第19話

 あんなことをされて我慢できるわけもなく俺たちはお風呂でエッチをした。 

 それから一緒にしっかりと湯船に浸かり、お風呂から出た後はお互いに髪の毛を乾かし合い、寝室に戻った。


「ふぁ〜。お風呂入ったら本格的に眠くなってきちゃった」

「今日はもう寝るか?」

「そうだね。もう寝ようかな。ふぁ〜」


 涼華は大きなあくびをした。

 俺もそれにつられてあくびをした。

 今日は相当体を動かした。

 バイトをして帰ってきた時よりも疲労感を感じていた。


「明日はバイトの日だよね? 何時から?」

「明日は十一時からだな」

「何時まで?」

「ランチタイムが終わるまでだから十五時だな」

「ランチタイムも予約制?」

「いや、ランチタイムは予約制じゃないな」

「じゃあ、ご飯食べに行ってもいい!?」

「別にいいけど」

「やったー! 絶対に食べに行くね!」


 涼華は嬉しそうに笑うと抱き着いてきた。


「めっちゃ楽しみ! そういえば、孝之はバイト先で何をしてるの?」

「主に調理担当だな」

「そうなんだ!」

「て言ってもサポートだけどな。俺が全部作るって感じじゃなくて」

「じゃあ、行っても孝之に会えるとは限らないんだね」

「そうだな。基本的に厨房の中にいるからな」

「そっか〜」

「まぁ、たまに忙しい時とかはホールを手伝ったりすることもあるけどな」

「そっか。とりあえず、食べには行くね」

「分かった」

  

 明日はいつも以上に気合を入れて仕事をするかな。

 

「じゃあ、そろそろ寝るか」

「そうだね」


 まさかたったの二日で涼華とここまでの関係になるとは思ってもいなかった。

 本当はもっと時間を共に過ごして関係値を築いていくんだろうけど、俺と涼華の間にはそんなの必要なかったらしい。

 なぜなら俺が涼華の愛を受け入れるだけでよかったから。

 それだけで俺たちは時間に関係なく関係値を最大にすることができると分かっていた。

 だから俺は涼華の愛をしっかりと受け止めることにした。

 涼華と付き合うと決めた時からそれは決めていたことだった。

 

「孝之。私と付き合ってくれてありがとね」

「お礼を言うのは俺の方かもな。涼華が俺に告白してくれなかったら俺は死ぬまで童貞のままだっただろうし」

「絶対にそんなことないでしょ」


 涼華は笑って俺のことを上目遣い気味に見た。


「だって、こんなにカッコいんだもん。私と付き合ってなくてもきっといつか誰かと付き合ってたよ」

「どうだろうな?」

「もぅ、もっと自信持ってよね! 私が好きになった人なんだから、もっと自分に自信を持ってもらわないと困るよ!」


 ぷくぅと頬を膨らませた涼華は俺の頬をつねってきた。


「そうだよな」

「うん!」


 自分のためではなく涼華のために自分に自信を持って生きていくとするか。

 そう簡単には無理だろうけど、涼華が隣にいてくれたらそれだけで自分に自信を持つことができるような気がした。

 

「もしどうしても孝之が自分に自信を持てないって思った時は私が孝之のこと肯定し続けるから安心して!」

「それは自信が持てそうだな」

「任せて! そういうの私得意だから! なんら今から孝之の好きなところ百個言ってあげようか?」

「百個も言えるのか?」

「もちろん!」


 涼華は自信満々に言い切った。


「じゃあ、言ってもらうか」

「いいよ! 一個目はね〜」


 それから涼華は俺の好きなところを次々と言っていった。

 ポンポンと出てくる俺の好きなところを聞いている俺の方が恥ずかしくなって二十個目くらいを言われたところでやめさせた。


「え〜。まだまだ言えるのに〜」

「それ以上は俺の心臓がもたない」

「仕方ないな〜。今日のところはこの辺でやめといてあげるか〜。その代わり、私の好きなところ一個言って♡」

「涼華の好きなところか」

「うん♡」


 涼華の好きなところを一つ挙げるとしたらどこになるだろうか?

 顔、体、性格、手料理、思いつくところでこれくらいだった。

 そう考えると涼華は俺の好きなところをよく二十個も言うことができたな。 

 それだけ俺のことが好きっていう証明だよな。

 それに比べて俺は涼華の好きなところが数個しか思いつかない。

 まだまだ涼華のこと何も知らないんだな。

 

「顔かな」

「孝之。私の顔好きなの?」

「好きだな」

「へぇ〜。そうなんだ。知らなかった」

「今、初めて言ったからな」

「そっか。孝之。私の顔好きなんだ。ふ〜ん。そうなんだ〜」


 涼華はニヤニヤと笑って俺の頬をツンツンと突いてきた。


「何だよ?」

「ううん。孝之の好きな顔でよかったな〜って思っただけ♡ さて、私の好きなところを孝之から聞けたし寝よっかな」

「電気消すぞ?」

「うん」


 俺はリモコンを使って部屋の電気を消した。

 部屋が真っ暗になった。

 いつも一人で寝ているベッドに今日は涼華がいる。

 シングルベッドだから、正直二人で寝るには狭すぎるが、それが逆によかった。

 涼華と密着して寝ることができるから。

 涼華の温もりを存在を感じることができるから。

 正直、寝れるかどうかは分からないけど。

 

「孝之。おやすみ」

「おやすみ。涼華」


 真っ暗な中、俺たちはキスをした。

 そして俺は目を瞑った。


☆☆☆


 第二章 了

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