第15話
ゲームセンターを後にした俺たちは、涼華が手料理を振舞ってくれるらしく、そのための食材を買うためにスーパーマーケットに向かっていた。
「孝之は何が食べたい?」
「涼華が何を作れるか分からないからな。涼華の一番得意な料理でいいよ」
「一番得意な料理か~。カレーライスかな~」
「カレーライスいいね。好きだぞ。カレー」
「じゃあ、カレーライスにしようかな。いつも作ってる私のカレーライスでいい?」
「あぁ、それでいいよ。てか、涼華料理できるんだな」
「できるよ~。これでも一人暮らしでちゃんと自炊してるからね!」
涼華は胸を張って自慢気に言った。
涼華も俺と同じで一年生の時から一人暮らしをしているらしい。
それも昨日の電話で知った。
「孝之は?」
「まぁ、人並みに自炊してるって感じだな」
「そうなんだ。これからは作る機会減るかもね」
「それはどういう意味だ?」
「私が作ってあげるってこと♡」
「毎日?」
「孝之が毎日作ってほしいなら毎日作ってあげるよ♡」
「それは今日涼華の料理を食べてから考えるかな」
「え~。それって私の料理がマズいかもしれないって思ってるってこと?」
「冗談。でも、毎日作るのって大変じゃないか?」
「どうだろう? それは毎日作ってみないと分からないね。私も毎日料理をしているわけじゃないし。でも、料理自体は好きだからきっと大丈夫だと思うけどね!」
「いい奥さんになりそうだな」
「何それ? もしかしてプロポーズ!?」
「さぁ、どうだろうな?」
「え〜! 気になるじゃん!?」
「まぁ、この先もずっと付き合い続けてたらいずれは結婚するかもな」
「じゃあ、嫌われないようにしないとね! 孝之と結婚したいし!」
「結婚したいのか。気が早すぎないか? 俺たち付き合ってまだ二日目だぞ?」
「先に結婚の話を出したの孝之じゃん! それに、私、一番最初に付き合った人と結婚するって決めてるから!」
「てことは俺か」
「そうだよ! だから、私のこと捨てないでね?」
涼華はつぶらな瞳で俺の子を見つめてきた。
俺たちは人間だからどうしたって相性が合う合わないがあるだろうけど、涼華とは相性が良い気がしていた。
そうじゃなかったら、たったの二日でここまで仲良くなれるわけがない。
「むしろ、俺の方が捨てられないか心配だけどな。てか、こんな話昨日もしたよな」
「たしかに。安心して、暴力も浮気も絶対にしないから」
「俺もそれはするつもりないから安心してくれ」
「じゃあ、私たち結婚できるね!」
「かもな」
俺と涼華は顔を見合わせて笑い合った。
そんなことを話しながら歩いていると俺の家の最寄りのスーパーマーケットに到着した。
「とりあえず、カレーの材料から買おっか」
「そうだな」
俺はカートに買い物かごを乗せて涼華の後をついて行く。
まずは野菜のコーナーに向かった。
「孝之は嫌いな食べ物とかある?」
「特には無いな」
「いいね! じゃあ、私が作るいつものカレーで大丈夫そうだね!」
「いつも何カレーを作ってるんだ?」
「私がいつも作るのはシーフードカレーだよ!」
「シーフードカレーか。美味しそうだな」
「私の作るシーフードカレーめっちゃ美味しいよ! ちょっと時間はかかるけどね~。だから今日はちょっと手抜きするつもり」
涼華はじゃがいもとにんじん、それから玉ねぎを買い物かごに入れると冷凍食品が並んでいるコーナーへと向かった。
「あったあった。これこれ! シーフードミックス! これ意外と便利なんだよね~。いつもはこの中に入ってるエビとかイカとか下処理してカレー作るんだけど今日はそんな時間ないからこれ使っちゃう。これでも十分美味しいから安心してね!」
そう言って涼華はシーフードミックスを買い物かごの中に入れた。
それから市販のカレールーも買い物かごに入れると一通りの買い物は終わったようだった。
「カレーの材料はこんなもんかな。他に何か買いたい物とかある?」
「お菓子とか飲み物とか買っとくか?」
「ん~。そうだね。一応買っとこうか。夜は長いしね♡」
「そうだな」
俺たちはお菓子のコーナーと飲料水のコーナーに向かっていくつかのお菓子とジュースを買い物かごに入れた。
「そういえば、孝之はアレ持ってる?」
「アレって?」
「ほら、アレはアレだよ♡」
「だからアレって何だよ?」
「さすがにまだ子供作るわけにはいかないじゃん?」
そう言われて俺はアレが何のことなのか分かった。
「持ってるわけないだろ。初めてなんだから」
「ちゃんと買っとかないと~。いつその時が来るか分かんないだから!」
「そう言う涼華は持ってるのかよ」
「私? 持ってるよ♡」
「用意周到だな」
「孝之といつそういう事になってもいいようにちゃんと財布の中に入れてる♡ 財布の中に入れてるとお金持ちになれるらしいよ!」
「そうなのか」
「でも、一応買っとく? 足りないかもしれないし♡」
アレが何個入りなのか知らないが、足りなくなることなんてあるのだろうか?
でも、足りなくなったら困るからさすがに買っておいた方がいいよな。
「そうだな」
「じゃあ、帰りにコンビニに寄ろうっか!」
お会計は折半で支払いをした。
作ってもらう手間を考えれば俺が全額支払うべきなんだろうけど涼華が譲らなかったので折半ということになった。
その代わりにアレのお金は俺が出そうと思った。
☆☆☆
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