第5話 妹の様子が・・・
俺は早朝にこの4日間をどう過ごすか自分の部屋で考えていた。
「まずはテスト対策だろ、あとは、足りない文房具の補充をしないとな」
テストと言っても宿題からそのまま問題が出るので、少し復習するだけで問題はないだろう。
文房具は近くの文房具店に行って買わないといけない。
普段両親からお小遣いを、高校に入ったばかりにしてはかなり多くもらっている。
両親としては子供のうちから俺たちに金銭感覚を身に着けたいらしかった。
「今日は文房具店に行こうかな」
まずはいつものように朝食の準備を手伝うためにリビングへ降りて行った。
朝食の準備がひと段落したとき父さんが起きてきた。
「おはよう父さん」
挨拶をしながら能力を使う、特に強い感情を読み取ることはなく、攻撃的な感情も全くなかった、能力のおかげで怖がることなく挨拶をすることが出来る。
いつもと様子の違う挨拶に少し驚いた表情をしてから、今度は微笑んだ父さんが答える。
「おはよう
「おはようございます
「いつもありがとう
「いいんですよ、私が好きでやってることですから、それに幸也も手伝ってくれるのに、善浩さんまで来たらキッチンが狭くなっちゃう」
冗談めかして、母さんが父さんをなだめている。
ふいにリビングの扉が開く、どうやら
「おはよう美華」
そっけない返事が返ってくることはわかっているが、それでも美華は俺の中では特別な存在だ、できるだけ話したいが、今は挨拶だけで我慢しようと、声をかけた。
「おはよう幸也」
微笑んだ美華がしっかりとこちらを見つめて挨拶を返す。
(・・・・・・え?)
驚きすぎて何も反応できなかった、何だろう今のは、美華が微笑んでいた、久しぶりに見たけど可愛いな。
なんて考えが頭の中を巡る。
(なにか、いいことでもあったのかな)
そんなことを考えた時父さんが美華にたずねた。
「なんだ美華、えらくご機嫌だね、何か良いことでもあったのかい?」
「ううん、良いことって言うか、気持ちが吹っ切れたの!幸也、今までそっけない態度とってごめんね、これからは前みたいに普通に話そうね」
「あ、ああ、嬉しいよ」
起こっている事態に脳の処理が追い付かない、昨日までは美華の様子に変化はなかった、家に着いた後は普通に過ごして、晩御飯を食べてその日はすぐに部屋へ行ってしまった。
(何かあったとすれば、学校か・・・)
もしかして、友達が出来たのだろうか、いや、そもそもケンセイには美華の友達も何人か来ていたと言っていたはずだ、そんなことで何か吹っ切れるだろうか。
(全く分からない・・・)
いや、悪いことではないのだ、理解する必要もないだろう、今は食事にしよう。
考えながら準備を終えていた俺は、自分の席へ向かおうとした。
「あ、あの~、美華?そこ僕の席・・・」
父さんがいつも座っている場所には美華が座っていた、もう食器の位置も変え終わっている。
「別にいいでしょ、席なんてどこに座っても同じだよ」
何かものすごい圧を感じる言い方だった。
「そ、そうだな、じゃあ隣に座ろうかなぁ~」
「そこは幸也の席でしょ・・・?」
「え、えぇ~~?」
困惑しながら父さんは自分の食器のあるいつもは美華が座っていた席へ着いた。
俺も美華の反応を見ながら自分の席に着く、なんだか嬉しそうにしていて、鼻歌でも歌いだしそうな雰囲気だ。
「あらあら美華ちゃん、反抗期はもう終わったの?善浩さんへの反抗期は始まったみたいだけど」
母さんが「ふふふ」と笑いながら言った。
「これが反抗期かぁ~、悲しいけど、娘が成長したんだと思えば・・・」
「もう、二人して揶揄わないでよ!それに、もともとは幸也の隣だったんだから、元に戻っただけでしょ」
「ごめんごめん、ここ最近は二人の仲が悪かったからな、ちょっと心配してたんだよ」
安心したように父さんが言った。
「そうそう、あんなにお兄ちゃんっ子だったのに、急に幸也を遠ざけ始めたんだもの、二人の間に何かあったんじゃないかと思ったけど、幸也は変わりないし・・・」
「そうだったんだ・・・心配かけてごめんなさい、ただちょっと自分のことで悩んでただけなの」
「悩みってどんなこと?お母さんたちにも話せる?」
心配そうに母さんが尋ねる。
「内緒!それに吹っ切れたって言ったでしょ?もともと私の中だけの問題だったし」
「・・・」
なんだか、この場にいることが間違っているかのような疎外感を感じる。
そもそもこの話は俺が聞いてもいいものなのだろうか、自分の中の問題と言ってはいたが、俺への態度が変わったということは少なからず俺が関係していると気うことだろう。
「そうだ、今日、幸也文房具買いに行くんでしょ?私もついて行っていい?」
「ああ、いいよ、美華も何か足りなくなってたのか?」
