第2章 ギャルと初デート

第11話

 涼華と付き合うことになった翌日。

 俺は涼華が来るのを待っていた。

 昨日、バイトから帰った後、涼華と電話をした。

 その時にお互いの家の場所を確認してみると意外と近くに住んでいるということが分かり、一緒に登校しようということになった。

 

「ふぁ〜。眠い」


 涼華との電話は意外と楽しくて、気がついた時にはいつも寝ている時間を二時間も過ぎていた。

 おかげでようは寝不足だ。

 朝からあくびが止まらない。

 まぁでも、そんな代償を払ってもいいと思えるくらいに涼華との電話は楽しかった。

 常に涼華が話題提供をしてくれるし、俺がどれだけくだらないことを言っても笑ってくれるし、まるで昔から知っている仲のように俺と涼華は夜が更けるまで話し続けていた。

 そのおかげで涼華のことを少しだけ知ることができた。

 最後は涼華峰の寝落ちで終了したがとても有意義な時間だった。

 

「あ! いたいた〜! 孝之〜。おはよう〜」


 声の方を向くと、昨日よりも可愛い涼華が手を振りながらこっちに向かって走ってきていた。

 俺と涼華は昨日の電話で名前呼びをするようになった。

 

「おはよう。涼華」

「昨日はごめんね〜。寝落ちしちゃって」

「いいよ。涼華の可愛い寝息が聞けたから」

「超恥ずかしいんだけど! 今すぐ記憶から消去して!」

「それは無理だな。しっかり録音までしたから」

「えっ!? 嘘でしょ!?」

「嘘」

「もぅ! ビックリしたじゃん!」

 

 涼華は俺の肩をバシバシと叩いてきた。

 

「まぁ、孝之だったら許すけど。孝之は私の彼氏だから」

「そう言ってくれるのは嬉しいけど、俺に寝息を録音する趣味はないから安心しろ」

「ふ〜ん。そうなんだ。じゃあ、私は孝之の寝息録音しちゃお!」

「するな」

「え〜。どうしよっかな〜?」

「いや、寝息なんか録音してどうするんだよ」

「そりゃあ、もちろん聞くに決まってるじゃん!」

「聞くな」

「あはは、冗談だよ! 寝息は録音しない。その代わり、私と一緒にいろんな動画撮ろ? 思い出として」

「まぁ、それならいいよ」

「やったー! てことで、早速撮ってもいい? 一緒に初登校記念に!」


 俺が頷くと涼華はスカートからスマホを取り出して、内カメラで動画を撮り始めた。


「ほら、笑って笑って!」


 涼華は俺に密着してきて笑うように言った。


「いぇ〜い! 孝之と初登校〜! これからたくさんいろんな思い出作っていこうね〜!」

「そうだな」


 スマホの画面には満面の笑みを浮かべた涼華と少し不恰好な笑みを浮かべた俺が映っていた。


「あはは! 孝之、笑顔下手すぎじゃない?」

「うっさい。作り笑顔は苦手なんだよ」

「作り笑顔しなければいいのに。仕方ないな〜。私が笑わせてあげよう!」


 そう言って涼華は変顔をして俺の方を向いた。

 その変顔があまりにも面白くて、涼華が変顔をするのが予想外すぎて、俺は吹いてしまった。


「面白すぎるだろ。なんだよその顔」

「いいね〜! そうそう! それそれ! いい笑顔じゃん!」

「涼華変顔とかするんだな」

「するする! 好きだよ! 変顔!」


 そう言って涼華は次々といろんな変顔をした。

 涼華の変顔が俺にはツボで、俺は腹を抱えて笑った。

 

「も、もうやめてくれ。それ以上されると死ぬ」

「爆笑する孝之〜! めっちゃいい笑顔!」


 俺は大きく息を吸い込んで呼吸を整えた。


「ふぅ〜。朝からやめてくれよ」

「そんなに私の変顔面白かった?」

「マジで面白すぎ」

「そんなに笑ってくれるなら変顔をした甲斐があるってものだね!」


 ニコッと笑った涼華は録画停止ボタンを押して、俺の腕に抱きついてきた。

 

「それじゃあ、学校に行きますか!」

「そうだな」


 ちなみに今日はバイトがないし、帰りに涼華とのデートが待っているから徒歩通学だ。

 

「そういえば、今日のデートはどこに行くんだ?」

「まだ決めてないー! とりあえず、ぶらぶらと街中を歩こうなかって。孝之はどこか行きたいとこある?」

「行きたい場所か。デートの定番スポットとか行くか? カフェとかゲーセンとか」

「それもありだね〜」

「無難だけどな」

「無難でもいいでしょ。孝之と一緒ならどこでもいいよ」

「そっか」

「うん! ま、放課後まで時間あるからゆっくり決めようよ。行きたいところが思いつくかもしれないし」

「そうだな」


 俺たちは放課後のデートコースを話し合いながらゆっくりと歩いて学校に向かった。


☆☆☆


 学校に近づくにつれ、視線を感じることが多くなった。

 それは仕方なのないことで、こうなることは分かっていたことだった。

 なぜなら、あの猫峰涼華が男(俺)と一緒に登校しているのだから。


「隠す気は一切ないんだな」

「何のこと?」

「俺と付き合ってるってこと」

「あ~。ないね。むしろ思いっきり主張してやろうと思ってる! 孝之は私の彼氏だから手を出すなってね! 孝之は隠してほしかった?」

「いや、まぁどっちでもいいな。涼華と付き合うと決めた時点でこうなることは分かってたことだから覚悟してたし」

「そっか。じゃあ、どんどんアピールしちゃお~」

 

 早速、涼華は見せつけるように俺の肩に頭を乗せてきた。

 

☆☆☆


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