ラッキーシティ


有名オンラインゲームの街、ラッキーシティに住む

モブキャラのジムは小さな道具屋を営むが、同じ毎日に退屈していた。


そんなある日、同じモブキャラで幼馴染の警察官の

チェイスが目の色を変えて、店に入ってくる。


「ジム、いい話を聞いたぞ。」


カウンターの上に乗り、前のめりになりながら言うが

「おいチェイス、ドアを開けたら閉めろ。」

「へいへい、わかりましたよ。」


嫌嫌開いたドアを閉めると、カウンターの近くの椅子に座ると、ジムが水の入ったコップをチェイスに渡すと、


一口で水を飲み干し、口を拭う。


「ジム、お前、今の生活に満足してるか?」


飲んでいた水を勢いよく吹き出し、慌てふためく。

わかりやすい行動に、腹を抱えて笑うチェイス


「そうか、満足してないのか?じゃあいいこと教えてやろうか?」


床にぶちまけた水をモップで拭いていた手が止まり

モップを投げ捨て、目と鼻の先まで顔を近づけたジムは。


「良い事?なんだ?教えろよ?ジム。」


両手で左右の肩を掴み、激しく揺さぶる。

「わかった、わかったから、その手を離せって、」


ジムはその手を離すと、チェイスは話を始める。

「最近、ある噂を聞いたんだ。」


「ある噂?何だよ、勿体ぶらずに言えよ。」


「ゲームミュージアムって知っているか?」


「あぁ確か、この世界のバランスを保つための3種の神器、ゴールドコントローラー・ゴールドカセット・ゴールドファミコンだっけ?それがどうした。」


「何者かに盗まれたんだよ、3種の神器が。」 


数秒間時が止まるが、ゆっくりと口を開く


「それって最近の話なのか?」


「あぁ、俺が知ったのは2時間前だけど、この噂は一週間前から有名になってる、あともう一つ噂があるけど、聞きたいか?」


ニヤニヤと笑うチェイスにジムは気づいた。


本当に言いたいのは、本当に話したいのは

次の話だと。


「別に言いけど、良い話なんだよなぁ。」


信じられないと言わんばかりの顔で、チェイスを睨むが、そんなことは気にせず、さっきの話を続ける

チェイス。


「3種の神器が盗まれたせいで、この世界のバランスが崩れたと同時に、他の世界へ移動できるワープゲートが出現している。どうだ?興味あるだろ。」


「その話、詳しく教えろ。」


ジムはチェイスからワープゲートについて根掘り葉掘り訊く。ワープゲートの存在を知ったのは3種の神器から数時間後に、様々な世界でワープゲートが出現する。  


最近、ラッキーシティにもワープゲートが現れ

少なくとも、数人が行方不明になっている。


それについて、ラッキーシティーの市長

アン・フォーチュンは3種の神器が盗まれたことも、

発生したワープゲートもデマだと、国民に向かって

テレビ演説するが、誰一人その言葉に耳を貸すものはいなかった。


チェイスから話を聞き終わると、このチャンスを

逃したら一生この場所で終わる、そんなことは考えられない、ジムはチェイスに「なぁチェイス、ワープゲートが出やすい場所を知っているか?」


「俺が知ってると思うか?だけど、1人だけ知っていそうな奴はいる」


「誰だそいつは、チェイス教えろ」


ジムは軽く両手で首を持って、前後に揺さぶる。


「手を離せ、俺を殺す気かぁ」


「悪い、悪い、で?そいつは誰なんだ」


ゲホゲホと軽い咳をして「そいつはホームレスの情報屋で名前はカイ」頭をボリボリ掻きながら、


「その、カイって奴はどこにいるんだ?」


語気を強めでチェイスに言うジム。


「ここ最近は姿を見てないんだ。行きつけのバーと、よく話をしていた公園にもいなかった、もしかして、ワープゲートに」


ガタン!