と答えてから、ふと、文房具を買いに行くことを言っただろうか、と考えたが、自分で言ったことを全部覚えてるわけではないので、気にしないことにして、俺には久しぶりの家族全員での会話を楽しむことにした。
朝食を食べ終わり、両親が仕事へ行った後に俺は出かけるための準備を始めていた。
「財布と携帯は持った、買うもののメモは携帯に入ってる、まあ、これで大丈夫かな、美華もついてくるって言ってたけど準備できたかな」
スマホのメモを確認するついでにSNSなどの確認ししてから美華を呼びに行くために部屋を出た。
「うわっ、びっくりした、準備できてたのか」
部屋を出ると、廊下にすでに美華が準備万端の状態で待っていた、万端どころか、これでは気合の入れすぎではないだろうか。
「幸也やっと来た」
美華の準備に時間がかかると思い込んでゆっくりしすぎたようだ、実際家族で出かけるときはそれなりに時間をかけていた。
この格好が美華なりのラフな格好なのだろうか。いや、家族で出かけるときの方がよっぽどラフだった。
「美華、そんなにお洒落してもすぐ帰ってくるぞ?もっとラフな格好のほうがいいんじゃないか?」
「ううん、この格好でいい、せっかく幸也と久しぶりに二人で出かけるんだから気合入れないと」
そう言われると、自分がパーカーにチノパンというラフな格好で済ませていることに少し罪悪感が湧いてしまった。
「俺もほかの服に着替えてきた方がいいか?」
「大丈夫、私が勝手に着てきただけだから、幸也の渾身のお洒落はまた別の日にお願いね」
「う・・・あんまりハードルを上げないでくれよ・・・」
「楽しみにしてる、さあ、早く行こ」
美華は笑いながら俺の手を引っ張った。
15分ほど歩いたところにある文房具店で、二人で買うものを探している時、横から知らない声が聞こえた。
「
「え?」
苗字を呼ばれて振り向くと、同い年ぐらいの女の子がたっていた。
「神田さんも文房具を買いに来たんですか?私もです、奇遇ですね」
「えっ・・・と・・・どちらさまでしたっけ」
「ああ、真夢ですよ
「ああ~、なるほど、しかしよく俺のことがわかりましたね、自己紹介で名前を聞いた程度でしょう?」
「ええ、そこは大丈夫です、私クラスの人の名前を全員分覚えてますから、神田幸也さんですよね?」
「そんなことより、神田さんもここから家が近いんですか?ここ学校からは結構離れてますけど」
「そうですね、ここから十五分くらいです」
クラス全員分の名前をすでに覚えているという事実に驚愕しながら、それを表に出さないように答えた。
そんな会話をしていると後ろから、
「幸也~、こっちは大体そろったけど幸也は終わっ・・・幸也、その人・・・」
「こんにちは神田美華さん、私の名前は倉―――」
倉掛さんが自己紹介しようとしたのに被せて美華が噛みつくように質問する。
「倉掛真夢さんでしょ、知ってるよ、何でここにいるの?」
「い、いえ、私も文房具を買いに―――」
「本当かなぁ、幸也のことつけてたんじゃないの?」
「美華?!ちょっと失礼だよ!」
倉掛さんと話したのはこれが初めてだし、そんなことをする理由はない。
美華はいったい倉掛さんの何をそんなに警戒しているんだろうか、信じているわけではないが一応能力を使ってみることにした。
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読み取った感情は恐れと困惑。
やはり、特に攻撃的な感情は感じ取れない。
「わ、私何か嫌われるようなことをしてしまったのでしょうか」
「美華?倉掛さんがそんなことする理由何もないでしょ?」
「ふん、どうだか・・・」
「え、ええと、すみません、私は失礼しますね・・・」
「あ、え、はい、うちの妹が本当にすみませんでした」
「いえ・・・」
そう言って倉掛さんはどこか落ち込んだ様子で去っていった。
その後、文房具を買い終わって家に帰った後、どうしてあんなことを言ったのか問い詰めたが、美華が理由を話すことはなかった。
―――――――――――――――――――――――――
どうもGINSKです、相変わらず何も起きない回が続いていますが、次の話からじわじわと何かを起こしていく予定です。
ほんと、如何せん物語を書いたことがなさ過ぎて、自分の書いている内容がどのジャンルなのかわからなくなります・・・・
この作品も本当に現代ファンタジーなのか怪しいし・・・
また、明日、明後日はこちらの小説とは別の話も書きたいと思います。
こちらの小説優先で書きますので、もし読んでいただける方はよろしくお願いします。
内容は実体験の怖い話か、最近思いついた設定のラブコメ?ものになるかと思います。
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