事らしいわよ」
「食事付か・・・。それなら行く価値あるか」
「一緒に行こうよ、スマホで申し込むの」
「えっと、QRコードを読み取って、あ、出てきた。データーを入力っと」暫くして
「受付完了になったよ」
「よかった、これで一緒に行ける、その画面の番号がいるらしいの本人確認の為にね」
「解った。消さないように注意しておくわ、楽しみね」
「じゃ!当日、指定場所で会いましょう」そう言ってその日は別れた。
内見の日、朝からいい天気。指定された駅で待っていると主催者のバスがやってきた。係の人が「住宅内見会に出席の方スマホに送られてきた番号をご用意ください」と私たちに向かって叫んだ。集まった人たちは一人一人確認の上バスに乗った。
「全員揃いましたから今から展示場へ向かいます」バスは走り出した。
展示場に着くとこれからの事が説明された。
「まず、男女分かれてくじを引いてもらいます。同じ番号の人とペアになって内見を行ってもらいます係の者が各ペアに着きますので。1つ目は和風。2つ目は洋風。3つ目は座敷はあるが後はフローリングという3種類の家の内見を行ってもらいます。係がアンケート用紙を持っていますから御記入をお願いいたします、でわ、順番にくじを引いてください」
くじを引いた人たちは「1番誰?」とか言いながらペアを作った。私の相手はサラリーマン風の優しそうな人だった。
「それでは内見に入ります」
「おれ、
「私は、
内見が終わり、アンケートを提出すると全員が終わるまで待ち時間となる。用意されたテーブルで、コーヒーを飲んでいたら
「亜美ここにいたのね、あ、私もコーヒー持ってこよう」そういいながら千恵美がやってきた。戻ってきて、
「亜美どうだった。楽しかった?」
「うん、相手の人と話をしながら家を見てアンケートを書くのは楽しかったよ」
「いいな~!私の相手の人批判しかしないの。アンケートも『適当に君が書いておいてよ』って、丸投げ。正直幻滅したわ。あんな人と結婚はしたくないわね」
「そうか、これから食事会だっけ?」
「そう、内見が終わったら移動するはずよ」コーヒーを飲みながら話していると、
「全員の内見が終わりました。これから食事会に入ります。レストランに移動しますから、バスに乗ってください」
「さ、移動ね」私は千恵美とバスに向かった。またスマホの画面を見せてバスに乗った。
着いたのは郊外のレストランだった。「貸し切りにしてあります、好きな席にお座りください」と係のアナウンスがあった。
私達は窓際の席に着いた。席について暫くすると料理が運ばれてきた。
「いただきま~す!」二人でそう言うと食べ始めた。
「おいしい!!」二人で顔を見合わせてうなづく。本当に料理はおいしく私たちはおしゃべりしながら料理を楽しんだ。料理を食べ終わったころ、
「すみません、亜美さん?」と声がした。私が顔を上げると
「あ、達也さん」
「よかった会えて、ダチも一緒なんだけど座っていいかな?」
「ええ」私はこの食事会が合コンも兼ねているらしいことを思い出した。
「ほら、自分で言えよ」達也が促す。
「俺、
消え入るような声で、その男性は話した。
「え、私?私、
「あの、お友達からでいいです、連絡先交換してただけませんか」
「それくらいいいけど」
「ありがとうございます」二人は連絡先を交換しそれから二人で話し始めた。
「えっと、俺も亜美さんと付き合いたいので、連絡先を交換させてください」
「え!私と」
「もちろん。内見の時とても楽しかったんだ。これからもお付き合いしたいな」
「ありがとうございます」そう言って私は卓也さんと連絡先を交換した。
それから私は達也さんとお付き合いを始めた。数年付き合い結婚。そして内見会を企画したメーカーで家を建てた。
今はとっても幸せ、内見会を企画してくれたメーカーと誘ってくれた千恵美に心から感謝している。
住宅の内見 星之瞳 @tan1kuchan
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