後ろの扉が勢いよく開くと、ヨタヨタと数歩歩いて

倒れる、ジムとチェイスは近くと


「嘘だろ、カイ、カイどうした?」


倒れているカイに声をかけるチェイス、

すぐにドアを閉めるジム


「チェイス、そいつがカイなのか?」


「あぁそうだ、それより顔の傷が酷い、早く病気に連れて行かないと」


「駄目だ、病院だけは駄目だ」


チェイスの腕を掴み、病院へ行くのを拒否するカイ

「どうしてだ?カイ」ドアの方を見て、チェイスを見ると「俺を暫く匿ってくれないか?」


突然の申し出に困惑するが、ことわる理由がなかった。「その代わりに」ドンドンと扉を叩く。


チェイスは急いでカイを担いで2階へと上がっていく、それを確認するとドアを開けるジム


ゾロゾロと店の中へ入ってくる数人の黒ずくめの男達、1人だけ長身の男がチェイスを見て、サングラスをはずす


「兄ちゃん、ホームレスの格好した男がここら付近に逃げ込んだ、知っているなら教えてくれないか?」


「そんな奴は知らない、帰ってくれ」

店から出ていくよう促すと、「そうか、わかった」

長身の男は無言で、ジムの腹にパンチを当てる。


「あっ、あ…………」腹を抱えて床に両膝をつくジムに嫌味ったらしく訊く長身の男


「どうだ?思い出したか?」


「すみません、そんな男は知りません、他を当たってください。」


「どうします?」長身の男の部下が言うと、周りを確認し、「おい、この家を全部調べろ。」


ジムは長身の男に「おい、あの男は向こうに行ったぞ。」ジムは指をさすが、長身の男はジムの腹を思いっきり蹴る。「そこで大人しくしてろ。調べろ。」


男の命令を受け、家の隅々まで調べ始める。

道具を置いてある棚や、部屋の奥を調べる男達


1人の男が二階へ上がっていく。数分後降りてくると、長身の男に耳打ちすると、「お前ら、他を調べるぞ」黒ずくめの男達は急いで、外へ出ていく。


腹を抱えて起き上がるジム、「くそ、アイツラ」

出ていったドアを恨めしそうに見るジム。

「おいジム、大丈夫かぁ?」チェイスが階段から

降りてくると驚いた顔をする、「なっ、なんだこれは」


床が店の道具屋で埋め尽くされて、足の踏み場もなかった。さっきの黒ずくめの男達が散らかしていたとチェイスに説明すると納得すると


「それよりチェイス、カイは大丈夫か?」

「あぁ、カイは大丈夫だ、今ゆっくりしてるよ


それよりチェイス、お前どこに隠れていたんだ?


さっき黒ずくめの1人が、二階へいったはずだが」


「あぁ、屋根裏部屋の天井に隠れていたんだよ」


「屋根裏の天井?そんな場所あったか、まぁ、それは言いとして、カイは?」


「カイは今、テレビを見ている。あと話がしたいらしいから、来てくれってさぁ」


「カイが?何の話だろうか」


ジムは急いで2階へ上がり真っ直ぐ廊下を進んで、奥の部屋のドアを前に立つと


「カイ、部屋に入るぞ」


ドアを開け部屋に入ると、電気もつけずTVの音だげが聞こえる。電気をつけると


壁によりかかっていたカイが、こっちを見る。


「カイ、大丈夫か。」


「大丈夫かって?この顔を見て、大丈夫かって思えるか?」


「そうだな……大丈夫じゃないなぁ」


腫れた顔に水で濡らしたタオルで押さえると、苦痛の顔をするカイ。


「あの、カイさん、言いにくいことを訊きますけど、さっきの黒ずくめの男達は、何故?あなたを追いかけていたのか、詳しく教えてくれませんか?

カイさん」


ジムは優しく言うとカイは一瞬黙るか、


言葉を選びながら話し出すカイ。


「俺はホームレスの情報屋と言っていたが、本当は違うんだ。俺は3種の神器を守るエージェントをしている。それと、俺を奴ら追いかけてくる理由はこれだよ。」


カイはポケットから小型の機器を取り出して、

ジムとチェイスに見せる。


「これはなんだ?」「何かの機器というのはわかるが」ジムとチェイスは小型の機器を調べる。


「その小型機器は、ワープゲートの発生場所と

発生時間を教えてくれる、さっきの黒ずくめの奴らから奪ってきた。」



その言葉、その小型機器に目を輝かせるジム

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