〈番外編〉天使様の恋
第8話
〈獅子王視点〉
孝之と別れた僕は生徒会室に向かっていた。
昨夜、兎倉先輩からLIMEで連絡があった。
内容は明日の放課後に生徒会室に来てほしいというものだった。
兎倉先輩には去年と今年の生徒会でとてもお世話になった。
右も左も分からなかった僕に手取足取りいろんなことを教えてくれた。
ふと、「兎倉先輩と付き合え」という孝之の言葉が頭をよぎった。
兎倉先輩は何の用事で僕のことを呼びだしたのだろうか?
孝之の言う通り、僕にチョコレートを渡すためなんだろうか?
もしもそうなら僕はどうすればいいのだろうか?
もちろん兎倉先輩のことは好きだ。
でもそれはLOVEではなく、LIKEの方だ。
「とりあえず、要件を聞いてから考えよう」
まだ、兎倉先輩が僕にチョコレートを渡すために呼び出したと決まったわけではないわけだし、それからでも遅くないはずだ。
生徒会室は西棟の三階にある。
階段を上がり三階に到着した。
この時間は部活動が始まっているので誰ともすれ違わずに生徒会室の前に到着した。
兎倉先輩はもう来ているのだろうか?
特に時間の指定はなかったので、まだ来ていないかもしれない。
僕は生徒会室の扉をノックして「獅子王です」と言った。
するとすぐに中から「どうぞ。開いてます」と返事が返って来た。
兎倉先輩の声だった。
「失礼します」
僕は扉を開けて生徒会室の中に入った。
部屋の中に入ると窓際で校庭の方を向いていた兎倉先輩が僕の方を向いた。
「来てくれてありがとうございます。獅子王君。今日はお忙しかったのではないですか?」
「そうですね。お昼くらいまでは忙しかったです」
「今年は何個チョコレートを貰ったのですか?」
「数えてないので分からないですが、去年よりも多かったような気はしますね」
「さすが獅子王君ですね」
兎倉先輩はクスクスと笑うと、僕にソファーに座るように言った。
僕は兎倉先輩と向き合うような形でソファーに座った。
「この学校に来るのも残り一カ月ですか。なんだか名残惜しいですね」
「来月には卒業ですもんね」
「そうですね。獅子王君と出会ってからの二年間は本当にあっという間でした。毎日が楽しくて、こんな日々がずっと続けばいいのにと思うほどでした」
それは僕も同じ気持ちだった。
生徒会のメンバーと過ごす日々は大変な時もあったけれど、楽しかった。
僕を生徒会に誘ってくれたのは他でもない兎倉先輩だ。
兎倉先輩が誘ってくれなかったら、僕は生徒会には入っていなかったと思う。
「時が経つのは早いですね」
「そうですね」
「獅子王君は卒業後はどうされるのですか?」
「どうでしょう? 今のところは大学に進学すると思います」
今のところは高校卒業後は大学に進学して経営学を勉強して、大学卒業後には父の経営している会社を継ぐ予定になっている。
「そうですか。どこの大学に行くのかは決めているのですか?」
「一応、決めてますね」
「さすが獅子王君ですね。きっと獅子王君ならどこに行っても活躍されるでしょうね」
「どうですかね? 僕なんて一人じゃ何もできない人間ですよ」
「そんなことはありませんよ。私はたくさん獅子王さんに助けてもらいました。獅子王君が支えてくれたから私は生徒会長を二年間も続けることができたのです。本当にありがとうございました」
そう言って兎倉先輩は僕に向かって深く頭を下げた。
「こちらこそ兎倉先輩にはたくさん助けられましたし、たくさんいろんなことを学べました。兎倉先輩と一緒に生徒会で活動をすることができてよかったです。僕のことを誘ってくれて本当にありがとうございました」
僕も兎倉先輩に向かって深く頭を下げた。
兎倉先輩から学んだことは本当に多い。
感謝するのは僕の方だ。
「そう言っていただけるなら獅子王君のことを生徒会に誘ってよかったです」
そう言って兎倉先輩は微笑んだ。
兎倉先輩の微笑は生徒たちの間で天使の微笑と言われている。
そう言われるのが分かるくらい兎倉先輩の微笑は可愛い。
☆☆☆
獅子王と兎倉の恋も書くつもりなのでそちらもお楽しみ~!
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