第3話リサイクル資源課

 リサイクル資源課


一方…『リサイクル資源課』に配属されたシチローとてぃーだは、どうしたのだろう。


『リサイクル資源課』という名前からして、接待ゴルフ課と違い、をしてくれていると思うが……


『え~っ。毎度お騒がせ致しております~ちり紙交換でございます!

古新聞、古雑誌、ボロ布等ございましたら~ちり紙と交換致しております~!』


『リサイクル資源課』って、『ちり紙交換』の事だったのか……


「シチロー…このトラック、エアコン壊れてるんだけど……」


潜入捜査をナメちゃいけない…



「え~っ古新聞、古雑誌等ございましたら~こちらから取りに伺いますので~一言おかけ下さいませ~!」

「これじゃあ、『接待ゴルフ課』の方が良かったかも…」


エアコンの壊れたトラックで街を回り、既に荷台に満載の古新聞を回収したところで、シチローは思い出したように呟いた。


「考えてみたら、スパイを捜すのが目的なんだから、こんなに必死に集める事なかったな…」


助手席に座るてぃーだも、タオルで汗を拭いながらシチローに賛同した。


「そうそう!これだけ古新聞集めりゃもう充分でしょ…早く本社に帰りましょう!」


そうして本社へと帰って来たシチローとてぃーだは、入口をくぐり抜けてから辺りをキョロキョロと見回した。


「ところで、この古新聞はどこに置いたらいいんだ?」


回収した古新聞の処理方法までは説明されてなかったシチロー達は、敷地内をグルグルと回り、古新聞の置き場を捜す。


すると、丁度会社の裏手にあたる場所に、シチロー達が乗っているトラックと同じ型のトラックが止まっているのが見えた。


「あそこにトラックが止まっているわ…あの辺りでいいんじゃない?」

「そうみたいだな…じゃあ、あそこに下ろそうか」


シチローはバックでそのトラックを先に止まっていた車の横に付け、運転席から降りて荷台の古新聞を下ろそうとしたが、その時…奥の方から、1人の男が何か喚きながら、こちらへ走って来た!


「こらぁ~!お前ら勝手に他人ひとの場所に荷物下ろすんじゃね~~っ!」

「えっ?誰の場所とか決まってんの?」


古新聞を抱えたまま、キョトンとするシチローに、えらい剣幕で怒鳴り散らす男。


「ここはだ!お前ら、さっさとどこか行きやがれっ!」


持ち上げた古新聞を荷台に戻し、シチローが口を尖らせる。


「ティダ。ここじゃダメらしいよ…他を捜そう」


不満げな顔をしながらも、シチローは、車に乗り込みエンジンを始動させた。


「ここじゃないとしたら、きっと反対側の倉庫の方じゃないかしら。シチロー」


走り出したトラックの助手席で、そう話し掛けるてぃーだの横、憮然とした表情でハンドルを握るシチロー。


「…………」

「シチロー?どうしたの?」

「おかしいと思わない?」

「何が?」


シチローは車を止め、納得のいかないといった顔で、てぃーだ向かってこう言った。


「古新聞置くのに、『俺専用の場所』なんてあると思う?

まるでオイラ達にあそこに居られちゃ困る様な感じだったな…アイツ……」


探偵のカンというやつだろうか?…シチローは、トラックのドアを開けて、運転席から片足を下ろしながら先程の置き場の方を振り返った。


「ティダ、悪いけどこれ1人で置き場まで持ってってくれない?

オイラ、さっきの場所に戻ってこっそりと探りを入れてくるよ…もしかしたら、今回の依頼と関係があるかもしれない」

「だったらアタシも行くわ」


しかし、シチローは助手席から身を乗り出すてぃーだを制して言った。


「いや、オイラ1人で大丈夫!ティダは、トラックを動かしといてくれ」


シチローにそう言われ、助手席から運転席へと移るてぃーだ。


「わかった。じゃあ先行ってるからね…シチロー」


トラックを降りたシチローはニッコリと微笑んで、てぃーだを見送った。


てぃーだが運転するトラックの姿が完全に見えなくなるまで待った後、シチローはニヤリと先程とは違う笑みを浮かべ、呟いた。


「よし…行ったな…オイラの見立てでは、あの男の慌てようはきっと…




に違いない!」


だから1人でいいと言ったのか・・・



♢♢♢



「しめしめ、誰もいない」


シチローが先程のトラックの場所まで戻ってくると、あの男は既にいなくなっていた。


それでも、辺りをキョロキョロと見回して人影がない事を確認すると、シチローは幌の付いたトラックの荷台の中へと飛び乗った。


「ムフフ」


ところが……それから30分後…


「なんだよ!ただの古新聞じゃね~か!」


荷台の中にあったのは、何の変哲もない只の古新聞と古雑誌の山だった。


ガックリと肩を落とすシチロー。


「いや、まてまて!意外とこの下の方に隠してあるかもしれないぞ!」


まだ諦め切れないシチローは、山積みになっている古雑誌の下の方にある雑誌を強引に引き抜いた。


ドサドサドサ~!


「うわっ!」


バランスを失った古雑誌が、シチローの方に向かって雪崩のように覆い被さってくる!


それと同時に、狭い荷台の中を凄まじいホコリが舞い上がった。


「ヘーックショイ!……クソッ!」


そのシチローの手にした雑誌も、ごく普通のファッション雑誌であった。

どうやら、完全にシチローの見込み違いだったようである。


シチローは、クシャミで出た鼻水を拭く為に、傍らに並べてあったトイレットペーパーに手を伸ばした。


そして、30センチ程引き出して、ちぎろうとした時…シチローはある異変に気が付いた。


「あれ?…なんだよこのロール…じゃね~か…」


普通なら、手で簡単にちぎれる筈のトイレットペーパーが、まるで布のように頑丈であった。


「コレって、まさか……」

このトイレットペーパーの特徴…今までエロい笑いを浮かべていたシチローの表情が、探偵のそれに代わった。






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