第16話

 スーパーマーケットを後にした俺たちは言っていた通り、コンビニでを買って、俺の家に向かっていた。


「にしても寒いな」

「ね~。まぁ、まだ二月だしこれくらいが普通なんだろうけど」

「そうだな」

「食材持ってくれてありがとね。重くない?」

「全然」

「手、疲れたらいつでも言ってね。代わるから」

「大丈夫。もうすぐ家に着くし」

 

 俺の住んでいるマンションはもうすぐそこだった。

 

「もう着くんだ」

「そこのマンション」

「え、マジ? 孝之の家ってもしかしてお金持ち?」

「普通くらいだと思うぞ」

「嘘だぁ~! ここ絶対お金持ちしか住めないところでしょ!?」

 

 涼華はマンションを見上げてそう言った。

 涼華の言っていることはあながち間違ってはいない。

 なぜならここのマンションは富裕層が住むマンションだからだ。

 普通に住もうと思ったら家賃が数十万するところを数万円で貸してもらっている。


「まぁ、そうだな」

「じゃあ、やっぱりお金持ちじゃん!」

「実はここ獅子丸の親が経営してる不動産会社の物なんだけど、獅子丸と友達ってことで特別価格で貸してもらってるんだよ」 

「そうなんだ。いいな~。私が住んでるアパートとは大違いだ」

「涼華はアパートに住んでるんだな」

「うん。家はそんなに裕福じゃないからね。それでも、一人暮らしさせてもらってるから、わがままは言えないし、両親には感謝しかないよ」

「そっか」

「ねぇ、早く行こ! 早く孝之のお部屋見たい!」

「なんか恥ずかしいな」

「今更、無理とか言っても遅いからね! もうここまで来たんだから!」

「分かってるよ」


 俺は涼華と一緒に暗証番号を入力してエントランスの中に入った。

 そしてエレベーターの前まで行き、エレベーターが一階に来るのを待った。

 

「さすが高層マンション。エレベーターがあるんだね~」


 一階に到着したエレベーターに乗り、俺は十五階のボタンを押した。

 エレベーターは一階も別のフロアに止まることなく十五階に到着した。


「ここが俺の部屋だ」

 

 俺は鍵を開けて涼華を部屋の中に招き入れた。


「お邪魔します~」

「それ使ってくれ」

「これ誰の?」

「お母さんの」

「え、いいの?」

「涼華用のスリッパないからな」

「じゃあ、今日だけ使わせてもらうね。ありがとう」

「とりあえずリビングに行くか?」

「そうだね。もうお腹ペコペコだから先にご飯作ろっかな~。孝之もお腹空いてるでしょ?」

「そうだな。そういえば、俺、今日お昼ご飯食べ損ねたんだよな」

「えっ!? もぅ、そういうことは先に言ってよ!」

「涼華とのデートが楽しすぎてすっかりと忘れてた」

「それは嬉しいけどさ、大丈夫? 私がご飯作るまで我慢できそう?」

「大丈夫。もう何時間も我慢してるし、今更数十分我慢するくらい平気だ」

「急いで作るから待ててね!」

 

 リビングに案内すると、涼華は早速キッチンに向かった。 

 

「買った食材はそこに置いといて」

「何か手伝うか?」

「いいから、孝之は座ってて! 手伝ってもらったら私の手料理じゃなくなるじゃん」 

「それはそうだな。分かった。キッチンにあるものは好きに使ってくれていいから。あと、これ。制服が汚れたらいけないし使ってくれ」

「いいの? もしかしてこれもお母さんの?」

「だな」

「ありがと。使わせてもらうね」

「じゃあ、俺は座ってるな。何か分からないことがあったらいつでも言ってくれ」

「うん。分かった」

 

 俺は一通りの調理道具の場所を涼華に教えると、リビングのソファーに座った。

 涼華は手を洗うとすぐに料理に取り掛かった。

 まさか自分の家のキッチンにお母さん以外の女性が立つ日が来るとは思ってもいなかった。

 これが妻を持つ夫の気持ちってやつか。

 そんなことを思いながらキッチンで料理をしている涼華のことを見ていると食欲をそそるいい匂いが漂って来て「ぐぅ~」と盛大にお腹が鳴った。


☆☆☆

 

 

 

 

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