第6話 初登校日

 今日から学校が始まる、今日は校内名の案内と、健康診断だけだ、今日も早めに帰れるだろう。

 そんなことを考えながら朝食を作る手伝いをしていた。


[昨日午後6時半ごろ、住宅に押し入ろうとする男性22歳が住居侵入の容疑で逮捕されました]


 朝のニュースが聞こえてくる、今日が初登校なのに悪いニュースを流さないでくれと、できれば初日は晴れやかな気持ちで家を出たかった俺は残念に思った。


「あら、ここ内から結構近いんじゃない?怖いわね、幸也も気を付けるのよ?」


「うん、わかった」


「そうだ、美華ちゃんと一緒に登校したらどう?美華ちゃんかわいいから、幸也がいれば安心だわ」


「そうだね、美華がいいなら一緒に登校しようかな」


「いいに決まってるじゃない、最近は幸也にべったりなんだから」


 そんな会話を母さんとしているとさっきのニュースが耳に入ってきた。


[――また、容疑者は被害者に対し「ここは俺の家だ、俺はお前の父親だ」などと意味不明な発言をしていたようで、薬物を使用した疑いがもたれています]


 本格的に怖いニュースだった、美華が嫌だといっても、できるだけ一緒に登校しようと心に誓った。


 そうこうしていると、美華がリビングへ降りてきた。


「おはよう幸也、お母さん」


「おはよう、美華ちゃん、さっきこの近くで不審者が出たってニュースがあって、捕まったみたいなんだけど、美華ちゃんが心配だから、幸也と一緒に登校してもらってもいいかしら」


「うん!全然いいよ!よろしく幸也―――『          』」


「うん?ごめん、後半なんて言ったか聞こえなかった」


 美華の方を向いていたが後半は口が動いているのが見えただけで何を言っているか聞こえなかった。


「ううん、何でもない、それより良かったね、こんな可愛い妹と登校できるんだから、幸也は幸せ者だね」


「ははは、そうかもね」


 その後、父さんも起きて一緒にご飯を食べた後、学校へ向かうために二人で家を出た。




 ケンセイは家から少し離れているため、登校する際は最寄駅から2駅分乗らないといけない、俺たちは他校の生徒もいる電車の中で、目的の駅に着くのを座って待っていた。


「美華さん?今日は席があいてるからそんなにくっつかなくても・・・」


 美華は俺の腕を抱え込むようにしてつかんでいた、正直恥ずかしいからやめてほしいが、昔のように接してくれることがうれしくて強く言えない。


「えー、だってここら辺不審者が出るんでしょ?なら、しっかりとくっついて守ってもらわなきゃ!」


「えっと、周りの目が痛いから・・・」


「そんなの気にしなくていいよ、どうせ私たちの仲がいいことに嫉妬してるんだよ、それに、そんなに気にしなくても、周りの人も


 そう言われて、おそるおそる周りを見ると、確かにこっちを気にしている人はほとんどいなかった、自分の考えすぎだったかと、その後は特に気にせず学校まで美華と話しながら向かった。




 「みなさん、おはようございます、今日は午前中に校内の案内をした後、健康診断を受けていただきます、その後はHRホームルームを行って終了です。」


 どうやら午後には帰れるらしい、朝のHRが終わり帰ったら何をしようかと、考えていると、横から声をかけられた。


「よう!、え~っと~、神田!神田だろ?俺、杉山すぎやましょうってんだよろしく!」


「あ、ああ、よろしく、でも同じクラスに妹もいるから俺のことは幸也でいいよ」


「そうか!じゃあ俺も翔でいいぜ!」


「わかったよ翔、で、何か用か?」


「いや~俺この学校に友達来てなくてさ、丁度前の席にいた幸也に話しかけたってわけ、どう?」


「友達になりたいってことか?」


「まあ、そういうこと」


 へへへ、と翔は照れたように笑った。


 とりあえず、確かめてみるか、と、俺は翔に意識を集中させた。


―■■■■■■■■■■■―


 読み取った感情は

 おそらく本当に友達になりたいだけだと判断した俺は返事をした。


「もちろんいいよ、これからよろしく」


「やった!じゃー、スマホの連絡先交換しようぜ!」


「いいよ、ただ、今は先生に怒られそうだからあとでな」


「おう!」


 学校の案内と健康診断は特別なことは何もなく、すぐに帰りのHRまで終わった。




「そういや、お前昨日のニュース見たか?」


 連絡先を交換しながら、翔が聞いてきた。


「もしかして住居侵入で薬物がなんたら~ってやつか?」


「そうそう、あれ、俺丁度近くにいたんだけどよ、めちゃくちゃ怖かったぜ、人ん家の玄関で、俺は家族だ~覚えてないのか~って、マジで真剣な顔で言ってんの、薬物って怖えな、人をあんなにしちまうんだから」


「そうだな、結構うちの近所だし俺も怖いよ、近くで売りさばいてるやつがいるってことだろ?」


 不意に後ろから声をかけられた。


「幸也、早く帰ろ」


 美華が帰りの準備を終わらせて声をかけに来たようだ。


「ああ、そうだな、そろそろ行こうか」


 急に翔にガシッと肩をつかまれて教室の端まで連れていかれる。


「おお、お前、あんなにかわいい彼女がいるのか?!ぜひその秘訣を教えてくれ!!」


 翔が、耳元で叫ぶように問いただしてきた。


「うわうるさ、耳元でそんな大声出すんじゃないよ、それにあれはさっき言った妹だよ」


「え・・・なんだ、妹だったのか、まあ、兄妹そろって顔が良いことで・・・ケッ、しかし可愛いな」


 翔がまじまじと美華を見る。


「美華はやらんぞ」


「いや、だれもそんなこと言ってないだろ」


「美華じゃだめだっていうのか、お前とんでもない面食いだな」


 からかい半分、真面目半分で翔に返す。


「めんどくさ!お前妹が絡むと途端にめんどくさくなるな・・・そうじゃなくて、俺、好きな人がいるんだよ、実はこの学校もその子についてきたんだ、嫌いな勉強頑張ってな」


「そうだったのか、ごめんな揶揄って」


「揶揄ってたんかい!まあいいよ、なんか奢ってくれれば」


「・・・仕方ない、いつかこの辺のファミレスにでも行くか」


「おう!それでいいぜ」


その後、待ちきれなくなった美華に肩を小突かれて、帰路に就くのだった。




―――――――――――――――――――――――――


 GINSKジンスキです。

 

 早いですが、次の回は美華視点です。

 おそらく1話で終わらせられるはず・・・

 このままだと、主人公視点と美華視点が半々になってしまう・・・もうダブル主人公にするか・・・?

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