第8話 アイウォンチュー の願い(2023お題:塩人/I魚人)

ありがとう、オー・ブギョウ!


手を振る伝書鳩パーティとスケサクらを残し、ひとたび巨大ロボに合体したオー・ブギョウは絵巻にあった男を追いかけ去ってゆく。


「くれぐれもゆく先々ではご用心されよ」

「いつでも困った時は、あたしたちを呼んどくれ」

「そんなことになる前に、あいつらをとっつかまえてやらーな」


オー・ブギョウは最後まで頼もしい。

スケサクらも使命を胸に、峠を先へとひとたび急いだ。近づくお社に「サイキックお弁当」も安らぎそのもの、あまた空を飛び交い始める。


「ほう、ついにここまでやってきたか」


伝書鳩のリーダーが感慨深げと仰いでいた。スケサクもならいかけたところで引かれた袖に振り返る。升を掲げて頭を垂れると、男はそこに立っていた。


「おやそなた、塩人シオンチュであるか」


そう、たとえサイキックお弁当が手元へ飛んで来ようとも、食うに塩は欠かせない。おかげで切らした者は塩乞いすると、世では彼らを「塩人シオンチュ」と呼ぶようになっていたのである。スケサクは升を掲げるその姿に、てっきり塩人だと思い込んだのだった。だがぶるぶる、男は体を振り返す。


「あ……、Ⅰは、魚人ウォンチュー。でやんす……」

「うおんちゅ、とな」


飛び交うサイキックお弁当を楽し気と見上げて伝書鳩らは、繰り返すスケサクを置いてどんどん先へと進んでゆく。


「おそれおおくも、魚人ウオンチュの海を守ってもらいたく、お願いにあがりやしたぁっ」


とスケサクへ、男は伏せていた面を持ち上げた。なら驚くことなかれその顔はウロコが覆う半魚ではないか。


「YOU は本物の伝書鳩ではないでやんす。だから巌流島の秘密を知れば魚人を、いんや、お社にサイキックお弁当を助けてくださる、そう信じたでやんす」


話は唐突で、スケサクはこれは何者か、と怪しんだ。すると魚人ウオンチュは振り返った彼方へと呼びかける。


「お頭、伝書鳩は先へいっちまったでやんすよ、話すなら今でやんす」


見知らぬ男だ。やおら木立の向こうから現れていた。身構えるスケサクへ近づき丁寧に頭を下げると、巌流島と心お弁当の秘密を語りだす。

(本編のみ 約820文字)

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る