決断と旅立ち


ジムはカイに詰め寄ると、「カイ、その機器を俺に譲ってくれ。」


その言葉に、カイは機器をポケットに戻すと、

ぶっきらぼうに「それは出来ない。ただ一つ聞いてもいいか?」


ジムは頷くと、「どうして、この機器が欲しいだ?」とカイは訊くと、ジムは真剣な態度で何度もカイに 


プレゼンテーションするが、駄目の一点張りにジムは


「俺はラッキーシティで小さな道具屋を営んでいたが、ある日俺は思った、このまま退屈な毎日でいいのかと?そんな時にチェイスが俺に教えてくれたんだ。他の世界へ行けるワープゲートの存在を」


熱く語るジムをじっと見るカイ。


「なるほど……言いたいことはわかった。道具屋をやめたいと、そしてワープゲートを使って、他の世界へ行くと……で?それで何をするんだ?目的はあるのか?」


何がしたい?……目的は?……


カイの質問に言葉が詰まる、確かにワープゲートを

使って他の世界へ行ったとしても、目的がなければ

意味がない、1番大切な部分が抜けていたことに気付く。


何も言えないジムを見て、深く溜息をつくと、


チェイスの方を向くと「チェイス、お前もジムと同じで、ワープゲートを使って他の世界へ行きたいのか?警察官を辞めたいのか?なぁチェイス?」


チェイスも黙っていたが口を開く「そうだなぁ、俺もジムと同じで、退屈な毎日に飽き飽きしていたんだ。悪いか?」


開き直るチェイスに、半ば呆れるカイは

頭を掻きながら考えていた。


「2人はとんだ大馬鹿野郎だぁ、そんなにお前ら

別の世界に行きたいのか、わかった、わかった、ほらよ」



ジムに小型の機器を放り投げると

慌てて落とさないようにキャッチ


「え?いいのか?大切な物なんだろ?」

ジムとチェイスは心配そうな顔をする


カイは指を指しながら「お前ら2人はどうせ、俺が渡さなかったら、勝手にワープゲート探して、他の世界へ行くつもりだろ?」



ジムとチェイスは頷く


それで死なれても困るんでね、だから渡しとく、

その代わりに一つ、俺と約束してくれないか?」

ジムとチェイスは互いに顔をみて、カイを見る。


「なんだ、約束って?」


「俺の代わりに、ジムとチェイスで3種の神器を奪い返してくれないか?」


俺達が3種の神器を奪い返す?何を言ってんだ?

そんな顔をするジムとチェイス。


「おいカイ、3種の神器を奪い返す?俺達が?

