第13話

「はぁ〜。マジで疲れたぁ〜」

「あはは、お疲れ」


 放課後になり俺と涼華は約束通りデートをしていた。

 結局、放課後までどこに行くのか決まらなかったので今はぶらぶらと街中を歩いていた。


「涼華は余裕そうだな」

「そんなことないよ。まぁ、孝之よりは多少慣れてるからそんなに疲れてはないけど」


 なぜ俺がこんなに疲れているかというと涼華のことでいろんな生徒(主に男子)から質問攻めにあったからだ。 

 授業と授業の間の十分休憩、昼休憩、今日の俺に休憩時間というものは存在しなかった。

 そのせいでお昼ご飯も食べ損ねて空腹というのも疲れている要因の一つだ。


「さすがだな」

「デートする元気ありそう?」

「それは大丈夫」

「よかった。じゃあ、どこ行こっか?」

「どうすっかな。質問攻めにあったせいでどこに行くか決める時間なかったしな」

「そうだね」

「無難にゲームセンターとかにしとくか?」

「そうしよっか」

「決まりだな」

 

 精神的には疲れているが身体的には元気なのでゲームセンターで遊ぶくらいはできるだろう。

 それに涼華と一緒に入れば精神も回復してくだろうしな。

 

「じゃあ、ゲームセンターへレッツゴー!」


 俺と涼華は手を繋いでゲームセンターに向かった。 

 涼華と手を繋いでいるだけで少し精神が回復した。


☆☆☆


 ゲームセンターに到着すると俺たちはまずUFOキャッチャーコーナーに向かった。

 

「孝之はゲームセンターによく来る?」

「いや、あんまり来ないな。涼華は?」

「私もあんまり来ないかな~。来たとしてもプリクラを撮るくらいかな」

「そうなのか。どうする? ゲームセンターに来たはいいけど、お互いに初心者過ぎてUFOキャッチャーとかしたらお金使うだけだよな?」

「ま、それもいいんじゃない? 一つの思い出じゃん! それに簡単設定っていうのがあるみたいだよ!」


 涼華が指差した先の台に簡単設定初心者でも簡単に取れますと書いてある台があった。

 景品はスナック菓子。

 ちょうど挑戦している人がいて様子を見ていたが一発でゲットしていた。

 どうやら簡単設定のUFOキャッチャーは他にもあるようで、スナック菓子以外にもぬいぐるみやアニメのキャラクターのフィギュアとかもあった。


「あれだったら私たちでも取れそうじゃない?」

「たしかに。じゃあ、簡単設定の台に挑戦してみるか?」

「うん! しよ~!」


 二人で簡単設定のUFOキャッチャーを見て回って景品を選んだ。

 俺たちが選んだのは猫のぬいぐるみだった。

 涼華がそれに一番反応したから、それにすることにした。

 どうやら涼華は猫が好きらしい。


「どれ狙えばいいんだろう?」

「とりあえずそこの穴に一番近いやつを狙えばいいんじゃないか? それか涼華が取りたいやつか」

「せっかく取るなら可愛いのがいいな~。あれにする!」


 そう言って涼華が指差したのは奥の方にいた三毛猫のぬいぐるみだった。


「取るの難しそうだけど大丈夫か?」

「そこは、ほら、これの力で何とかするよ!」


 お金マークを指で作った涼華は台に百円玉を投入した。


「この光ってるボタンを押せばいいんだよね?」

「たぶんな」

「ストップって言ってね!」

「いや、俺もあんまり分からないんだが?」


 涼華は光っているボタン(横移動)を押した。

 とりあえず、涼華が狙っている三毛猫のところでストップって言えばいいよな。

 そう思っている間もアームは動き、三毛猫のぬいぐるみの直線上まできていた。


「す、ストップ」

「はいっ!」

 

 俺のストップの声に涼華はボタンから手を放した。


「まぁまぁいいんじゃないか?」

「そうだね。次はこっちのボタンを押せばいいんだよね」

「そうだな」

「また、ストップって言ってね?」

「分かった」


 涼華は光っているボタン(奥行)を押した。

 アームが三毛猫ぬいぐるみに向かって動いていく。

 ストップを言うタイミングはアームが三毛猫のぬいぐるみの真上に到着した時でいいと思う。

 なので俺はアームが三毛猫のぬいぐるみの真上に到着したくらいのところで「ストップ」と言った。

 俺のストップの声に涼華がボタンから手を放すとアームがゆっくりと三毛猫のぬいぐるみに向かって下りていった。

 

「お願い! 取れて!」


 涼華は顔を台に近づけてその様子を見守っていた。

 三毛猫のぬいぐるみのところまで下りきったアームはしっかりと三毛猫のぬいぐるみを掴むとそのまま持ち上げた。

 

「ねぇ! 取れそうだよ!」

「そうだな」

 

 しっかりと三毛猫のぬいぐるみを掴んだアームは三毛猫のぬいぐるみを落とすことなく景品取り出し口の上までやってきた。

 そして、アームはしっかりと掴んでいた三毛猫のぬいぐるみを放して景品取り出し口に落した。

 

「やったー! 取れたよ!」


 景品取り出し口から取り出した三毛猫のぬいぐるみを抱きしてめている涼華は嬉しそうに満面の笑みを浮かべていた。 

 可愛すぎるんだが!? 

 この笑顔のおかげで俺の精神は完全に復活した。


「さすが簡単設定」

「だね! 孝之も何か挑戦してみたら?」

「そうだな。じゃあ、俺も猫にしようかな」

「いいじゃん! 孝之も三毛猫取ってお揃いにしようよ!」

「ありだな」


 俺も一発で取らないとな。

 そう思って台に百円玉を入れた。

 操作方法は涼華ので完全に理解していた俺は三毛猫のぬいぐるみに狙いを定めてアームを動かした。


「いい感じじゃない?」

 

 アームは狙い通り三毛猫のぬいぐるみをしっかりと掴んだ。

 そして、そのまま落とすことなく景品取り出し口の上に戻って来た。


「孝之も一発じゃん!」

「一発で取れてよかった」

「これでお揃いだね!」

「そうだな」


 本当はダメなんだろうけど、俺と涼華はUFOキャッチャーの台の前に取った三毛猫のぬいぐるみを置いて写真を撮った。


☆☆☆


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