第7話 休みは有効に使わなきゃ(美華視点)
休みに入って3日目、私はある目的のために外出していた。
「やっぱりそう簡単にはいないよねぇ、ナンパ……」
能力の限界を確かめる、そのために罪悪感の働かない相手を探すことにしたが、そう簡単にいたら苦労しない。
今日会ったのは、ランニングをしているお姉さん、玄関前の掃除をしているおじいさん、それから犬の散歩をしていたあの
「あの人、本当に近くに住んでたんだなぁ」
私の家から、大体歩いて40分くらいのところに住んでいるらしい、急に話しかけられたから誰か罠にかかってくれたと思ったのに、まさか同級生が釣れてしまうとは……
そもそも、ナンパが釣れたからと言って、それが本当に悪い人かもわからないしただ遊びたいだけかもしれない、それだと罪悪感があるから実験台には使えないからできるだけ悪い人が良そうな場所に向かうことにする。
「あーあ、早くだれか釣れないかなぁ」
ちょうど住宅地から離れた人通りの少ない場所に来た時、ついに獲物がかかった。
「何が釣れないの?趣味の話?君可愛いね、お兄さんと遊ぼうよ」
自分は不良ですと自己紹介でもしてるかのような服装の青年が話しかけてきた。
「お兄さん不良?こんな未成年に声かけて何するつもり?」
「そりゃあ、楽しいことだよ、何なら、いろんなこと紹介できるよ、こんなところまで来たからには多少は興味あるんでしょ?」
「うーん、そういうことには興味ないけど、お兄さんには興味あるかな、ちょっと歩いた場所にある公園に行こうよ」
私はあえて相手に期待させるように応える。
「ひゅー、やりぃ!公園でなんてマニアックだねぇ、じゃあ早速行こう!」
その不良はあろうことか私の肩に手を回してきた。
(こいつ…私の体は隅から隅まで幸也の物なのに……勝手に幸也の物に触るなんて…許せない、許せない許せない許せない許せない許せない)
私の中で、この男は何をしても罪悪感を感じないゴミになり果てた。
(まだ我慢だ、公園に着いたら、全力でこいつの認識を壊してやる……)
そう心の中で誓い、公園へ向かった。
この公園は人が少ない、と言っても最近見つけたのだが、ここ以上の場所は今はないだろう。
「さっさと離して!」
私は肩に置かれていた手を払い距離をとった。
「ちょ、どうしたのさいきなり、照れちゃったのかな、大丈夫だって優しくするからさ」
ぞわぞわと鳥肌が立つのを感じる。
「私の体は本来お前みたいなのが触れていいものじゃないんだけど、今まではお礼のために触らせてあげてたの、実験台になってくれるんだものそれなりのお礼はしないとね」
「?・・・何?実験台?もしかして厨二病?」
実験台なんて言って、一般人がわかるわけない、それに、能力を与えてくれたあの存在も、能力を与えられたのは何人かしかいないと言っていたし、日本人だけかもわからない、この地域にはまず私以外いないだろう。
(まずは、視覚や聴覚をどこまで操れるか確認しよう)
私は相手の視覚、聴覚を消し去るようイメージした。
「???何、じっと見て、やっぱり遊ぶことにしたの?」
どうやら相手から自分の存在を隠す時とは勝手が違うようで全く効果がない、感覚そのものを消し去ることはできないようだ、ならばと、今度は目や耳から光と音の認識を途切れさせるイメージする。
「え、うわ!なんだ、急に暗く?!どうなってんだ」
「あれ、俺今喋れてるのか?声も出なくなったのか?!」
「――!――!!!」
そうやら漠然としたイメージで感覚を消すことは出来ないようだ、その感覚がどこから入ってくるのか、その感覚をどう変化させたいのかをイメージしないといけないらしい。
うるさいので能力を解除する。
ついでに次の実験だ、今度は足を動かなくさせる、認識をずらすことが出来るなら、その人が普段行っていることをできないようにすることが可能か同課の実験。
能力を発動しようとするが…
「はあ……はあ……、あ、明るい、声も出てる…何だったんだ…」
相手は普通に立っている、そもそも能力が発動した感覚すらなかった。
さすがにそこまでのことは出来ないのだろうか。
いや、そういえば、認識をずらすには、そのことを相手に意識させなければならないと言っていた。
私は試しに声をかけてみることにする。
