〈番外編〉天使様との初デート

第20話

 今日、兎倉先輩とデートをする約束をしていた僕は公園にやって来ていた。

 デートの約束をしたのは昨日。

 お昼ご飯を一緒に食べている時に決まった。

 

「そろそろ来る頃かな」


 待たせてはいけないと僕は集合時間の十分前には公園にやって来ていた。

 兎倉先輩が時間に遅れることはないので時間通りに来るはずだ。

 後三分で待ち合わせ時間の十時になろうとしていた。


「獅子王君。おはようございます」

「おはようございます。兎倉先輩」

「お待たせしてしまいましたか?」

「いえ、今来たところです」

「ふふ、そうですか」


 十分前に来ていたことはきっと見透かされているんだろうな。

 それにしても、私服姿の兎倉先輩を初めて見たけど、なんというか兎倉先輩の清楚なイメージ通りの服装で可愛かった。


「どうかしましたか?」

「服可愛いですね」

「ふふ、ありがとうございます。獅子王君にそう言ってもらえて嬉しいです」


 兎倉先輩は天使の微笑を浮かべた。 

 

「それじゃあ、行きましょうか」

「どこに行くんですか?」

「それは行ってからのお楽しみです」


 てっきり公園内で何かをするのかと思っていたが違ったみたいだった。

 僕は兎倉先輩と一緒に公園を後にした。


☆☆☆


 公園を後にして向かった場所はゲームセンターだった。

 

「ここは、ゲームセンターですよね?」

「はい。そうです。獅子王君はゲームセンターというところに来たことありますか?」

「何度かありますね」

「そうなのですね。実は私は初めてでして。よければいろいろと教えてくれませんか?」

「僕もそんなに詳しいわけじゃないですけど、それでもよければ」

「ありがとうございます」

「ところで、さっきから気になってたんですけど、お店の前に立っているあの人たちって、もしかして兎倉先輩の?」

「はい。私の家の使用人です」

 

 ゲームセンターの入口のところに黒スーツを着た屈強そうな男の人が二人立っていた。

 

「どうして兎倉先輩の使用人さんがゲームセンターの入り口にいるんですか?」

「護衛のためです」


 兎倉先輩は学校にいる時以外は常に護衛が付いている。

 登下校も送り迎えが来ている。

 なぜ兎倉先輩に護衛が付いているかというと、これは兎倉先輩から前に聞いた話なのだけど、何度か誘拐されかけたことがあったみたいで、それで護衛が付くようになったらしい。


「貸し切りにしていますからね」

「え、貸し切りにしてるんですか?」

「はい」

 

 さらっと、とんでもないことを。 

 貸し切りにしてしまうなんて。

 まぁ、でも、それくらいしないと身の危険があるかもしれない。

 隣にいる時くらいは僕が兎倉先輩を守らないと。


「それでは行きましょうか」

「あ、はい」


 僕は兎倉先輩と一緒にゲームセンターの中に入った。

 本当に貸し切りにしているみたいで、僕たちと店員さん以外は誰もいなかった。

 他のお客さんのいないゲームセンターはなんだか不思議な感じだった。

 ゲーム機から聞こえてくる愉快な音楽だけが店内に響いていた。


「何からやりますか?」

「そうですね。まずはあれからやってみてもいいですか?」


 兎倉先輩が指差した先にあるのはUFOキャッチャーの台だった。

 

「UFOキャッチャーですね。いいですよ」

 

 僕たちはUFOキャッチャーコーナーに移動した。


「いろんな物があるのですね」

「そうですね。お菓子、フィギュア、ぬいぐるみ、いろんな物が景品としてありますね」

「これだけたくさんあると悩んでしまいますね」

「兎倉先輩が取りたい物と思った物を選んだらいいと思いますよ」

「獅子王君はUFOキャッチャーお得意ですか?」

「得意ってほどではないですけど、そこそこできる方ではあると思います」

「そうなのですね。サポートお願いしますね」

「はい」

 

 一通りUFOキャッチャーの台を見て回った後、兎倉先輩が選んだのは猫のぬいぐるみが景品になっているUFOキャッチャーの台だった。



☆☆☆

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