エピローグ

 ホンジャマカ夢花に菓子折を持ってお礼に行ったが、事務所はまるで誰も居なかったかのように、もぬけの殻だった。大家に追い出されでもされたのだろうか。

 俺がトボトボ歩いていると、いつの間にか、あの例の物件の前に自然と吸い込まれるように足を運んでいた。

 物件には警察が複数人集まっていた。

 不動産屋としてそこを紹介していた旨と身分証明書を見せたら、事情を考慮してか、警察はあの家で起こったことを話した。

 夜中に足音があの家の間近でして、驚いて、家に近づき、その様子を見に行った近所の住人が家に穴が突然開いたところを見たのだという。穴を開けた際にチラリと黒い長い髪が見えたかと思うと、カンと音がして何か円盤状の物が頭の前に飛んできてぶつかり、その住人は失神。朝になって気を取り戻した彼が110番通報をして事の次第を話したらしい。

 俺は、その犯人が誰か正体を知っているのだが、何も言わなかった。

 家に帰ってホンジャマカ夢花のサイトを調べたが、削除されており閲覧できなかった。

 俺は、その手際の良さに笑いながら、ノートパソコンを閉じた。

 そして、彼女に渡そうとした菓子の箱を開け、食べ始めた。

 彼女は俺の悪夢を取り除いてくれた、もう、それだけで良いじゃないか、そう思いながら。

 その時、どこからかあのカンという音が響いた気がした。


(カン) 

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水牛の夢を見る家~ホンジャマカ夢花の事件簿~ 村田鉄則 @muratetsu

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