「ねぇ、あなた足は動く?もしかして動かないんじゃない?」
「何言って……え…?うわぁ!……???…動かねぇ!足が!どうなってんだ?!」
相手は今までたっていたのがウソだったかのように地面にしりもちをついた。
そこからは動けない状態の相手に、どのくらいの距離まで効果があるのか、どんなことが出来るのかを調べ上げた。
その結果、能力の範囲はわからなかった、少しずつ離れながら実験したが、少なくとも視界が通る距離までは問題ない。
この能力で出来ることは、五感の操作、ちょっとした身体能力の操作、記憶の改ざんなどができるようだった。
五感の操作は、私が能力を発動する意思があれば考えるだけで使えるようだ。
しかし、身体能力の操作と、記憶の改ざんは声をかけて相手に意識させる必要がある、記憶の改ざんに至っては、重要な記憶は改ざん出来ず、その人がどうでも良いと思っていることに関してだけだった。
さらに偶然だが同時に複数人に能力が使えることが判明した、能力の実験中、近くを人が通りかかったのだ、ナンパ男が騒ぐものだから、通行人から、私たちの存在を認識出来なくすることで解決した。
(通行人に能力を使っちゃったのはちょっと申し訳なかったけど、軽い五感の操作くらいならその人に何も影響がないこともわかったし、大丈夫だよね)
「な、なんなんだよぉ!さっきから、俺の体に何が起こってるんだよぉ!そうだ、び、病院に行かなきゃ……頼む!救急車を呼んでくれ!体がなんかおかしいんだ!」
(まだ気が付いてないのか……まあ、こんなこと出来る人なんて普通いないし、私と今の状況を関連付けることは出来ないよね)
「最後にできるだけ、お前の記憶をぐちゃぐちゃにしてから解放してあげる……」
私は相手に声をかけた。
今日は、ケンセイの初登校の日だ、いつもの時間に起きた私は着替えてリビングへ降りていく。
「おはよう幸也、お母さん」
「おはよう、美華ちゃん、さっきこの近くで不審者が出たってニュースがあって、捕まったみたいなんだけど、美華ちゃんが心配だから、幸也と一緒に登校してもらってもいいかしら」
ニュースを見てみると、顔を隠された男が逮捕されている映像が流れていた。
「うん!全然いいよ!よろしく幸也―――『ああ、あのナンパ男か』」
自分が発した言葉を周りから聞こえないようにするのもなれたものだ、この点はあのナンパ男に感謝しなければいけない。
「うん?ごめん、後半なんて言ったか聞こえなかった」
「ううん、何でもない、それより良かったね、こんな可愛い妹と登校できるんだから、幸也は幸せ者だね」
「ははは、そうかもね」
家族でご飯を食べてから私たちは学校へ向かった。
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ここまで読んでいただけた方、応援やレビューしていただいた方ありがとうございます。(なんだか終わりそうな文章ですがまだまだ続きます)
まだの方も作者のやる気につながりますので、ぜひ、応援やレビューで励ましていただけるとありがたいです。
美華:「ちょっと!あんたが書かないと幸也と一緒に居られないじゃない!そんなものがなくても、何があっても書きなさい!」
しょ、承知いたしました、できるだけの努力をいたします…。
美華:「読者さんたちも、★でこいつを応援してやって、何やっても続かないどうしようもない奴だけど、今は本気で書いてるみたいだから…」
う…どうしようもない奴…ま、まあ今日はこのくらいで失礼します。
もし、いつも書いているあとがきが、「長すぎて邪魔」などありましたらできるだけ短くするように努力しますのでよろしくお願いいたします。
追記
今日の朝飼っていた猫が一匹この世から旅立ちました、ここしばらく薬を飲ませても体調が回復せず、ご飯も水も飲まない状況でした。
私が子供の頃から一緒に育った猫なのでまるで半身を失ったような気分です。
更新についてですが、ここまでは前日までに書きためた物がありましたがしばらく気持ちを落ち着かせる時間がほしいです。
出来るだけ毎日更新しようと思っていましたが、次の更新はかなり遅くなるかとお思います。
申し訳ありません。
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