第4話 諦められない2(美華視点)

 これから入学式だというのに、緊張も不安もなかった、頭にあるのは朝の出来事だけ、なぜ幸也は私を見て驚いていたのか、もしかして制服姿に見惚れてくれたのだろうか、と、ありえない妄想をする。


(はぁ、ここまでくるともう病気みたいだよね・・・)


 そんなことを考えている間に新入生の入場が始まった。




 私のクラスの出席番号は後ろのほうだったから、座った時にほかの新入生がよく見える、左斜め前あたりには幸也ゆきやの姿もあった。


(同じクラスになってよかった)


 違うクラスの方が諦めることが出来る可能性があるかもしれないが、恋という病を患っている自分には、同じクラスになったことを残念に思うことはなかった。


 しばらくして、校長先生が話している時だった。


(幸也、どこをじっと見ているんだろう・・・)


 前にいる幸也が、話している先生の方ではない場所をじっと見つめていた、どうやら、生徒を見ているらしい。

 友達になれそうな人でも探しているんだろうかとも思ったが、幸也は昔からそこまで友人に執着する人ではなかったはずだ。


(家に友達を呼ぶこともなかったし、この学校にも幸也の友達は入ってないし)

 

 ふと、幸也の視線が方向を変えた。


(あれは・・・女の子・・・?)


 幸也はその女子をじっと見つめて、その後何かを理解したかのように、その後は見るのをやめた。


(な、なんだったんだろう・・・じっと女の子を見たりして・・・まさか一目惚れ?!)


 これまで幸也に彼女が出来たことはない、中学生の頃から積極的に人を寄せ付ける人ではなかった、クラスの女の子から告白されたことがあることは把握しているが、全部断っていた。


(恋愛にまだ興味がないんだと思ってたけど・・・まさか高校デビューとか・・・)


 そんなことを考えている間に、新入生代表の挨拶が始まった。

 壇上に立っていたのは、さっきの女の子だった。


「本日は私達新入生の為に――――」


 もう挨拶は始まっているがそんなことはどうでもいい、幸也が、今回は周りを見ずに、一直線に彼女を見ている。


(まさか、その子に狙いを定めたってこと!?)


 幸也は食い入るように彼女を見つめている、本当に一目惚れしてしまったのだろうか、いや、幸也はそんなに軽薄な男じゃない、でも、それでも惚れてしまうのが一目惚れってものだし、でも、でも、でも・・・・


 頭の中でいくら考えても答えが出るはずもなく、いつの間にか挨拶が終了していた。

 バッと壇上を見ると、台本から視線を上げ、幸也の方を見ながら微笑んだ。ように見えた。

 それと同時に幸也は視線をそらした。


(あの女・・・幸也に色目を使って・・・?!!)


 幸也が照れて視線を外したのなら彼女と幸也は両想いってこと?こんな一瞬で?そんな軽い女に幸也を取られるの?そんな考えが頭の中を巡る。

 その瞬間ふつふつと怒りが湧いてきた。


(私が必死で諦めようとしてるのに、あんなぽっと出の女が彼女になるなんて・・・)

(そんなの絶対に許さない、私が我慢して、あの女が幸せになるなんて・・・)

(幸也のことを一番よく知っているのは私だ、お前じゃない)

(あんな女、幸也にふさわしいわけない!!!)


(っ!!落ち着きなさい私・・・幸也のことを諦めるんでしょ、それなら彼女ができるのが手っ取り早いじゃない・・・)


(私は今まで通り幸也に接すればいいだけ・・・幸也がそれでもかまってくるなら私がもらった能力で隠れて・・・)


(能力・・・認識を変える能力・・・じゃあ幸也から私が本当の家族っていう認識を変えたら、私も恋愛対象になれるのかな・・・)


 そんな黒い考えが頭をよぎる。


(嫌!幸也が家族じゃなくなるなんて・・・やっぱり幸也から隠れなきゃ・・・そしたら私の悩みもいずれ・・・)


 、そう考えた瞬間、ふと夢の内容を思い出した。


(そうだ、あの光のような存在は確か、本来は私は一人っ子で、運命の出会いをして生涯をともにする伴侶を得るはずだったって言ってた・・・)


(人生が歪んだ結果、お父さんとお母さんが結婚したって・・・だから私は双子として生まれたんだ・・・)


(っ!!!)


(そうだ、あの存在は私に、人生を取り戻して悩みを解決してって言ったんだ!!人生を捨てろなんて言ってない!!)

(じゃあ・・・)


―幸也を諦める必要なんてないじゃない―


(そうだ、この能力は幸也と結ばれるために使わなきゃ、私だけが不幸になるなんて、そんな理不尽なことあるわけない)


(幸也だって、あんな薄っぺらい女より、私の方が幸せになれるはずだよ)


(それじゃあ、この能力でどこまでできるのかしっかりと確認しなきゃね・・・)


 私は薄い笑みを浮かべながら、入学式が終わるまで幸也を見つめていた。




 学校がいつ終わったのか正直覚えていない、いつの間にかLHRロングホームルームが終わっていて、帰る時間になっていた。

 その後、家族でファミレスへ行った帰りにこれからのことについて考える。


(まずはこの能力の限界を確認しないと、家族を実験台にするわけにもいかないし・・・誰かちょうどいい人いないかなぁ)


 正直、限界まで能力を使って相手の人間がどうなるかわからないので、近くの人を実験台にするのは危ないし怖い。


(犯罪者がそう簡単に近くにいるはずないし、不良なんてどうかなぁ・・・そもそもうちの近所は治安いいからいないかもなぁ)


(まあ、そんな都合よく罪悪感の湧かない相手がいるわけないし、あとで考えたらいいか)

 

 家について、まずは家族との日常を楽しむことにした。




——————————————————————————


 ヤンデレ?回です、個人的にヤンデレのキャラはかなり好きなんですけど、自分で書いてみるとなかなか難しいですね・・・

 なんかマッドサイエンティストが入っている気がします・・・


 美華視点で、「おいおい、また矛盾点あるじゃねぇかよ」と思った方がいるかもしれませんが、今のところ設定通りの内容になっています。たぶん・・・そのはず・・・

 まだ気が付いていないミスもあるかもしれないので、たまに読み返すようにします。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る