第6話
嬉しそうに笑うと猫峰は俺の腕に抱き着いてきた。
猫峰の柔らかなおっぱいが腕にめっちゃ当たっているが俺は意識しないようにした。
いや、無理だろ!?
意識しないようになんて無理に決まってる。
こんなのどうしたって意識してしまうに決まってるだろ!
「どうかした?」
「その……当たってる」
「何が?」
猫峰はニヤッと笑って俺の顔を覗き込んできた。
「言ってくれないと何が当たってるか分かんないよ? ほら、何が当たってるか言いなよ」
「だから……おっぱい」
俺は猫峰に聞こえるか聞こえないかくらいの小さな声で言った。
しかし、猫峰は俺に密着していたのでしっかりと聞こえたようだ。
猫峰はさらに密着してきた。
「聞こえないな~。何が当たってるのかな~?」
「絶対に聞こえてるだろ!? わざとやってるだろ!?」
「だとしたら? 虎谷君は離れてほしい? 離れてほしいっていうなら離れるけど」
超迷う選択肢だった。
猫峰のおっぱいを味わっていたい気持ちと、このままではヤバいという気持ちが俺の中で葛藤していた。
葛藤の結果、勝ったのは。
「そのままでいいです」
「あはは、おけ! じゃあ、このまま校門まで行こ!」
「その前に自転車小屋」
「あ、そっか。自転車取りに行かないとだもんね」
猫峰と一緒に自転車小屋に向かう。
歩くたびに猫峰の柔らかいおっぱいの感触が腕に伝わってくる。
今更だがこの状況を男子に見られたらとんでもないことになるのではないだろうか?
そんなことが頭をよぎったが、猫峰の柔らかなおっぱいに抗うことは出来なかった。
☆☆☆
自転車小屋に到着するまでにいろんな生徒とすれ違った。
当然というか、予想通りというか、男女学年関係なく俺たちのことを見ていた。
「猫峰っていつもこんなに視線を感じながら生きてるんだな」
「今日はいつも以上に見られてるね~。なんでだろうね~?」
「いや、分かってるだろ」
「あはは、そうだね。私が虎谷君と一緒に歩いてるからだろうね」
「それから今日がバレンタインデーだってこともあるだろうな」
「たしかに。みんな私が誰かにチョコレートあげるのか興味津々だもんね~」
「まさか俺が貰うことになるとは思ってなかったけどな」
「私もこんなに早く誰かにチョコレートを渡す日が来るなんて思ってなかったよ? 人生で初めてあげるチョコレートは心の底から好きになった人にあげようって決めてたから」
「そんな大事な物を俺が貰って本当によかったのか?」
「いいに決まってるじゃん! だって、私、虎谷君のこと心の底から好きって思ってるもん!」
「そっか。じゃあ、しっかりと味わって食べないとな」
「残したら許さないからね♡」
「残すわけないだろ」
俺は自転車小屋から自分の自転車を取り出すと、自転車を押しながら猫峰と一緒に校門に向かって歩き出した。
「てか、そうだ。あの手紙の文章なんだよ。果たし状かと思ったぞ」
「あ~。あれね。どんな文章で虎谷君のことを呼びだそうかと考えたんだけど、あんまりいい文章が思いつかなかったんだよね。だから、ちょうど読んでた小説に果たし状を渡すシーンがあったから、果たし状みたいにしちゃえって思ってあの文章にしたの」
「したのって、せめて、もう少しラブレターっぽい文章にしろよな。行くのやめとこうかと思ったぞ」
「えっ、そうなの!?」
「まぁな。でも、一応、今日バレンタインデーだし、もしかしたら女子からの手紙かもしれないって思ったから行くだけ行って差出人の顔を見てからどうするか決めようと思って行ったけど」
「なんかごめんね」
「いや、いいよ。もう終わったことだしな。まぁ、まさか俺を呼び出したのが猫峰だとは思ってなかったけどな」
「私でガッカリした?」
「なわけ、呼び出された相手が猫峰でガッカリするとかありえないだろ。自分がどれだけ人気者か自覚してないのか?」
「けど、虎谷君信じてなかったじゃん」
「それとこれは話が別だろ。自分が猫峰に呼び出されるんなんて思うわけないって。話したこと一回しかないんだぞ。せめて自分の名前くらい書いとけよな」
「それは虎谷君のことをビックリさせようと思って、わざと書かなかったの!」
「じゃあ、まんまと猫峰の思惑にハマったわけだな」
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