第7話
実際に驚かされたしな。
もし、手紙に猫峰の名前が書いてあったらどうだっただろうか?
俺は信じただろうか?
いや、手紙に猫峰の名前が書いてあったとしても信じなかっただろうな。
そのくらい俺と猫峰の関係性は浅い。
でも、不思議だ。
猫峰と一緒にいるのは獅子丸と一緒にいる時と同じくらいに心地が良い。
「そういうこと! 実際ビックリしたでしょ?」
「心臓が口から出るかと思うくらいビックリしたな」
「そんなにビックリしたの!? じゃあ、大成功じゃん!」
猫峰は嬉しそうに笑うと俺にVサインを向けてきた。
えっと……可愛すぎるんだが!?
これは俺が猫峰に惚れるのも時間の問題だな。
なんてことを思いながら歩いていると前の方に見覚えのある後姿を発見した。
獅子丸だ。
その隣には小柄な女性がいた。
小柄な女性はここからでも分かるほど圧倒的なオーラを発している。
兎倉先輩だ。
あの様子だと獅子丸のやつ兎倉先輩と付き合うことにしたのかもしれないな。
「どうかした?」
「ん、あぁ、目の前にビッグカップルがいるなと思ってな」
「どこ? あ、ほんとじゃん! 兎倉先輩だ~!」
「そういえば、二人は仲良いんだよな?」
二人が仲が良いというのは学校内では周知のことだった。
お昼ご飯もよく一緒に食べているらしい。
「超仲良いよ~! 一緒に買い物行ったりするし!」
「それは目立ちそうだな」
「うん。だから、一緒に買い物するときは極力目立たない格好をしてる」
「買い物するにも一苦労だな」
「まぁね。仕方ないよ。私も兎倉先輩も超可愛いからね~」
「自分で言うのかよ。まぁ、実際可愛いもんな。猫峰」
「よかった~。ちゃんと虎谷君にも可愛いって思ってもらえてるんだ」
猫峰は少し安堵したような笑顔を俺に向けた。
もしかして、俺が猫峰のことを可愛いと思っていないとでも思っていたのだろうか?
そんなことあるわけがない。
接点がなかっただけで、可愛いやつだなとは一年生の時から思っていた。
「俺も男だからな」
「そうだよね。虎谷君おっぱい好きだもんね♡」
猫峰は俺の耳元で囁いた。
突然、そんなことを囁かれ俺は自転車を倒しそうになった。
そんな俺を見て猫峰はケラケラと笑っている。
「俺のこと揶揄って楽しんでるだろ?」
「バレた? だって、虎谷君良い反応するんだもん!」
「猫峰ってそういうやつだったんだな」
「知らなかった?」
「初知りだな」
「じゃあ、覚えといて。これから長い付き合いになるんだから♡」
「そうだな。覚えとくよ」
「虎谷君もいろんな一面をこれから私に見せてね♡」
「幻滅されないように気を付けないよな」
「その心配はどっちかっていうと私がしないといけないかも」
「俺に幻滅されるような一面を持ってるのか?」
「さぁ、どうでしょう?」
猫峰はニヤッと笑った。
よほどのことがない限り俺が幻滅することはないと思う。
「暴力をふるってきたり、浮気しない限りは幻滅しないと思うけどな」
「言ったね? 私、意外とエッチだよ?」
「それはむしろ大歓迎なんじゃないか?」
「週八でエッチしてくれないと拗ねちゃうかもしれないよ?」
「それは……できる自信ないから俺の方が幻滅されるかもな」
「冗談♡ でも、定期的にエッチはしてほしいな♡」
「できるだけ頑張るよ」
「ちなみに虎谷君は童貞?」
「何の躊躇いもなく、さらっと聞いてくるな。そうだよ。なんなら、女子と付き合うのも初めてだよ。だから、至らないことがたくさんあるかもしれないけど、その時は言ってくれ。できるだけ善処するから」
「大丈夫。私も初めてだから一緒にいろんなこと経験してこ♡」
そう言って猫峰は俺の手に自分の手を重ねてきた。
猫峰が初めてなのは意外だったが、これから猫峰といろんなことを経験していく未来を想像してみたら楽しい未来しか見えなかった。
俺の青春がこれから始まろうとしていた。
☆☆☆
第一章 了
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