何を言ってんだよ。」


ジムの肩にそっと手を乗せるカイ、


「俺は本気だそ、それとも怖気づいたか?まぁ無理なら、この話はなしで」


ジムを煽るカイ、隣で見ていたチェイスは

カイお得意の相手を煽るテクニックに、


「わかった。俺とチェイスで三種の神器を奪い返してくる。いいよな?チェイス」


横にいるチェイスを見る、観念したような顔で

あぁわかったよ、やればいいんだろ、やれば」

投げやりに言うが、まだ納得はしていなかった。


それとは反対に、ジムは小型の機器を真剣な顔で

いじっていると、ピピと音をたて表示される。


ワープゲートの発生場所と日時が表示されると

ジムは子どもの様に無邪気に喜んで、小型の機器を

2人に見せる。


「おい見ろよ。チェイス、カイ、」


ジムに呼ばれると、チェイスにカイは小型の機器の画面を覗き込むと、画面にラッキーシティの地図が表示され、ワープゲートの発生場所が赤く点滅され

時間も表示される。


「ワープゲートの発生場所は刑務所で、時間はお昼の午前十二時三十五分、曜日は木曜日らしい、チェイス今何曜日?」


チェイスは壁にかかっているカレンダーを見る

「今日は火曜日、あと2日しかない、急いで準備しないと」


カイは頷くと壁により掛かる。


「あぁ、そうだなぁ。できることをしないと」

ジムは浮き浮きしていたが、反対にチェイスは

不安を覚えていた。


確かに、この世界から出たいとは思ってはいたが、

三種の神器を奪い返すとか、刑務所に行くとか、

とにかく不安でしかない。


けど、もう引き返すことはできない。


腹をくくったチェイスの顔は穏やかだった。

その分、強い決意を胸に秘めて、


刑務所に行く前の2日間、ジムは散らかった店を掃除し、バックパックに必要な道具を入れて、入れられなかった道具は全て売り捌いた。


チェイスは勤めていた警察官を退職、身辺整理をして、2日後、ジムの道具屋へやってくる。


カイは道具屋の一室で静養、腫れぼったい顔も回復し、ジムが出す食事もガツガツ食べれるぐらい、体調も回復していた。   


ワープゲート発生日当日、午前十一時、ジムは道具屋のドアを閉めて、シャッターを降ろす。あらかじめ、店の倉庫から出してきたBANを、店の前に停車していると、カイとチェイスはひと足早く乗り込む。


「おいジム、早く行こうぜ」「あぁ、ちょっとまっていてくれ」店の前で立ち尽くす。感慨深い気持ちになりながらも、心は前を向いていた。


「行ってくるぜ」そう言うとBANの方へ走り出す


運転席に乗り込むと「さぁ、行くぞ」シフトレバーをPからDに、アクセルをゆっくり踏み込んでいき

Uターン、歩道を左へ横切ると道路沿いの道へと入っていく。


車が少ない車道を軽快に走行していると、黒い車が後ろをついてくる。「おい、後ろを見ろよ」


カイがそう言うと、ジムはバックミラーを

チラッと見る。「あの車に乗ってる奴らは、この間の奴らか?」


ガムの包装紙を取って、口の中に放り込みクチャクチャと音を立て、風船を作るチェイス。


「どうする?ジム」


ドリンクホルダーに置いてあるペットボトルの水を一口飲むと「ふたりとも、シートベルトしとけよ。」


アクセルをベタ踏み、60・70 ・80・90・スピードメーターの針が上昇、それと同時に後ろの三台の黒い車もスピードをあげ、黒い2台はBANの左右にピッタリと張りつく、もう一台はBANのケツにピッタリと


張りついて離れない。


ゆっくりと左の黒い車のスモークガラスのウィンドウが下がると、銃をつきつけてくる。


黒ずくめの男は「おい、今すぐ車を止めろ」


ジムはハンドルを左に切ってぶつけると、黒い車は

スピンして電柱にぶつかる。「よっしゃ~」


ガッツポーズをするジム、後ろの黒い2台は

ピタリと張り付く。

突き放そうとさらにアクセルをベタ踏み、


100・110・120・そのスピードの勢いで十字路の交差点を左に曲がる、


後ろの黒い車2台も、同じスピードで食らいついてくる。「くそ、何だよこいつら、しつこい」


「おいジム、前を見ろ、前」


助手席のチェイスが指を指している方向には

踏切が見えてくる、カン・カン・カンと甲高い音が


聞こえると同時に、ラッキーシティの住民を乗せた電車が踏切に向かって猛スピードで走行してくる。


「おい、このまま行くと列車に激突するぞ。ジム」


後部座席に座っていたカイが引きつった顔でジムに言うが、そんなのお構いなしに突き進む。


「ふたりとも、しっかり掴まっていろよ」

踏切への距離、1000・900・800・700と距離が短くなっていく。


黒い車の2台は、300付近でBANから離れる。

「おい、ぶつかるぞ」絶叫するチェイス


「よし今だ」ジムはハンドルの真ん中にあるボタン

を押すと、左右から翼が現れ、BANに搭載された小型のジェットエンジンが発動、ゆっくりと空へあがっていき、踏切を通過する電車の上を飛んでいく。


車の中から、空を飛んでいくBANを見つめる赤髪

「おい青髪、逃げられたぞ。」


運転席の赤髪は、助手席で寝ている青髪を叩き起こす。「あぁそうか、仕方ない帰るぞ」


そう言って目を瞑る青髪、車の窓から赤髪の部下が

「赤髪さん、どうしますか?奴らを追いますか?」いや、もういい、戻るぞ」


「わかりました。」


2台はUターンすると反対方向へ走行、暫くして街へ入ると青髪が目を覚ます。


「青髪、アイツラは必ず俺達がいる場所へ必ずやってくる。」


「あいつら来ますか?」


抜けた声で言う赤髪。


「来るさ必ず、むしろ来てくれないとつまらないからなぁ、あぁ早く来てくれないかなぁ」




赤髪が運転する中、赤髪はもう一度目を閉じて仮眠を取る

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