第22話
「次は何をやりますか?」
あの後、UFOキャッチャーを何度か挑戦した兎倉先輩だが、結局自分で景品を取ることはできなかった。
どうやら本当にUFOキャッチャーが苦手だったらしい。
「UFOキャッチャーでは不甲斐ないところを見せてしまいましたからね。次はカッコいい姿を見せれるゲームがいいです」
「可愛かったですけどね。UFOキャッチャーができない兎倉先輩」
「恥ずかしいので言わないでください。次までには絶対に上手になりますから!」
兎倉先輩は頬を少し赤くして恥ずかしそうに言った。
兎倉先輩ならきっとその言葉通り上手になるだろう。
なぜなら兎倉先輩は頑張り屋だから。
兎倉先輩が誰よりも努力をしている姿を僕はいつも見ていた。
「UFOキャッチャーのことはいいので私のカッコいい姿を獅子王君に見せれるゲームを教えてください!」
「そう言われましても難しいですね。あ、あれとかどうですか? 兎倉先輩バスケ得意ですよね?」
僕たちの目の前にバスケットボールのゲームがあった。
ルールはいたって簡単でバスケットゴールにボールを入れて得点を競い合うゲームだ。
今日の最高得点が表示されているのでそれを超えればいい。
もし超えた場合はそこに自分の得点が表示される。
「得意ですね。これはどういうルールなんですか?」
「基本的にはスポーツのバスケットと一緒です。ゴールを決めたらスコアが三ずつ上がっていくので、制限時間内にあそこに表示されているスコアよりも高いスコアを取ればいいというルールです」
「なるほど。簡単ですね」
「もし、兎倉先輩が表示されているスコアより高いスコアを取ることができたら、あそこに兎倉先輩が取ったスコアが表示されます」
「そうなんですね」
「やってみますか?」
「はい」
兎倉先輩は台に百円を入れた。
現在表示されているスコアは九十六点。
つまり制限時間内(三分)に三十二回以上ゴールしなければならない。
「絶対にあのスコアを超えてみせます」
「頑張ってください」
ゲームがスタートしボールが兎倉先輩の前に転がって来た。
「獅子王君。コートを預かっていてもらってもいいですか?」
「はい」
僕は兎倉先輩から真っ白なコートを受け取った。
正直、動きにくそうな服装だったのでどうかと思ったがどうやら杞憂だったみたいだった。
兎倉先輩は次々とゴールを決めていきスコアを伸ばしていった。
☆☆☆
「どうでしたか? カッコよかったですか?」
「カッコよかったですよ。さすが兎倉先輩ですね」
「ありがとうございます」
結果から言うと兎倉先輩はバスケットボールのゲームで最高得点を余裕で更新してしまった。
「次は何をしますか?」
「そうですね。次の予定がありますし、最後にプリクラを取りませんか?」
「分かりました」
今日はもともとお昼までの約束だった。
お昼から兎倉先輩は用事があるらしく、お昼には解散する予定になっていた。
僕たちはプリクラコーナーに向かった。
「獅子王君はプリクラ撮ったことありますか?」
「プリクラは撮ったことないですね。兎倉先輩はあるんですか?」
「私は何度か、涼華ちゃんと一緒に撮ったことあります」
「そうなんですね」
何度か撮ったことがあるという言葉通り、兎倉先輩は慣れた手つきでプリクラの台にお金を入れ、撮影の設定をした。
撮影がスタートして十秒のカウントダウンが始まった。
「獅子王君! ハート作りましょう!」
「は、はい」
僕は兎倉先輩に言われるがままに次々といろんなポーズをした。
中には変なポーズもあって恥ずかしかったけど、そんなことどうでもいいと思うくらいに兎倉先輩とプリクラを撮っている時間が楽しかった。
「どうぞ。獅子王君の分です」
「ありがとうございます」
「楽しかったですね」
「そうですね。楽しかったです」
「すみません。本当はもっと一緒にいれたらよかったんですけど」
「気にしないでください」
「今度は一日空けますから。またデートしてくれませんか?」
「もちろんです。またしましょう。デート」
「はい!」
僕は兎倉先輩と指切りをして約束を交わした。
ゲームセンターから出ると、すぐ近くに兎倉先輩の迎えが来ていた。
「では、また学校で」
「はい。また学校で」
リムジンに乗った兎倉先輩を見送ると僕は自分の家に向かって歩き始めた。
兎倉先輩からもらったプリクラには楽しそうに笑っている二人の姿が写っていた。
僕はそのプリクラを財布の中にしまった。
☆☆☆
番外編 了
次回更新3/23(土)になります。
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