第2話 能力と入学式
入学式へ行く準備を済ませてリビングへ降りていくと、丁度朝食の準備が終わったところのようで、家族の3人が各々いつもの席へ座るところだった。
「おはよう幸也、今日は起きるのが遅かったわね、夜更かしでもしたのかしら?」
母さんが揶揄う様に言う。
「おはよう母さん、今日は準備手伝えなくてごめん、少し眠りが浅かっただけだよ」
「あら、入学式だから緊張したのかしら、コーヒーでも飲む?」
「うん、あ、ミルクも入れて頂戴」
「ふふふ、わかってるわよ、幸也は苦いの苦手だものね」
そんな会話をして母さんはキッチンへコーヒーを淹れに行く。
「おはよう幸也、あまり緊張しなくても大丈夫だぞ!父さんたちも行くからな!」
「お、おはよう父さん、あれ、この前は両方仕事で来れないって言ってなかった?」
急に父さんに話しかけられて驚いてしまった、父さんは優しい人だ、びくびくする必要なんてない、ないはずなのだが、
そんな自分に自己嫌悪しつつ、疑問を投げかけた。
「ああ、何とか僕も
父さんが心底嬉しそうに休みになった経緯を話している時・・・
「えー、お父さんたち今日来るの?ちょっと恥ずかしいんだけど・・・」
美華が不機嫌、というよりは少し困ったような表情で言った。
「そんなこと言わないで、せっかく兄妹そろって同じ高校に入れたんだから、一緒に祝わせてくれないかな・・・」
父さんがわざとらしく悲しい表情を作りながら美華をすがるような眼で見つめた。
「うーん、まあいいけどさぁ・・・」
仕方ない・・・というような表情で美華が答える。
ふと、今朝美華が起こしに来てくれたことを思い出し、お礼を言っていないことに気が付いた。
「美華、今日は起こしてくれてありがとう、危うく二度寝するところだったよ」
「べつに・・・お母さんに頼まれたから起こしに行っただけだし・・・」
美華がそっぽ向いて答える、ここ数年、妹の態度がそっけない、原因は見当もつかないが、もしかして構いすぎたのだろうか・・・と、考えている時、能力のことを思い出した。
夢で言っていた能力を使えば美華の気持ちがわかるかもしれないと考えた俺は、光る存在が言っていたように美華の感情を読みたいと心の中で意識した・・・
が、特に感情がわかる様子はなかった、しかし、なぜかただの夢だったとは思えず、今度は美華をじっと見つめて感情を読みたいと心の中で意識した。
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すると、心の中に何かが流れ込んでくる感覚があった、罪悪感と不安、そんな感情を読み取ったのだと感覚的に理解した。
驚いて美華から意識を外すと心にあった自分とは別の感情は霧のように消えてなくなった。
「何じっとこっち見てるの・・・?」
「っ!ご、ごめん・・・!」
人の感情を読み取るという初めての感覚に驚愕し放心していた俺は、美華の声に驚いてしまった。
「「・・・」」
しばらく気まずい雰囲気があたりに広がったが、
「何やってるの、早くご飯食べちゃいなさい!」
と、コーヒーを人数分淹れてきた母さんによりその空気は霧散し、俺たちは食事を始める。
それから急いで30分ほどで家族で食事を終え、持ち物などの再確認をした後にこれから入学する学校、
入学式は午前中で終了し、午後には帰ることが出来る、入学式前の独特の雰囲気に緊張しながら新入生入場の時を待った。
その後は何か問題が起きることもなく、順調に入学式は終わり、生徒たちは1年使うことになる教室へ移動することになった。
「えー、これから
15分ほどしてすべての提出物が回収された後、先生が話し始めた。
「えー、入学おめでとうございます、ここ懸頭清松高等学校の名前の由来は四字熟語の
先生の突然の冗談にあたりからはクスクスと笑い声が聞こえてくる。
「もちろん、勉強は必要ですが、苦労するだけでなくなるべく楽しんで勉強できるよう、こちらも配慮するつもりです」
「ですが、つまらないからと言ってそれを理由に勉強を怠り赤点を取ってしまうと留年する可能性も出てくるので気を付けてください」
真剣な表情で忠告する先生に、教室には少し緊張した雰囲気になった。
「また、部活動については所属する必要はありませんが、もし気に入ったものがあれば見学してみてください」
「これは、まだあなた達には早い話かもしれませんが、資格取得についても、先生たちは相談に乗るので、取りたい資格などあれば相談してくださいね」
「では、これから1年このA組全員で進級できるように頑張りましょう」
先生の激励が終わり、「では次は――」と、その後自己紹介と学校教材購入を済ませてその日の学校は終了した。
学校からの帰り、家族で外食をすることになり、近くのファミレスへ入店した。
「いやー、幸也も美華も、無事入学できてよかったなぁ!」
父さんが大げさな動作で喜びを表しているのを横目に俺はメニューを取り、家族の前に広げる。
「大げさだよ父さん、確かに倍率は少し高めだけど、美華も俺も勉強頑張ったし」
「あら、その頑張りがあったからこそ善浩さんも喜んでるんじゃない」
「もう!お父さんもお母さんも声が大きいよ!周りに聞こえたら恥ずかしいでしょ!」
父さんと母さんに褒め殺しにされた俺は照れて何も言えなくなり、美華は恥ずかしいと両親に抗議していた。
運ばれてきた料理を食べつつ、俺は今日のことを頭の中で振り返っていた。
(今日一日、使う暇があれば能力を使ってたけど、今のところ本当にその人の感情が見えるようになってるんだな)
俺は、長かった校長先生の話の最中や、新入生代表の挨拶の時、教室の出の自己紹介の時などに周りの人で能力を試していた。
その結果、長い話にイライラしていたり、大勢の前で話すことで緊張していたり、自己紹介で失敗したことの後悔など、その時々に沿った感情を読み取ることが出来た。
(俺が父さんを心から信頼することが出来ないのは、いつか
突然肩をたたかれて巡っていた思考が乱れる。
「お~い、幸也、大丈夫か・・・?気分でも悪いのか?」
隣に座っていた父さんが声をかけても答えない俺を心配して肩をたたいたようだった。
「ごめん、緊張が解けたからかな、ちょっとボーっとしてた」
「そうか、大丈夫ならいいんだ!今日はめでたい日だからな!たくさん食べていいんだぞ!」
「うん、ありがとう」
そう答えつつ父さんに意識を集中させる。
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読み取った感情は喜びと心配だけ、俺は攻撃的な感情が微塵もないことに安堵しつつ、家族との食事を続けた。
(しかし、朝に読み取った美華の感情・・・何に対して罪悪感を感じていたんだろう・・・)
いくら考えても答えが出ることはなかった。
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GINSKです。
う~ん、勢いとノリで書いてるのですが山も谷もない・・・・
昨日から調子がいいのでしばらく1~3日くらいの間隔で投稿できるかもしれない・・・かもしれないなので、あまり期待せずに気長にお待ちください!
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