第4話 専門家登場

 俺の会社までホンジャマカ夢花と車で戻った。道中、彼女は頭を抱えながら、ぶつぶつ先程の数字群に関することを呟いていた。

「117(いいな) 102(とうふ) 98(クッパ)102(豆腐)97(ココナッツ)111(良いい!)108(どおや!)ってことなのか…」

「そうかもしれませんね」

 そんなわけないだろ、と頭では思いつつも、彼女の気持ちを考えて、肯定の返事を返すという大人な対応をした。


 彼女は思考を巡らせることに集中しており、俺の話は耳に入っていないようだった。 

「んんんん~~~~~~~~」

 と叫びながら、頭を猛烈に両手で掻きむしり始める彼女。

 ロングの黒髪が乱れに、乱れ、荒波のようになった。

 暫しの間、その動作を繰り返したかと思うと、突然、

「そうだ!」

 と彼女は何か閃いた様子でニッコリ笑顔になって、手をポンと叩いた。

 その瞬間、俺たちが乗った車は会社に着いた。


「で、夢花さんは何を思いついたんですか?」

 仕事が終わってから、遠回りして寄った、薄暗い夢花の仕事場で彼女に俺は聞いた。

「簡単なこと、数字に強い人に任せることにしたの!!じゃーん」

 そう言って、彼女はスマホを開いて、テレビで見たことのあるIT社長の写真を俺に見せた。

 

「この人がどうかしたんですか?」

「いやさあ、この人、私の知り合いでさ~」

「なっ!」

 俺はその瞬間、彼女から出されたお茶を飲んでいたのだが、驚きのあまり口から吹き出した。


「驚いた?私こう見えて、この道のプロなのよ。有名人の悪夢もいっぱい払って来たんだから…お金に興味ないし料金は一律5千円だから、儲けはほぼないけどね」

 

 信じられない事実であったが、今の俺は彼女のことを信じるしかなかった。バッファローの夢、あの気持ちの悪い夢、あれを早く俺は払って欲しいのだ。


 彼女は依然、話し続ける。

「まあ、それは置いといて…IT社長さんにメッセージアプリでさっき、あの数字を送ったらこんなのが返ってきたの」

 

 彼女はスマホでIT社長と彼女のメッセージアプリでのトーク画面を開き、俺の目の前に差し出した。

 彼女は俺の今回の依頼内容の概要を話した後、件の数字を羅列し、この暗号を解いて欲しい!というメッセージを彼に送っていた。それに対する彼の返信はこういうものだった。

 

『色々考えてみたんだが…

 この一見、意味の無い数字の羅列はおそらく…

 ASCIIコードが関係していると思う。

 コンピューターは数値と文字を対応させているんだが、アルファベットや記号ではこのASCIIコードが採用されている場合が多い。

 ASCIIコードとお前が言ってた数字を照らし合わせると…


 117→u

 102→ f

 98 →b

 102→f

 97 →a

 111→o

 108→l


 になる。ufbfaol。これのアルファベットの位置を組み替えると…


 buffalo

 

 依頼人の夢と関係してそうだな』


 buffalo1は言わずもがなバッファローの英語表記だ…

 またしてもバッファロー…

 怯えから冷や汗が浮かび上がって、頬を伝って床に落ちる。


「しかし、なんでこんな回りくどいことをあの家の所有者はしたんですかね…やっぱり呪い?」

 俺は夢花に声を少し震わせて聴いた。

 

 夢花は子供をあやすような手つきで、俺の頭をよしよしした。

「そんなに怯えない。怯えない。大丈夫。私が解決してあげるよ」


 そう言いながら、彼女は部屋の奥に行って、何かを取り出してきて机に広げた。

 それは地図だった。


 

 


 

 

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